蜷川幸雄演出・藤原竜也主演の「ハムレット」が12年ぶりに再演。藤原が日本演劇史上最年少の21歳でタイトルロールを演じ、演劇賞を総なめにした話題作だった。蜷川幸雄80歳の記念の年、新演出で関西に初登場する。今回はオフィーリア役に満島ひかり、その兄・レアティーズ役に実弟・満島真之介と、姉弟の初共演が実現。ガートルード役には鳳蘭、クローディアス役には平幹二朗という、新たに豪華なキャスト陣で上演。また、日本公演後には、台湾とロンドン公演が控える。
初めての姉弟共演、そして初めてのシェイクスピア。蜷川作品「火のようにさみしい姉がいて」の大阪公演中だった満島真之介が、姉と2人で話し合って出演を決意した「ハムレット」への心境を語った。
Q:オファーをいただいたときは?
姉と話をしました。ひかりとボクが2人で出るっていうことに対して、蜷川さんはどういう気持ちで2人に声をかけて下さったのか、話を聞きたいと思ったんです。蜷川さんと3人だけで本音の会話をしました。「ボクらは、一緒にやるなら心中する覚悟でやるぐらいの気持ちでいる」と。蜷川さんからもいろんな話を聞いて家に持ち帰り、2人で1週間ぐらい話をして考えました。断るという選択もあった。ひかりだけが出る、ボクだけが出るっていう手もある。いろんなチョイスのプランを考えました。でも、何百年も演じられてきた『ハムレット』、しかも『ハムレット』を何度もやってきてる蜷川さんの演出、そしてロンドン、台湾にも行く。最終的に、ほかに誰ができる? やっぱりボクらしかいないね、やるしかない、と。2人で決意してから、「やります」って返事をしました。
Q:姉弟出演が大きなネックだった?
姉弟で仕事をしたいとは、お互いにずっと思ってたんです。けど、やっぱり、シェイクスピアで、ハムレット、オフィーリア、レアティーズだからっていうのもあるんですよ。それに初共演っていうのもある。ひとつ越えれば、あとは「今回はやる? やらない?」で、できると思うんですけど。初めて2人が同じところに立つという怖さも、どこかにあるんですよね。それぞれだと助けることもできるけど、2人で川に飛び込まなきゃいけない。ましてや舞台でシェイクスピアに触れたことのない2人なんですよ。だからやっぱりどこか、う~ん、このタイミングなのか?っていう。共演はもう少し後でもいいんじゃないかっていうところも含めて、その選択肢はたくさんあったんですよ。でも、逆に今だからこその挑戦、勇気を持って、バッて前に進んだ瞬間に、なにか時代をもグルっと変化していくんじゃないかっていう感覚が、ポッと直観的に浮かんできたので、そこを信じましたね。
頭で考えるものよりも、フッとこう「やれ!」みたいなのがなんか2人に降りて来た。それが決め手でした。
Q:「ハムレット」は映画や舞台で知っていましたか?
舞台で見たことはない…かな。映画も…そんなに覚えてない。まったく関わってないですね、シェイクスピアには。ボクは小さいころから、舞台にも、本にも、映画も、テレビのドラマにも、ほとんど関わる生活をしてなかったので。自然とかかわる、土と戯れるっていう感じだったので、まったく概念がないんですよ。シェイクスピアはどうだとか。
Q:本の印象は?
今、昔の難しい訳から読み始めています。今回の翻訳は河合祥一郎さんで、あんな長いシェイクスピアのセリフたちが、すごく伝わりやすくなってる。言葉も現代っぽくなってるし。河合さんという人が、どれだけ頑張って作ったのかっていうのがわかりますね。河合さんの本はとっつきやすいし、言葉が攻めてくる感覚があります。
Q:レアティーズをどう捉えていますか?
普通レアティーズは、とてもまじめで妹想いで、とかって言われてますけど、ボク、真逆なんですよね。不良なんですよ、多分。ほんとは裏でちょっと悪いことしてるくせに、親の前ではすっごいマジメな男の子を演じてる。かなり固いお父さんに、すごく厳しく育てられて完璧な息子だと思われてるし、だから、ちょっと自由にさせてよ、みたいな感じでそこから抜け出したかったんじゃないかなって。そう思うのは、自分がそうだった節があるから…。あ、でも今の段階ですよ。まだ、稽古に入ってるわけじゃないんで、ボクがボクの人生の中から読んだひとつの解釈です。
Q:最後に決闘シーンがありますが?
もう、練習を始めてます、少しずつですけど。ボクはセリフも含めて全部が初めてなんで、ちょっと早めから手を打っておかないと、と思って。基礎から全部ちょっとずつちょっとずつ、「火のようにさみしい姉がいて」の稽古の合間からやってました。
※【その2】に続く
【取材・文=ドルフィン・コミュニケーション】