空中に岩が浮かんでいる絵画「ピレネーの城」など、我々の思考や行動を規定する「枠」を飛び越えた世界を表現し、20世紀美術を代表する画家「ルネ・マグリット」。そのマグリット展が、京都市美術館で10月12日(月)まで開催中だ。本格的な大回顧展は実に13年ぶりとなる。
本展は、ベルギー王立美術館やマグリット財団の全面協力を得たことで、教科書でも見たことがあるマグリットの代表作「ゴルコンダ」など、約130点が集結した。
初期から晩年までくまなく出展されているため、マグリット芸術の変遷をたどることができる今回の展覧会。たとえば、第二次大戦中の作品は戦争の不条理さに最大の抵抗を示すため、印象派風の色彩と柔らかな筆致を用いた作風であった。戦後、短期間ではあったが、荒々しい筆触とけばけばしい色彩で、感情を作品に反映させる表現主義的な絵画を描いた。時代・状況を反映した作風の移り変わりを目の当たりにできる。
また、通常は別コレクションに収蔵されている、同テーマの作品群を並べて展示したことで、マグリットの思考・創造過程もつぶさに見ることができ、大変興味深い展覧会となっている。
会期中には「絵画の不思議学」と題した講演会や、朝の解説講座などのイベントも多く開催される。不思議なマグリット絵画を理解する手助けとなるに違いない。
7月11日の一般公開に先立ち、7月10日に行われた記者説明会で、潮江宏三同美術館長は「若い層の方もこの展覧会を期待していると聞いている。これをきっかけとして、新しい鑑賞者が増えれば」と期待を述べた。
先に開催された東京では86日間で34万3千人を動員。京都では20万人を目標としている。
【取材・文=関西ウォーカー編集部】