博物館には太古の生物から、現代の動物まで、大小様々な生き物の骨格標本が展示されている。いわば動物の「ガイコツ」だが「なんとなく怖そう」「ちょっと不気味」な感じを持つ人もいるのではないだろうか。
だけど、骨格標本には、いろんな発見や驚きがいっぱい詰まっている。動物好きはもちろん、そうでない人も、きっと夢中になるおもしろさがいっぱいだ。その魅力や見どころ、骨格標本作りなどについて、大阪市立自然史博物館を拠点に活動する標本作製サークル「なにわホネホネ団」の団長、西澤真樹子さんに聞いたので3回にわたって連載する。
<骨格標本の魅力ってなんだろう?>
生き物の体から皮と筋肉を取り去った骨格標本。生命を失ったものだけに、少し不気味な気もするが、耳をすませば、骨格標本は様々なことを私たちに伝えてくれる。
普段、映像や動物園でしか目にできない動物の内部の構造がそこにはある。ほ乳類であれば、頭が一つ、背骨があって、足が4本。これはほとんどの脊椎動物に共通するデザインだ。脊椎動物であれば、必ず背骨は1本。どう間違っても背骨が2本になることはない。これは人間でも、ゾウでも、魚でも、ヘビでも同じだ。基本はみんな同じ、共通のご先祖様を持つ生き物だからだ。骨格標本はこんなことを考えさせてくれる。
さらによく見ると、骨格標本は、その生き物の生きてきた歴史まで伝えてくれる。例えば大阪府豊中市の大阪大学のキャンパス工事中に見つかった「マチカネワニ」の化石には、後ろ足を骨折した跡が見つかっており、30〜50万年も前の骨なのに、戦ったり、怪我をしたりした、ライフヒストリーを私たちに伝える。物言わぬはずなのに骨は饒舌だ。
こんな古い標本ではなく、身近な動物の骨格標本も、様々なことを物語る。例えば、ニュージーランドの有名な鳥キーウィ。雌が大きく、雄が小さい。これは雌が巨大な卵を産んで育てるからのようだ。ほ乳類ではシカの雄なら角が、ゾウの雄なら牙が発達している。これは雄同士が戦わなければならないからだ。身近な犬やネコでも、骨格はその習性を細かく教えてくれる。犬の頭をなでているとき、中央にすこし出っ張りがあることに気づいたことはないだろうか。これは、咬筋(こうきん)という噛むための筋肉をくっつけておく部分。また、ネコの骨格はきゃしゃで、柔らかい。ネコの身ごなしがしなやかで、細いすき間も通れるのはこのしなやかな骨格のおかげだ。こんなことを知ると、その動物への関心がさらに集ってくる。
そして何より、骨格標本は美しい。すべてが生き物の動きのために作られていて、一つとして無駄な造形がない。大型ほ乳類のたくましい大腿骨も、魚の繊細な骨格も、そこにあるのは機能美だけだ。これを直接目にすると、自然の造形に感動すら覚える。と、ここで言葉を尽くすよりも、実際に目にするのがその魅力を知る一番の近道だろう。
<ホネホネサミット2014開催!>
※編集部よりお知らせ:10/13(月・祝)の「ホネホネサミット」は台風19号の影響で暴風警報が出ましたので、イベントが中止になっておりますので、ご注意ください。
「ホネホネ団」と大阪市立自然史博物館では10/12(日)、13(月・祝)の2日間、「ホネホネサミット」を開催する。これは博物館や大学などを拠点に、骨格標本作りに関わる団体や個人、あるいは骨に興味のある人が集まって交流するイベント。骨格標本展示はもちろん、活動内容の紹介や皮むき、骨取り技術などを紹介する。骨格標本のおもしろさに触れるチャンスだ。当日は展示のほか、講演会や北海道から沖縄まで全国から集まった骨格標本作製集団の発表会など、盛りだくさんの内容が用意されている。
※イベント詳細は下記のデータをご覧ください
【取材、文=ライター 鳴川和代】