<その1>【3/5(木)~シアターBRAVA!で】チェーホフの戯曲にKERAが挑む! 舞台「三人姉妹」で三女を演じる蒼井 優にインタビュー

関西ウォーカー

ロシアの文豪チェーホフの四大戯曲に、KERAこと鬼才ケラリーノ・サンドロヴィッチが挑む、注目のシリーズ企画。2013年の「かもめ」に続き、第2弾は「三人姉妹」の登場だ。故郷のモスクワを遠く離れたロシアの田舎町で暮らす、プローゾロフ家の美しい三姉妹。女学校教師の長女オーリガ(余貴美子)、主婦の次女マーシャ(宮沢りえ)、読書好きの箱入り娘・三女イリーナ(蒼井優)。彼女たちの周りにいる、兄やマーシャの夫、下宿中の軍医たち。将軍だった父を亡くし、陰りを見せ始めた現実の中で、誰もが満たされない思いを抱いて日々を送っている。そこにモスクワから陸軍中佐(堤真一)が訪れるが…。

チェーホフの魅力は「退屈の中にドラマを見出したこと」と語るKERA。「三姉妹モノは自分の十八番。極めてオーソドックスな“決定版”を目指します」と言う自信作だ。しかも、この豪華キャスト! 前作の「かもめ」に続いて出演する蒼井優が、このシリーズのおもしろさやチェーホフの楽しみ方を語ってくれた。

Q:「かもめ」に出演された時の観客の反応は?

蒼井:ひとつの作品で、土地によって反応がほんとに違います。「かもめ」の時も感じましたが、関東と関西では全然違いました。意外にも東京の方が笑いが多くて、大阪でやらせていただいた時はみなさん、すごく集中して観てくださっていたのか、笑いが少なかったんです。でも、拍手が大きかったのは関西(笑)。あ、真剣に見てくださっていたんだなって感じがしました。

Q:これまでチェーホフの舞台を観たことは?

蒼井:シェイクスピアは、かなり観ていますが、私、実は一度もチェーホフの作品を生で観たことがなかったんです。「かもめ」の時には、ロシアで上演された映像を観ました。この作品が喜劇なのかがわからなくて、ロシアで本当に観客が笑ってるのかどうか気になって。で、観てみたら、やっぱり楽しいんですよ。みんなが自分中心に生きてる感じが(笑)。

Q:難しくはない?

蒼井:そんなに難しい話ではないです。どうしようもない人たちのお話(笑)。軍人が多く出てきますが、平和になったロシアの田舎町なので、モスクワを守る、という大きな使命があるわけではない。人も大して住んでなくて、特に事件も起こらないような田舎町に左遷されて、特にやることないから語ってもしょうがない哲学ばっかり語ってる(笑)。

結局、登場人物たちが暇をつぶしている生活を描いているんだと思います(笑)。暇だから誰かを好きになってしまったり(笑)。そういうお話だと思って、身構えずに観ていただきたいですね。もちろん、今の私たちに突き刺さる言葉もあり、気づかされることも多いんですが、基本的には退屈な人たちのおもしろいお話、という感じです(笑)。

Q:突き刺さる言葉とは?

蒼井:これは100年近く前に書かれた本で、しかもロシアのお話なのに、登場人物が未来のことを語る言葉は、今の日本人が言ってることとさして変わらない。段田(安則)さんが演じる軍医の言葉は、私たちの心にも刺さるものがあります。未来に対して希望を見出そうとする人間もいれば、現世主義というか、今の自分たちの生活をどうしていくかということだけを考えてる人もいます。退屈な時間の中に、「おっ」と的を射たセリフがところどころに入るというのが、チェーホフのおもしろさだと思います。その人たちが、じゃあそれを本当に考えて行動に移してるかと言ったら、結局移してない人たちの話なんですけどね(笑)。

Q:100年前に書かれたチェーホフと今の自分が結びつけられる?

蒼井:私は、昔のモノクロ映画に描かれてるものと、自分の今の生活がリンクしてると時がすごくおもしろく感じたりします。この作品でも、そういう楽しみ方もできるのではないかと思います。

Q:余貴美子さんとはドラマで共演を?

蒼井:けっこうドラマでの共演が多いですね。以前私が主役をやらせていただいたドラマ「おせん」や、「龍馬伝」でもご一緒させていただきました。最近では、「若者たち」です。映画では、まだご一緒していないと思います。

Q:宮沢りえさんとは?

蒼井:今回が初めてです。自分の中ではちょっと、神々しい存在の方なんです。いつも私は客席で宮沢りえさんを“拝観”しているので(笑)。あのエネルギーのまっすぐさ、というのは、いつ観ても感動します。

余さんとりえさんのそばに3カ月近くもいられて、しかも姉妹役ができるなんて、自分は本当に幸せ者です。でも、おふたりを客席で観られないっていう、残念さもちょっと…。あのエネルギーを客席で浴びたい、とも思います。

※【その2】に続く

【取材・文=ドルフィン・コミュニケーション】

注目情報