旗揚げ当初から再演を行わないスタイルを続けている、青木秀樹率いる劇団クロムモリブデン。今作の「七人のふたり」は通算45本目となる。
今回の題材は、インターネット動画。1人の高校生が部室に閉じ込められた事件の動画を巡り、虚構と真実が入り混じった世界を描いていく。
「自由な動画撮影が可能になり、簡単にインターネットにもアップできるようになったことで軽率な犯罪が増えています。万引きの撮影や、不謹慎なイタズラをアップする事件を目の当たりにし、人間の本性をさらけ出している行為ではないか、とも考えました。再生回数が増えるのは観る人も多数存在するということですから」と青木は作品の背景を語る。
青木自身はインターネット動画にまつわる事件についてどう思っているのだろうか?「私自身は動画撮影はしませんが、大学が映像学科でしたし、映像が好きです。実際、YouTubeはよく見ます。映画、音楽、漫才、コント…何でも見ます。映像世界はかつて簡単には手の届かない世界でしたが、最近は誰もが撮影できる時代です。魅力的である反面、犯罪も増えており危険だと思っています」と複雑な心境を語る。
毎回話題となるポップな舞台セットや凝った小道具も見どころの一つだ。「会議室などで稽古することが多いのですが、そこにあるものを使い倒すことで有名な劇団です。今回は葛木英が牢獄の囚人を表現するためにハンガーラックを使っていたのですが、実際にハンガーラックを舞台に使用することになりました」。これは舞台でぜひ確認したいところ。
スマホ依存症が広がる世界を舞台に、インターネット動画を通して人間の本音に迫る最新作。青木の鋭い視点で描かれる“乱痴気騒動”を堪能したい。【東京ウォーカー】