“知財でつくるクオリティ・オブ・ライフ”を掲げるフリーマガジン「特許ウォーカー」vol.4が発行となる。今回は“地方発、世界へ”をテーマに、「産学連携で起こすイノベーション」を特集。
“信州発世界”の取り組みを行う信州大学は、長野県内にある5つのキャンパスごとに、自治体や地元企業・団体と連携している。地域ブランド、ライフサイエンス、ナノテク・材料、ITと多岐分野にわたり、共同研究は400件近く。これら研究の成果として出願される特許は、年間150件ほどだ。
また、慶應義塾大学発のベンチャー企業にも注目したい。鉄鋼の4倍の比強度とナイロンを上回る伸縮性を持つ最強の天然繊維、クモの糸。これを初めて人工的に生成した新時代の素材「QMONOS」で世界の注目を集めるのが、山形県鶴岡市にあるSpiberだ。同社は、慶應義塾大学先端生命科学研究所から生まれたバイオベンチャー企業。取締役兼代表執行役の関山和秀氏は、慶應義塾大学環境情報学部で「クモ糸人工合成」の研究を行い、実用化を目指し2007年に同社を設立した。
強くて軽く、形を自在に変えられる「QMONOS」の用途は無限大。衣類、宇宙服、自動車、飛行機、人工血管など、他分野での実用化が期待される。人工合成クモ糸に関する繊維や、その製造方法の特許を次々と取得し、権利を強化。現在も多くの特許を出願中だ。
ヒット商品で学ぶ知財「IP SCOPE」では、ユニ・チャームの「超快適マスク」をピックアップしている。発売以来、マスク市場をリードしている同商品。ウイルス感染や花粉を遮断する従来品の利点を生かしつつ、より気軽に使えるプリーツタイプとして2011年に開発された。「やわらかストレッチ耳かけ」や、マスク本体端のエンボス加工をカーブさせた点で特許を取得。耳が痛くならないことに加え、顔とマスクの間を隙間なくフィットさせる意匠も登録した。
「日々、クリエイティブは進化しているので、意匠制度のあり方を考えていきたい」と話すのは、経済産業省特許庁審査第一部意匠課企画調査班の菊地拓哉氏。「デザインを創造するのは大変だが、偽物を作るのは簡単。そのため、保護が必要となる」。意匠権には信頼性の向上、ブランドの形成、技術保護の補完といった効果もある。「今後は、調査研究の成果を基に、意匠権の効果や利点を積極的にPRしていきたい」と意気込みを見せた。【東京ウォーカー】