※その1(http://news.walkerplus.com/article/70456/)の続き
Q: なぜ、ノンバーバルで?
ニューヨークもロンドンも、"劇場で上演する"イコール"演劇"という、今までの演劇の形態がどんどん変わってきてます。レッキンは、アジアの何か所でも知られていて、特にシンガポールでは何回もワークショップや公演をしていて、大変な人気なんですよね。それは、言葉がないから。言葉がないと、国はいくらでも越えられるし、また新しい表現ができたり。むしろ言葉を論理的に戦わせることよりも、フィジカルに言葉なしで伝わった方がお互いにわかり合えるからじゃないかと僕は思います。
Q:世界公演も視野に?
力のあるプロデューサー2人ぐらいから強いオファーがあります。レッキンは2011年に初めて光るダンスを発表して、今、世界中でコピーされてるんですよね。ニューヨークでは完全なるコピーも見ました。レッキンのみなさん、1人1人が光るワイヤーを衣裳に縫い付けてるんです。感電してもおかしくないぐらいシンプルにやってきてる。試行錯誤してやっとできた、ほんとに手作りです。よくここまでハンドメイドで生きてきたなっていうぐらい温かいカンパニーで。だから、自分たちが世界的コピーの元祖だってちゃんと自信を持とうよと。
Q:レッキンのダンスの魅力は?
ずっと全身が見えてるわけではなく、光、音楽、リズム、タイミングまで見事に計算されていてイリュージョンになるんですよね。空間の見え方が今までのダンスの使い方と違う発想。ただ光らせて見せるだけではなく、総合的な劇場の使い方が見事だった。すべてが計算された中で人を楽しませるエンターテインメント性があり、光、闇、すべてがコントロールできるような新たな表現があった。それが僕が感動したところです。
あと観客参加型でもありますね。彼らは客席へどんどん入ってきちゃうんです。横でピカッと光ったら、すぐに真っ暗になる。「え、何が起こったの?」って、まるで宇宙世界のオバケ屋敷にいるような感覚になる。よく暗闇で、すごい勢いで動けるねって思う。
YOKOIさんが、お客さんを驚かせるのが大好きで、これでもかこれでもかって徹底的にやる人なので、そのおもしろさに感動したのかもしれない。今回も、お客様を巻き込みながらという感じでね。
Q:負け犬経験は?
僕はずうっと負け犬です。今はそう思わないかもしれないけど、元はすっごい負け犬で、もともと引きこもり系だし。今回の千葉さんがやる青年のように、やや暗い男で、今の世間の中で自分は生きる価値がないと自分を否定してきた人間の1人ですから、負け犬系の人間は大好きで共鳴します。だからどうしてもそういう話になってしまう。
Q:好きなB級映画は?
「宇宙大戦争」好きです。「ウルトラマン」「ウルトラQ」「ドラキュラ」「フランケンシュタイン」とか、モノクロの時代の映画が好きですね。なかなかB級SFって言っても、若い人がわかってくれない(笑)。今でいうと僕は、ティム・バートン的な感覚が大好きで、物事を客観的に見て遊んでるっていう感覚がおもしろいなぁと思っているんですけど。
Q:太鼓集団のDURAM TAOも構成・演出を。
TAOもレッキンも、日本ですっごい才能を持ってる方たちがいて、海外では認められ始めているのに、日本ではあまり知られていないことに驚いていて。レッキンも、地元の大阪であまり知られていない。この広い世界の中で誰もやったことがないことをスタートしてた人たちがいる。それはすごいことなので皆さんに応援してほしい。お互いを叩くのではなく、讃え合えば、きっと日本ももっとおもしろくなると思う。僕が少しでもそのお手伝いができるなら、いくらでも一緒にクレイジーになって頑張りたいと思っています。
Q:そういう形のお仕事はいかが?
毎回おもしろいし、チャレンジングだし、毎回新鮮、絶対慣れることのできない仕事ですよね。でも、それこそが楽しい。才能がある人たちがもっと輝いていくのはうれしいです。自分が仕事させてもらった役目というか…僕は、本人がもともと持っている魅力なり、気が付かないものを引き出し、違う魅力がある人たちに化学反応をさせ、今まで見た事が、やったことがない舞台を作る事です。そんな新たな舞台が生まれる瞬間を、共に経験できることは本当にうれしいことです。
Q:大阪に来た時に必ずすることは?
串カツ食べに行ってます(笑)。それと、イカ焼き食べて、梅田食堂街をウロウロしています。大阪の気さくな感じが好きなので。あとは京都ですね。京都は美術展とかおもしろいのがあると、必ず見に行きます。特別展では、朝早くから、おじいちゃんやおばあちゃんたちと一緒に並んでいますよ(笑)。
【取材・文=高橋晴代】