女性のイメージが強かった“海女漁”だが、今では男性の活躍も目覚しい。男性なのに“海女”とは妙な話だが、約50人の海女がいる三重県・志摩市阿児町甲賀地区では、10年前にウェットスーツが解禁になったことにより、男性海女が増えているのだ。
そんな中でも、特に男前の海女のことを、“イケメン海女”と呼ぶらしい。今回出会ったのは、27歳の杉山裕介さんと、21歳の清水健太さん。たしかにどちらも端整な顔立ちの“イケメン”だが、なぜこの時代に“海女”という仕事を選んだのだろう? 2人の素顔に迫ってみた。
「やっぱり海が好きだからでしょうね」と話すのは、杉山さん。海女漁を始めて3年、この世界では“新人”だ。
「ずっと西表島などでダイビングインストラクターをやっていたんですが、父がこの土地にペンションを開くことになり、僕も参加しようと思って引っ越してきました。まずはこの土地のことを知らなければと思い、志摩ならではの“海女”をやってみようと思ったんです」
なんだか都会であくせく働く身からしたら羨ましい気もするが、やはり自然相手なだけに、苦労も相当あるようで…。
「初めはぜんぜん獲れなくて困りましたよ(笑)。やっとですかね、なんとか生活できるくらいのお金を稼げるようになったのは。台風で1週間漁に出られないっていうのもザラですし」
見た目がかっこいいだけに、「チャラチャラしているのでは?」と思われがちだが、家族を養っていくため、毎日“命がけ”で漁をするという杉山さんの言葉は印象的だ。
一方、「アワビ10kg獲れたときの快感はすごいですよ!」と熱っぽく語るのは、海女歴4年目の清水さん。お父さんのスキューバダイビングショップで働く傍ら、自由が利くという理由から海女をはじめたという。
「今では、海女漁の魅力にどっぷりハマっていますよ。やっぱり、自分の力で何かを獲得するというのは気持ちいいですし、アワビ10kgともなると興奮しますよ。海女はおじいちゃんになってもずっとやっていきたいんです。周りに、60代・70代の現役選手がたくさんいますから(笑)」
最後に、“イケメン海女”と呼ばれることについて聞いてみると、「自分では意識しないんですが、言われるとやっぱり恥ずかしいですね」とのこと。はにかむ笑顔は、ごくごく普通の好青年だ。
最近、“渋谷米”など、農業を見直す若者が目立つが、漁業に注目する若者もちゃんと根付いている。これからの彼らの活躍に期待したい。 【東海ウォーカー】