人気作家・伊坂幸太郎の同名小説を原作に、生田斗真、浅野忠信、山田涼介(Hey! Say! JUMP)らの豪華共演で実写化した映画「グラスホッパー」。メガホンをとったのは、「犯人に告ぐ」「イキガミ」で知られ、生田とは「脳男」以来の再タッグとなる瀧本智行監督。婚約者を失った男が復讐のため裏社会に身を投じて奔走する様を描く、疾走感あふれるサスペンス・エンタテインメントだ。今回、瀧本監督に作品への思いをうかがった。
―伊坂幸太郎作品の中でも最高傑作とされる作品を、映画化するというお話があったときはどういったお気持ちでしたか?
「できれば逃げたいと思いました(笑)。僕も、原作ファンの人もおもしろいと感じた部分を、映画にするには落とさざるを得ないと、初読の段階でわかっていたので『ファンの人に叱られてしまうのでは?』なんてことも考えました」
―映像化困難と言われてきた原作ですが、特に難しかったことはありますか?
「映画は時間芸術なので、2時間程度の流れの中で表現するという制限があります。正直なところ、本作の様に裏社会に巻き込まれていく主人公の鈴木、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの殺し屋・蝉といった三人の視点で進むような複雑なストーリーは、あまり映画というメディアには向いていません。それでも、小説と同じように先が気になって、ページを次々とめくるような“疾走感”のある映画にしなければいけない。原作の魅力を損なわず、映画の時間軸と流れの中でいかにうまく表現するかが最初にして最大の課題でした」
―メインキャストはもちろん、脇役に至るまでキャラクターが立っていて魅力的でした。
「それも原作の魅力だと思います。伊坂さん独特のユニークなキャラクターが満載なので、できるだけ映画でもそうしたいと思いました。“物語の疾走感”と“キャラクターの魅力”こそが、映画化に当たって自分に課したテーマです」
―映画「脳男」に次いで再タッグとなった生田斗真さんを、主演として迎えるに至った経緯をお聞かせ下さい。
「映画『脳男』はすごくタフな仕事だったので、一緒に作り上げた達成感がお互いに強くありました。『また一緒にやるときは、全然違う役でやりたいよね!』という話も、生田君としていました。本作の話があった時も、『彼がやりたいなら、やりたい!』と言ったところからスタートしましたね」
―すぐに生田さんの顔が浮かんだわけですね。たしかに「脳男」で演じたミステリアスな役柄とは真逆で、今回の生田さん演じる鈴木はすごく親しみやすい役柄でした。
「彼は素の部分から、ナイスガイですごくいい奴なんです。そういう素の部分が、鈴木というキャラクターの中から垣間見えたらいいなという思いがありました。生田君の素の部分がにじんでくると、観ている側も感情移入をしやすくなるのではないかなと。他のキャラクターは殺し屋とかで、感情移入しにくいですからね(笑)。物語が進むなかで、安心できるような、ごく普通のキャラクターになってほしかったんです」
※その2に続くhttp://news.walkerplus.com/article/67663/
【取材・文=大西健斗】