黒柳徹子が女優で、舞台に立っていることを知らない人は意外に多い。テレビ番組「徹子の部屋」とともに、彼女がライフワークと言う主演舞台がある。1989年にスタートし、今も毎年1回の上演を続けている海外コメディ・シリーズだ。第29弾の今回は喜劇王・ニール・サイモンの傑作で、シリーズ最多の4回目の上演となる人気作「ルーマーズ」。
舞台はニューヨーク郊外の市長代理の豪邸。パーティに招かれたセレブカップルが、血まみれで倒れている主人を発見、スキャンダルを隠すため次々と訪れるセレブたちをその場しのぎのウソでごまかすが、収拾がつかなくなって…という抱腹絶倒コメディだ。徹子さんの舞台を観たことがない人は、この作品でプロの喜劇女優ぶりを目撃してほしい。
毎年、シリーズ公演のために来阪、ホテル阪急インターナショナルで記者会見されている徹子さん。いつもサービス精神たっぷりのお話で、時間が超過することも多いが、楽しい。今回初めて、プライベートな大阪でのお話を聞くことができた。ありがとうございました。
Q:作品は“10秒に1回大笑い!”とありますが?
黒柳:1990年の東京初演の時、あまりにみなさんがわぁっとお笑いになってね。劇場というのは、テレビで撮ってない限り笑いが消えてしまうので、もったいないと思って、私がカウンターを買ってきて、ステージのドアの後ろに立ってるスタッフの人に「クスクスっていうんじゃなくて、ドッと笑う時だけ数えて」って頼んで。終わりの3日間だけ測ってもらったら、700回以上だったんですよ。大阪に来ましたら、750回笑っていただきました。大阪は50回も笑いが多くて、びっくりしたんですけど(笑)。これは何回やっても必ず笑っていただけるものなので、絶対いいなと思って、この作品に決めました。
大阪の方は笑いに敏感なんで、私たちがおもしろいと思ってなくても、大阪のお客さんがお笑いになった時は、楽屋へ帰ってから、どうしてあそこで笑ったんだろうと台本調べて研究してね。大阪に来てから増やした笑いもありますよ、セリフや間とか、言い方とか。
700回の笑いっていうのは、ブロードウェイよりずっと多いんですね。初めはそうでもなかったのを、そうやって日に日に増やしていった笑いなので、できれば今回も増やしたいと思ってます。
Q:シリーズの中で一番笑える作品はこれですか?
黒柳:一番笑えるのはこれです。同じニール・サイモンの「ローズのジレンマ」も相当笑えるんですけど、シリーズの中でこれが最強ですね。“ルーマーズ”って“噂”という意味で、はじめっからすべてがおもしろくて、特に最後のドンデン返しがすごくおもしろいんです。
この話はね、笑ったけどどんな話だったかよく覚えてないっていう方が多いんですよ。筋はちゃんとしてるんですけど、あんまりいろんなことがあるもんだから。そういうのが一番いいんですよね。なんだかわかんないんだけど、おもしろかったっていう。だから、前にご覧になった方ももう一度観て、また笑っていただくとね。で、時々ちょっと思い出していただいて(笑)。
でもやっぱり、いまさらのようにニール・サイモンっていう人がうまいんだなって、つくづく思いますね。よくこんな何ごともないようなところから、こんな話が出来たなぁと思ってね。短時間の話なんだけど、ほんとにおもしろい。
Q:昨年お亡くなりになった演出の高橋昌也さんと作りあげてきた舞台ですね。
黒柳:高橋さんの演出は、もう、ほんとに微に入り細に入りなので、よ~く覚えています。記録も全部撮られているし、絶対に忘れないので。そのタイミングも大騒ぎも、昌也さんがおっしゃったようにやっていくつもりです。この作品は、相当完璧にできてますしね。
去年は高橋さんが…もう、あまりのことにびっくりしたまんま舞台に立っていたんですけど、今年は1年経っているので、みんな昌也さんから教えていただいたことを思い出しながら、やっていくと思います。今回は、私のダンナ様で真面目な弁護士役の団時朗さんが新しくお入りになるんですけど、団さん以外は前と同じ方たちなので、とてもよかったと思います。みんなすごく仲よくてね。こんなに俳優同士で仲のいいグループ、めずらしいと思うんですよ。東京は5月に始まるのに、去年の12月にもう打ち上げやったんです(笑)。景気づけにみんなでご飯食べたんですよ。やる5か月も前から盛り上がってどうするっていうぐらい、もうすごい盛り上がっちゃって(笑)。みんなすっごい楽しみにしててね。偶然なんですけど、全員「徹子の部屋」にいらしてる方でした。
仲がいいっていうのは、こういう芝居やる時にほんとに必要なんですよね。とにかくみんなで一緒に大変なことを隠そうって話ですから、気がそろってないとできない芝居なんで。実際にみんなが仲がいいってことは、とっても重要なこと。それもやっぱり、高橋昌也さんが作ってくださったことでもあると思ってます。
※【その2】に続く
【取材・文=高橋晴代】