※【その1】の続き
Q:岡田さんとの出会いは?
最初は連ドラです「黄金の豚」、そのあと「リーガルハイ」。最初は彼が20か21才ぐらいで、見た目よりも若いな、という印象でしたね。24、5才かと思ったら、え?21とかっていう話を多分したと思うんですけど。すごいねぇって。だって自分が20、21才の頃は何でもなかったですからね。演劇も、初めて観たのが20才ですから。
Q:相手がキレイな岡田さんでよかった? 前に、温水洋一さんよりいいって(笑)。
キレイな方がいいでしょう。“ぬっくん”でも愛せますけど、お客さんが許さないと思いますね(笑)。ウソやろ!って、何故そんなに惹かれる!って(笑)。ボクはまず、芸術家でなければならない。マネをするのではなくて、芸術家。そのリアリティはどこかで持ちたい。そのためにはっていうのは今、ちょっと考えてるんですけど…。物事を考えるスピード、頭のいいMCとかではなくて、物を考える、感じる、そういう人っていうのはどういう人なのかっていうところから役作りをしていくのかなぁ。
Q:これまでの、蜷川さんの演出の印象は?
とても知識と教養と、演劇に対する情熱を持たれた方で、その言葉の説得力は、ボクが受けた演出家の中ではトップだと思います。もちろんスタンダードな演出される方、またはもっと抽象的な演出される方、いろんな方がいらっしゃるんですけど、稽古場作りとか、役者の気持ちを大事にされる。気持ちっていうのは、役者の気持ちを操ること。モチベーションや、芝居に対する姿勢なんかを見られてる方なんだな、と思います。テクニックとか表現の仕方とかじゃなくて、芝居に向かう役者の心を見透かしているかのような。あと、「そこだ! そこを上げて!」とか、タクトの振り方が、ほんとに独特だと思います。
で、ものすごく楽しいです、稽古場の蜷川さんの言動が。おかしいでしょ、役者より目立つの(笑)。だって、蜷川幸雄ですもん。稽古みてるより、何を言うかなって。同業者として、今の芝居良かった、とか、どういうダメ出しが出るのかとか。こっちの方がおもしろいんですよ。
Q:演出家・生瀬勝久として?
いや、ま、でも、ちょっとヘンなところを見てるのかもしれないですけど。使えるな、って、今度自分が演出するとき(笑)。いやぁ、でもそれぐらい演じているんだと思う。
Q:この舞台を岡田くんのファンの人が、観に来たら?
「あ、岡田くんカッコイイ」って観に来たら、多分…あんぐり、口開くと思う(笑)。だって、“真夏の夜の夢”で蜷川さんの演出、天井から砂がずうっと落ちてるとか、説明つかないですよね。みんな、アレが何を意味してるのかって適当に言い合うじゃないですか。あんなのおもしろいですよね。それが舞台の魅力であり、蜷川さんのインスピレーションであり。だから演劇っていうのは、みんながいろんなことを思う。これだけ原始的で、これだけ可能性が尽きない場所はない。そのためのテキストがたまたまこの皆既食で、きっかけが岡田君の美貌であったっていうのは、それはそれでいいと思うんですよね。そしたら、いつも『ごくせん』の教頭が、あんなマジメな芝居もするんやという、拾いものもあり(笑)。だからワンダーランド、大の大人が知恵を持ち寄って、可能性の尽きない舞台になるでしょうね。
Q:今回の作品は職業役者としても…
真価を問われますね。力出さないといけないなって思う。ほんとにめいっぱい、自分ができることを考えて表現しなきゃなって。自分の気持ちのいい芝居だけしてると、ねぇ。気持ちのいい芝居されると鼻白むじゃないですか。だから自分でいろいろブレーキかけたり、わざとアクセル踏んだりとかっていうことをね、やりたいですね。
Q:では今回、生瀬さんの本気さと、岡田君の美しさと、この作品の…
言葉の力、うん。あと、この世界を戯曲にしようとしたことですよね。そこを観終わった後にどう思うのか。でも、すごく“作品”なような気がする。よく、明日元気になれますとかって言うじゃないですか。勇気をもらいましたとか、力をもらいましたとか、自分に置き換えるとかじゃなくて、「良い作品観たな」って。
だから、ね、まかせてください!! そういうふうに、ちゃんと言わないと。自分に自分で鞭入れないと。自分でものすごくハードル上げてますから…終わって褒めてもらいたい(笑)。これからどんどん年取るんですよ、でも家族養わきゃいけないし、生きるために芝居を続けるんで、やっぱりうまくなりたいです。うまくなりたい! もっともっと!
「生瀬さんみたいになりたいですね」って面と向かって言ってもらえるような人になりたいです。生瀬さんを見て、この世界に入りましたって、言われたい。だってボクがそうですからね。柄本明さん。生まれて初めて観た舞台が「蒲田行進曲」だったんです。加藤健一さんと柄本明さんと根岸季衣さん。その時の柄本さんが、この世界に入るきっかけで、ボクが初めて共演したときにそれを柄本さんに伝えましたから。その後も何べんも柄本さんに「ボクは柄本さんの…」「もう聞いた、それは」って(笑)。そのぐらい、ですよね。
Q:今の若いお客さんたちは…
たまたまなんかの拍子で、この舞台を観る。ボクもそれでしたから。サークルの先輩に「今、つかこうへいさんという人がすごくおもしろいから、一度後学のために行ってみたら」って言うのがきっかけだったんです。ほんとに覚えてますよ。それでたまたま行ったのがカルチャーショックだったんで。80年、大阪で観ました。すごい刷り込みで、ボクの人生を変えたわけです。ボクはそういう経験者ですから。この作品を見て、そういうことが誰かに起こるように頑張りたい。でも毎回、そう思うんですけどね。どんな芝居でも、何かそうやって、人の人生を変えるぐらいの表現者としてかかわっていきたいなっていう。
Q:お客さんはランボーやヴェルレーヌの詩を知らなくてもいい?
全然いらないと思います。あんまり頭でっかちになると、感じれないんですよ。違う違う、とか。ん?フランス人じゃないの?とか(笑)。チケットを持って劇場に来て、座って、何も難しいことを考えずに観てください。そしたら、何かがきっと、素直に感じていただけると思うんで。演劇とは!とか、考えなくていいです。
【取材・文=ドルフィン・コミュニケーション】