車のプロである自動車会社の広報担当者は、普段どのようなドライブを楽しまれているのだろうか? 前回は首都高速湾岸線でのナイトドライブの良さを教えてくださった、アウディ ジャパン広報マネージャー小島誠さんに、今年8月に販売を開始したスポーツクーペ「TTシリーズ」で走ってみたい場所について、さらに伺った。
─前回は、首都高速湾岸線でのナイトドライブをお勧めしていただきました。その他でココがオススメのコースとかございますか?
小島誠(以下小島):八ヶ岳高原ロッジにある八ヶ岳高原音楽堂までの並木道がすごく長くて壮観です。左右に木々が並ぶ直線を走るのです。
八ヶ岳高原音楽堂は、キース・ジャレットがバッハを録音した場所。かつて何度かコンサートに伺いましたが、秋に訪れた時がとても印象的でした。あと音楽堂で思ったのですが、どこへドライブするかということとともに、車中でどのような音楽を聴くのかというのも、とても重要です。
─小島さんは音楽にもこだわりをお持ちなのですか?
小島:こだわりといいますか……大好きです(笑)。聴くジャンルはシチュエーションによって異なりますが、私の音楽のルーツは「はっぴいえんど」とその周辺のいわば日本語のロック。70年代初頭から半ばにかけて、荒井由実さん、吉田美奈子さん、シュガー・ベイブをリアルタイムで聴いていました。その後70年代後半ファニア・オールスターズの来日の頃から、ニューヨーク・サルサ、フュージョン、ジャズへと広がっていきます。今は“ニュージャズ”と評されるロバート・グラスパーやエスペランサ・スポルディングをよく聴いています。また、ライブでは、ベーシストの角田隆太さんとボーカルの吉田沙良さんをコアとする、ジャズミュージシャン菊地成孔さんがプロデュースした9人編成の「ものんくる」というバンドを追っかけています。おっと、脱線してしまいました(笑)。
─とてもお詳しいですね。そういえば、アウディの社名は「音楽」に関係されているとか?
小島:そうなんです。アウディの創始者であるアウグスト・ホルヒの“ホルヒ”は、ドイツ語の“聞く”という意味。ラテン語でAudiとなります。スペルがaudioと似ていますね。アウディは創業時から音とのつながりが強いのです。今や、さまざまな自動車メーカーがBOSEのサウンドシステムを採用していますが、それを最初に自動車に採用したのがアウディ。また、デンマークのBang&Olufsenのシステムを車載したのもアウディが最初であると聞いています。いまでは、自動車の開発初期の段階から、オーディオメーカのエンジニアの方と共に、車載に最適なサウンドを作り込んでいます。かつて、ドイツ本社の研究開発部門を訪問したときに、そこで音作りに携わっている技術者は全員ミュージシャンでした。音楽好きがこだわるカーオーディオですから、とてもいい音がするのです。
アウディのこだわりについてひとつ例をあげますと、例えばアウトバーンを時速250km/hで走行中に、ボーカルをクリアーに聴くため、Audi A8のスピーカーグリルの穴の数は44,653個じゃなくてはだめだとか、とにかくそのこだわりはハンパではありません。音のほかにも、20年間クルマの匂いを嗅ぎ続けている嗅覚チーム、あるいは触覚や視覚など、“五感チーム”が存在します。これらのチームは、アウディらしい音・匂い・触感・視覚効果を初期段階から研究しています。その結果、コンパクトなA1から最上級モデルのA8、R8まで、ブランドとして統一感を生み出すことができ、どのモデルでもお客様に「アウディらしさ」を感じていただくことができます。
─「Audi TT Coupe 2.0 TFSI」(542万円)と、スポーツ色を強めた上級モデル「Audi TTS Coupe 2.0 TFSI quattro」(768万円)では、エキゾーストが奏でる音が違いますね。TTSはよりマインドがくすぐられる音がします。
小島:スポーツカーにサウンドは不可欠。今回の「TTシリーズ」でも自動車の様々な音を “チューニング”しています。クルマの長い歴史の中で、乗り手に“スポーティーさ”を訴えかける音というのがありますよね?
─「Audi TT」でドライブする時の、おすすめの音楽を教えて頂けますか?
小島:先ほど少し触れましたが、今私は、ニュージャズの代表格ロバート・グラスパーとカテゴライズできない「ものんくる」をよく聴いています。両者ともジャズをベースに、時代と融合しながら常に変化・進化を続けている。創業以来、常に新しいことに挑戦、そして進化してきたアウディと似ています。特に「ものんくる」、彼らのアルバム「南へ」を聴いてほしいです。前回おすすめした首都高速湾岸線で東京から横浜方面を、「南へ」向かいながら(笑)。
クルマにしても趣味にしても、“音”の話題になると、一層楽しそうに話してくださった小島さん。アウディに乗る際は、走りやスタイルはもちろんのこと、“音”にも注目していただきたい。【東京ウォーカー】