「いつか実現しますように!」と昔から強く願っていたことがいくつかある。
一つ目が、「本を出すこと」。二つ目が、「コラムの連載をすること」。そして三つ目が、「上方漫才大賞の審査員になること」。ボクの場合、挙げ出すとまだまだキリがない欲深い人間なので、この辺りで止めておく。
元々、才能さえあれば芸人になりたかった人間である。そんなもの微塵もないことに気付くのに時間はかからなかった。けれど、お笑いには絶対関わりたかった。だから番組の作り手になった。お笑いの芸を磨く人たちをずっと、思いきり応援し続けたいと思っている。
2010年から、「上方漫才大賞」の審査員を務めている。今年で51回目を迎える、日本で最も歴史のある漫才賞だ。今年は5月14日㊏午後3時から、関西テレビ・ラジオ大阪で同時生放送される。関西には、他にも漫才、お笑いに関する賞はいくつかある。それぞれに意義深いものだ。
だが、「上方漫才大賞」は、なかでも「特別」な存在だ。特に演者にとってそうなのだ。受賞者たちの心の底から喜んでいるコメントを聞けば、すぐにそれが分かる。そして、この「特別」が、今のテレビに大切なのだ。関西、特に大阪はお笑いの中心と言われる。芸人も数多い。けれど今、彼らが「本芸」を披露できる番組が関西にいくつあるだろう。グルメレポートも、町歩きも、情報番組も、無論立派な仕事だが、芸人にとって「特別」ではない。一番力を注ぎたいのはお笑い、「本芸」のはずだ。そんな熱き思いに応えるためにも、関西のテレビ関係者には、芸人たちが「本芸」を披露できる場をさらに増やしてほしいのだ。
プロフィール/影山貴彦(かげやまたかひこ)
同志社女子大学 学芸学部情報メディア学科教授。元毎日放送プロデューサー(「MBSヤングタウン」など)。早稲田大学政経学部卒、関西学院大学大学院文学修士。上方漫才大賞審査員、GAORA番組審議委員、日本笑い学会理事。著書に「影山教授の教え子が泣きにくる。~涙が笑顔にかわる京都の女子大研究室」など。