2005年5月。シアターBRAVA!がデヴィッド・ルヴォー演出の「ナイン THE MUSICAL」で幕を開けてから11年。演劇、音楽、落語など多岐にわたるステージで多くの観客を楽しませてきた。この5月、“さよならBRAVA!”と銘打つ最後の劇場主催の演劇公演「ナミヤ雑貨店の奇蹟」、そしてブロードウェイミュージカル「スウィーニー・トッド」の2作品がラストを飾る。
オープン年には、蜷川幸雄が70歳の記念公演「天保十二年のシェイクスピア」を上演し、その後も多彩な蜷川演出作品を展開。1周年には、舞台機構を再構築して臨んだ関西初の中島みゆきの「夜会」。同年にNODA・MAPが「贋作・罪と罰」で初登場。劇場最後の野田作品となった今年3月の「逆鱗」も、松たか子主演という奇遇…。彼女はまた、松本幸四郎との親子共演で2009年の「ラ・マンチャの男」にも出演した。
ミュージカル、ストレートプレイ…あなたはシアターBRAVA!で、どんな作品を観ましたか?どんな思い出がありますか?
●「ナミヤ雑貨店の奇蹟」
原作は、ミステリー作家・東野圭吾の大ヒット小説(角川文庫刊)。2013年に演劇集団キャラメルボックスが舞台化し、好評を得たタイムトラベル・ファンタジーだ。今回、成井豊の脚本・演出はそのままに、キャストをほぼ一新したプロデュース公演として上演。キャラメルボックスはシアターBRAVA!オープン時の20周年記念公演「スケッチブック・ボイジャー」から、劇場最多の9回登場となる。
同じ養護施設で育った男性3人組が、コソ泥の末に逃げ込んだ廃屋は、過去と未来が悩み相談の手紙で繋がる不思議な雑貨店で…という物語。
3人組のリーダー格・敦也には、キャラメルボックスの多田直人が同役で再登板。「前回、作品力の偉大さを思い知らされました。人の悩みに寄り添って、『こんな考え方もあるんだ』『明日から頑張ってみよう』と思える、意義のある作品だと思う。僕以外のメンバーは変わるので、若くて粋のいい2人(松田凌、鮎川太陽)に負けないぞと思いつつ、チームワークを大事に演じたい。思い出を更新したいですね」と語った。
劇場関係者たちが原作を読み、全員が泣いたと言う感動作。舞台ではさまざまなエピソードが積み上がり、ひとつのストーリーに集約されていく。今回、成井はより原作に基づいて作り直し、決定版の舞台を目指す。
●ブロードウェイミュージカル「スウィーニー・トッド」~フリート街の悪魔の理髪師~
市村正親と大竹しのぶという最強コンビで上演された「スウィーニー・トッド」。シアターBRAVA!で2007年に関西初演してから、今回が4度目の登場となる。作品は、18世紀末のロンドンに実在した恐怖の理髪師をモデルに描く、痛快だが怖くて哀しい復讐の物語。
多くの演劇賞を受賞したこのミュージカルを原作に、2008年にはジョニー・デップ主演で映画化もされた。今回は主演コンビに加え、武田真治、芳本美代子、田代万里生、唯月ふうか、斉藤 暁、安崎 求ら、歌える個性派がそろう。
物語は衝撃的だ。無実の罪で流刑にされた理髪師が脱獄してスウィーニー・トッド(市村)と名乗り、ロンドンで昔なじみのパイ屋を営むミセス・ラヴェット(大竹)と手を組み、復讐を開始。理髪店で正体を知る人間をカミソリで首を切って次々と殺し、死体は人間ミンチにして階下のパイ屋へ。ロンドン一まずいと評判のパイ屋は、行列のできる店となって大繁盛!スティーヴン・ソンドハイムの独特な音楽、舞台セットを巧みに使った宮本亜門の演出。
大竹しのぶは「音楽が素晴らしいです。この作品は、すっごく恐ろしい話を笑いながら楽しくやるところが魅力的。『殺しちゃいましょっ』て、笑顔で歌って(笑)。これまで観ていただいた方には、ソンドハイムの音楽をさらにパワーアップしてお届けしたいです。初めてご覧になる方には、ワクワク感をお渡ししたいと思っています」と話す。
そして「劇場の思い出は、やはりシアターBRAVA!で何度も公演した『スウィーニー・トッド』が一番たくさんあります」とのコメントを残して…。この作品を、最後の演劇公演としてシアターBRAVA!は閉館する。
たくさんの楽しい思い出をありがとう!劇場に拍手!!
取材・文=演劇ライター・はーこ