「ノルウェイの森」や「海辺のカフカ」などの作品で知られ、日本のみならず世界中に多くのファンを持つ作家・村上春樹。その最新作「1Q84(いちきゅうはちよん)」(2冊同時刊、各1890円)が5/29(金)に新潮社から発売される。
だが、日本中が待ち望む新作長編小説だというのに、この一風変わったタイトルと発売日以外は一切の情報が漏れてこない。新潮社のサイトを見ても表題と発売日以外はわからない上に、発売まで2週間を切ったタイミングで登場人物の名前すら不明なのだ。
いくらなんでも謎のベールに包まれ過ぎた現状を打開しようと、新潮社の出版部に話を伺った。するとこの“秘密状態”には、実はちゃんとした理由があるという。
「02年に刊行された『海辺のカフカ』の際に、世界中の読者から村上さんに作品の感想や質問を受け付けるホームページが設けられました。その中で“事前の情報を何も知らずに作品を読みたかった”という声が、読者から少なからず寄せられたんです。そこで今回の作品では実験的に、舞台も登場人物も事前に一切わからないようにしているんです」(新潮社出版部担当者)。
作品の情報が直前でもまったくわからないのは、村上春樹らしい実験の1つだったのだ。その甲斐あってか、WEB上では「1Q84」というタイトルを手がかりにした議論が盛り上がりを見せている。ある人はジョージ・オーウェルの「1984」について考察し、またある人は魯迅の「阿Q正伝」が絡んだストーリーを予想している。
今年2月にイスラエルで行われた歴史的なスピーチや「ノルウェイの森」の映画化など、最近なにかと村上春樹が話題になることが多い。八重洲ブックセンターなどの都内の大型書店でも、需要を見越して多数入荷する予定だという今回の新作。はたしてどのような内容なのか、その全貌が明らかになる発売日が待ち遠しい。【東京ウォーカー】