※その1(http://news.walkerplus.com/article/75353/)の続き
これまでも女優たちの新たな魅力をスクリーンへと昇華させてきた岩井俊二監督が、本作の主演に黒木華を迎えた理由とは。
「彼女とはCMの撮影で出会って、その後、BSスカパー!の『日本映画専門チャンネル』で番組を一緒にするようになりました。正直なところ、映画で女性を被写体として撮った時、自分の中では物足りなさを感じてしまうことが多いんです。十分に満たしてくれるレベルの人なんて、今までもそうはいなかった。それが彼女の場合は、『早くこの子で映画を撮りたい!』とさえ、こっちに思わせてくれた気がします。彼女とCMを撮影した時も、『ここに映画の台本でもあれば、映画が一本撮れるのに…』と思いながら撮っていた思い出があるぐらい。なので、具体的な魅力があって惹かれたというよりも、必然的に『この子で撮りたいな』と思ったところから決まっていった気がします」
黒木華の女優としての素質と、Coccoが持つ魅力について。
「お芝居が上手いとか、頭がいいとは別に映画女優が持っていなければいけない魅力というのがあると思うんです。それは大多数の人が見て、自然にチャーミングだと思えること。こればかりは持って生まれたものでないと、どうにもならないものですけどね。彼女のように控えめな顔立ちの方が、映画向けで長時間観ていられる。デリケートな表情だけでグッときたりする。だから、あんまり眼がギョロっとしていて、ハッキリした顔だと分かり易すぎて難しい。眼が大きくて人を魅了し続けられるというのは、よっぽどの眼や精神面を持っていないと難しいと思います。そんな中でも、別格に凄かったのはCoccoさんですね。あれだけ眼が大きいと普通は分かり易いはずなのに、その眼を見つめても空っぽに見えるというか、内面で何を考えているかさっぱり分からない(笑)。本来はそういう空っぽに見える子はあんまり映画に使いたくないんですけど、あの人の場合はなんだか引き込まれるというか、深い森があるような眼をしている。ああいう人はなかなかいないですよ」
岩井俊二という男を確立させた、大阪での日々についても語ってくれた。
「幼稚園に入って夏休みが過ぎたぐらいの時、生まれた仙台から引っ越して大阪に2年ぐらい住んでいたことがあります。あの頃は、ずっと田んぼでバッタを追いかけたりして、自分なりの遊びを考えていました。親も構ってはくれないから、ひとりでどこまでも歩いて行ったり、自分で全部やらなきゃみたいなことから自我が確立した気はするんです。小学校に入ってからも馴染むのが非常に難しくて、帰ってこれなくなる気がして輪にも入れない。ずっとアウトローで、距離を置いていたように思います。これは僕の悪い癖で、遠足に行っても家族で行動していても、そのグループから外れて迷子になるんです。みんなと一緒にいれないんですよ。そういう気質は、おそらく幼少時に培われてしまったんです」
【取材・文=関西ウォーカー 大西健斗】