【その2:5/10(日)公演】桂 吉弥、噺家生活20年の集大成! 記念独演会について直撃!

関西ウォーカー

※【その1】の続き

Q:今回の古典落語のネタについて教えてください。

桂 吉弥:「昆陽(こや)の釣」は、上方の古典落語の「唖(おし)の釣」。「昆陽の御池」とも言うかな。伊丹の昆陽池の噺です。殺生禁断の池で、お侍さんがずっと見回りしてる池に釣りに行くけど、しゃべられへんふりして…っていう噺なんですよ。そこの部分がテレビやラジオには乗せられないので、なかなかこの頃やらへんのです。でも、ウチの師匠が気に入ってよくやっていて、すごいおもしろい噺なので。

「百年目」は、サンケイホールでネタ下ろしです。米朝師匠が大事にしてて、みんななかなかでけへんネタで、難しい。だから米朝一門の合格手形じゃないですけど、この大ネタをやろうと思い立ちまして。で、米朝師匠のお弟子さんで最初に「百年目」をやった桂米二さんにお稽古をお願いして、今、稽古中です。45分ぐらいあるんで、今回の落語会は前半が2席だけなんですよ。普通の落語会では、だいたい前半は3席、4席あるんですけどね。もう、今回は「百年目」をガツンと。落語好きな方には「お、吉弥が百年目やんのか」って思って来ていただくのもいいし、初めて聞く人にも「百年目って素敵やな」って思うようなネタにはしようと思ってます。

Q:やっぱり今回「百年目」がウリ、ですか?

桂 吉弥:ウリとなると、オレとしては「百年目」やねんけど(笑)。なぜ、この「百年目」もあって「メリーさん」も入れてるかというと、お客さんに、新しい噺かなんかわからんけど、おもろいな、楽しいなっていうのを感じてほしいんですよね。

「昆陽の釣り」は吉朝のイメージ、初演の「百年目」は米朝師匠のイメージ。師匠と大師匠を意識したネタをサンケイホールで。そこに自分がこしらえた噺と、そういうネタの並びになったと思いますね。その上に「スライドショー」も(笑)。

Q:落語会がすごく多い上に、ドラマや舞台にも出演されていますが。

桂 吉弥:もちろんドラマもやらせていただいて、おもしろいんやけど、ベースは落語家。座布団に座ってしゃべると落ち着くっていうか。こういう独演会で3席やっても、独演会が続いてもお客さんと自分のやる落語が、うまいこと波長が合うと全然疲れないですね。

逆に落語しゃべるのが2日ぐらい空くと、なんやちょっと頭痛なったり、風邪気味なったりねぇ(笑)。昔から10畳ぐらいの座敷でやらしてもうてる落語会があるんですが、2席の会を3回やるから1日6席です。前日にバラエティ番組に出て、ちょっと風邪気味かな~とか思ってたら、2日間で12席しゃべったら治りましたもん(笑)。

多分ね、お客さんが笑ってくれて、その気をもらってるのもあると思うんですよ。合うてるんでしょうね。落語の噺で、自分が好きな世界を聞いてもぉて、笑てもぉて、ええ感じで、よぉウケていう時は全然疲れないです。ただ、古典落語でも、もうちょっとウケたろとか、ここでもっとこんなんやったろみたいに無理したら、やっぱり疲れますけどね。

Q:今後はどんな落語を目指したいですか?

桂 吉弥:今度は、お客さんに思てほしいですよね。吉弥の落語聞いたら風邪治ったとか(笑)。なんかイヤなことあってんけど、あぁなんかすっきりしたわ、みたいなんとかね。

最初に言いましたけど、大層な芸ではないんです、落語って。と、ボクは思うんですよ。だから、普段使いにボクの落語を聞いてもらいたい。でも、実は、すごい食べたらおいしかったわ、とか、栄養ついたわ、とか、実は贅沢よねっていうふうにもなってほしい。そういう落語が出来たらいいなと思います。

Q:関西に帰ってきた時は、何してますか?

桂 吉弥:家におるか…NGK観に行ってます。普通にお客で新喜劇観に行って、すっちーくんを観てゲラゲラ笑ってますね。今、ボクの子どもが、小学校3年の女の子なんですけど、NGKがすごく好きで、すっちーの大ファン。すち子さん出てきたら一緒に手ェ叩いて(笑)。

観ることがすごく好きですね。歌舞伎や文楽の公演も行って、あぁええなぁ思て。芝居も、小劇場も行くし、音楽聞きに行ったり。ありとあらゆるものを観るのが好きですね。劇場が好き。落語は…ないなぁ…。あ、スポーツも好きです。サッカーもですけど、野球始まると甲子園にも行きますし。忙しいですねぇ(笑)。

Q:今、一番コレが気になるっていうものは?

桂 吉弥:すっちーやな(笑)。おもしろいですねぇ。でも、ボク43歳なんですけど、気づくと歌舞伎の愛之助さんはじめ、すっちーくんらも、だいたいみんな同世代。そういう人たちが、今、芯取り出してる、みたいな。それがすごい刺激になる。

お客で観に行ってますけど、彼らと交流したいですね。もうちょっとしたら、すっちー・吉弥対談とかしたいなぁと思って。愛之助・吉弥・すっちーで…とか(笑)。そういう世代が頑張ってるから、あ、オレも落語で頑張らなって、毎日刺激を受けてます。

米朝師匠や枝雀師匠とか、失礼ながら、残ってる録音で40代後半ぐらいから50代初めにかけて「うわぁ、すごい」っていうのをやってはる。だからボクも頑張り時ですね、ま、楽しみ時でもありますし。それを目指したいと思います。

【取材・文=ドルフィン・コミュニケーション】

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