派手な外観や彩りの鮮やかなラーメンがある一方で、古くからファンに支持され、我が道を行くラーメン店も多数存在する。特に東京でかつて王道であった、あっさり醤油ラーメンもそのひとつ。いわば哀愁すら漂う、ノスタルジックな3軒を紹介しよう。
笹塚にある【福壽(ふくじゅ)】は創業以来約60年にもなる老舗ラーメン店だ。小林克也さんは2代目で、約30年前に父から継いだ。広々とした店内にはカウンターとテーブル席が。奥の部分は今は使用していないが「最盛期は、ずらっと器を並べてね。一気にたくさん作ったもんだよ」と数十年前を懐かしがる。かまぼこや煮シイタケなどが入った「五目ラーメン」を完食すると、器の底には「日本一」と書かれた文字が。年期モノのかまども昭和の雰囲気が全開だ。
古さという点では神保町の【さぶちゃん】も特筆すべき店。生まれも育ちも神田神保町の木下三郎さんが昭和41年に創業し、今年で43年目だ。7席のみの小さな店だが、実は両隣のキッチン、定食屋さんもご兄弟で、その手伝いの後に、この場所が空いたのでラーメン店を始めたというわけ。こちらはチャーハンが半分付く「半チャンラーメン」の元祖とも言われる。まろやかな醤油味のラーメンとともに、優しい味わいのチャーハンをいただいて690円はお値打ち。
一方、新店なのにノスタルジックな雰囲気に満ちあふれているのが浅草橋の【麺処 ひろ爺(ひろじ)】。もともと神奈川で営業していたが、浅草橋へ移転。佐藤浩次さんが奥さんとともに、ほのぼのと切り盛りしている。鶏ガラベースに昆布や煮干し、厚削りの鰹節などを用いて背脂を加えた醤油ラーメンは、今どきなんと500円! しかも夜は全て200円の唐揚げ、揚げギョーザ、お新香などのおつまみメニューも登場し、生ビール(中)も400円で提供し、憩いの場と化している。
これらのラーメン店には流行に流されない強さがある。大将の気力、体力が続く限り、今日もお店に明かりが灯るのだ。【連載「はんつ流(13)」/フードジャーナリスト・はんつ遠藤】