※【その1】の続き
Q:一番楽しみに思っていらっしゃるのは?
蒼井:まず最初の楽しみは、稽古場で大好きな先輩たちが初日までにお芝居を作り上げていかれるプロセスや、皆さんのお芝居への向き合い方を間近に見られることです。
そして、初日が開いたら、今度は出演者全員で舞台の上でそれぞれの役の人生を一緒に生きること。それと毎回同じ話を演じるわけですが、その日その日のお客様と一緒に毎日新たに舞台を作っていく感覚も楽しみですね。
それから、義姉になるナターシャを、尊敬する女優さんの神野三鈴さんが演じることも楽しみです。三鈴さんがナターシャを演じる、と思って台本を読むだけで、もうメチャクチャおもしろくて(笑)。男性キャストのみなさんも大好きな方たちばかり。塚本(幸男)さんは、「オセロ」でご一緒して以来、いつも「大丈夫か?」「元気か?」みたいに声をかけてくださるんです、どこでお会いしても。親戚のおじさんみたいな感覚です(笑)。だから、塚本さんとシェイクスピアで出会って、次はチェーホフで共演というのが、とても嬉しくて、舞台を続けてきて良かったと思います(笑)。
Q:楽しいカンパニーはその雰囲気が客席にも伝わりますよね。
蒼井:私も自分が舞台を観ていて、役者さんがお互いに信頼し合ってる姿に感動してしまいます。みんなでいいカンパニーを作ることが、とっても大切なんだと思っているので、私も共演の皆さんに少しでも信頼してもらえるように頑張りたいと思います。
前回の「かもめ」では、大阪公演の時に丁度うまく芝居の力も抜けてきて、自分でもすごく楽しかったんです。だから自分の中では、「かもめ」の大阪公演の延長を、今回の東京の初日に持って来られたらいいなという感覚があります。『あ、チェーホフっておもしろい』って、ちゃんと言えるようになったのは「かもめ」では大阪公演からだったので。
Q:お客さんが笑わなかった大阪だったのに?
蒼井:私の中では、その反応の違いが楽しかったところでもある(笑)。もちろん作品は違うから、「三人姉妹」の解釈の仕方は、また勉強し直さなきゃいけないんですが、チェーホフの楽しみ方は継続していけたらいいなと自分の中で思っています。
Q:前回来られた方に、今回も来ていただけるといいですね。
蒼井:チェーホフがKERAさんのフィルターを通して書かれた言葉になると、身近ですごくわかりやすい。その当時のロシアに対してのチェーホフのグチだったりもするので、人のくだらなさとか、おかしな営みというのを、すごくわかりやすく変換してくださってます。とにかく、肩の力を抜いて観ていただけたらうれしいです。でも、そうしていただけるように、私たちがまず頑張らきゃいけないんですけどね。そして、余さんと宮沢さんを“拝観”していただいて(笑)。
Q:登場人物は暇な人たちだけど、蒼井さんはお忙しい方なのでは?
蒼井:映像の仕事をしてる時は、待ち時間がほとんどで、芝居してる時間が数分ということも。まるまる1日かけて、撮るのは5分とか10分とかだったりするので、基本的に待ってる時間がけっこうあるんです。
Q:待ってる間は本を読むとか?
蒼井:私の中では、現場では別の作品の本は読まないって決めているんです。自分の楽屋がある時は、楽屋で読んだりしてますけど。共演者の方たちとは、最近の家電がどうかとか、この時期になると鍋は何がおいしいか、とか、そんな話を(笑)。意外とみなさん、くだけてます(笑)。
Q:タコ焼きがお好きとか?
蒼井:タコ焼きは私、ソース味が好きです(笑)。大阪に住んでる友達に聞くと、ソースに飽きたから、「ウチら今、ダシで食べてるから」みたいなこと言われて(笑)。でも、東京から大阪に行くと、ソースのタコ焼きを食べたくなります。
Q:関西に来た時、必ずすることは?
蒼井:私、関西に限らず、本屋さんへ行きます。それぞれの本屋さんで匂いも違うし、置いてるものも違うから。ああ、ここはこういうラインナップなんだって。電子ブックじゃなくて紙がいいんです。
Q:読まれる本のジャンルは?
蒼井:その時々で変わります。小説、純文学、洋書とか。作家では谷崎潤一郎が好きです。劇団☆新感線の公演の時は長期滞在だったので、10何冊にもなりました。
最近思うのは、自分がおばあちゃんになった時に、中学生や高校生に、「あの人まだ紙で読んでるよ」みたいなことを言われる時代が来るのかなって。自分たちが今のおばあちゃん世代の人たちに対して、「ああいう生活っていいよね」って思うみたいに、紙で読んでる私たちのことを、「なんか、ほっこりするよね」とかって言われちゃうのかな。
【取材・文=ドルフィン・コミュニケーション】