【大島優子インタビュー】鈴木おさむ作の舞台「美幸」で鈴木浩介と2人芝居に挑戦

関西ウォーカー

AKB48を卒業後、テレビドラマや映画にと活躍し、昨年、稲垣吾郎主演の「No.9~不滅の旋律~」でヒロインを演じ、舞台デビューを飾った大島優子。今回、2作目となる舞台「美幸」が上演される。作・演出は人気放送作家・鈴木おさむ。妻・大島美幸(森三中)の経験から着想を得た作品は衝撃的な恋愛物語で、同名タイトルの小説(角川書店刊)も発売中だ。

残酷なイジメに合い、絶望から身を守るために心が歪んでしまった少女・美幸。大人になって同じ境遇の男・雄星(ゆうせい)を愛した彼女は、無償の愛を誓い、彼を悲しませた人々に復讐を始める…。おかしいほど痛く、哀しいほど純粋な愛の物語は、美幸という女性の生きざまを描きながら、心ふるえる意外な結末を迎える。

舞台は鈴木浩介との2人芝居。稽古中の2人が来阪し、記者会見を行った。1時間半2人でしゃべりっぱなしの膨大なセリフの量に、5役も演じ分ける鈴木は「構成も含めて相当難易度が高い。舞台2本目で、大島さんはこの分量を素直に受け入れてやっていること自体、極太だと思います。すごい!」と驚く。「柔軟性、動物的な感性、俯瞰して見る冷静な目。違うものを同時に持ってる人ですね」。

大島もタイトルロールの美幸だけでなく、美幸を追い込む中学生時代の同級生なども演じる。明るく、しっかりと自分の言葉で考えを口にする大島優子が、舞台への意気込みを語った。

Q:この作品に出演するきっかけと、本の感想は?

ラジオの生放送中に鈴木おさむさんからオファーをいただいたんです。その時は内容を知らなくて、「2人芝居、大変そうだけどやります」って生放送の中で。で、実際に本を渡されて「え! これやるの?」って(笑)。最初は衝撃的だなと思ったんですけども、最後まで読むと、復讐したり、自分の人生をどう生きていくか考えるところでは、あれ?なんか気持ちいいな、痛快だなと思いまして。それを浩介さんに話したら、男性からはとっても悲痛だと。観る人も、性別の違いでどう受け止めてもらえるのか楽しみですね。

いじめられている時の状況も2人で見せていきます。裁判所や教室や、いろんな状況を私たちがシーンごとに変えていくので、お客様もその空間に入っていただけたらうれしいなと思っています。

Q:究極の愛とは?

親が子供にささげる愛だと思いますが、いろんな形があると思います。美幸の愛情も、究極の愛、素直にカッコイイなって思いました。美幸に関しては、愛情の愛もあるけど、哀しいの哀も、愛だなと。切ない哀しみを背負って生きてきたところから生まれた愛情によって、復讐劇になるので。

Q:鈴木浩介さんの印象は?

以前からドラマや芝居を見ていて、実は浩介さんと共演させていただくのが、すごくうれしかったんです。1人で5役やると聞いていたし、どんなお芝居を見せていただけるんだろうって、間近で刺激を感じられるのはとてもうれしくて。稽古に入ってからも、すごく安心して身を置いています。

Q:美幸という役柄についての印象は?

とても素直でまっすぐだなって思いました。彼女は何もやっていないんですね。彼女の周りが彼女の人生のレールをどんどん引いていき、彼女はそれに乗って進んで行ってるような感じ。この人のために何かしてあげようと普通に思うことが、復讐になっていったり。たまたま巡り合わせで、そういう方向に進んでしまっただけであって。

Q:共感できる部分は?

まったく人生が違うので…。ただ、お話のなかに登場人物が何人もいるんですが、その気持ちに寄り添えるのは美幸しかいない気がするんですよね。多分、どんな方が観ても、美幸の気持ちに寄り添うようにできている、というか。彼女の人生を物語にしているので、愛着がわいてくるようになっていますね。

Q:2回目の舞台ですが、前回の舞台で学び、今回使えていることは?

声、ですね。昔、声帯結節を手術した経験があり、初舞台の時はすごく怖かったんですよ。でも、しっかり声を出すやり方を教えてもらってから、自分でもできるんだって知りました。今回の公演中、ずっと2人で1時間半もしゃべっているし、叫んだり大声を出すシーンもあったりして心配でしたが、今はその不安も少なくなりました。感情を出して、より表現の幅を広げていきたいと思っています。

おさむさんは、自由に任せてくれる演出なので、芝居で遊ぶという感覚が分かりました。今、楽しいって感じています。

Q:膨大なセリフ、大変では?

先輩の浩介さんがずっと、「覚えられない」ってため息で(笑)。それに勇気づけられてます。私、覚えることは得意かもしれないですね。でも、吐き出しちゃうと忘れるんですよ。継続して覚えていられないので、どんどん覚えていくと前の方を忘れていっちゃう(笑)。

Q:お客様に伝えたいメッセージは?

(チラシでは出刃包丁を持ってますが)作品は怖くないですよ(笑)。愛情の形は人それぞれ違うので、それをどうやって届けていくか、その愛情をどうやって使うか、どうやって生み出すかということが、すごく考えられる作品だと思います。

Q:舞台の魅力は? 

生で観れるっていうことですよね。私は出るより、観る方が好きなんです。映画やドラマは画面を通すので、客観的に、第三者として観ているような立ち位置になると思うんです。でも、舞台は同じ空間にいて、お客さんも既にその世界の中の人というように巻き込んでいく。それが一番、舞台の魅力だなって思いますね。

私は観ていながら、ドキドキしたり感動したり涙したり、そんな思いにさせられることがあって、それは私が完全にその世界に巻き込まれているんだと、いつも感じています。舞台に立つ側の人間としても、お客さんを一緒に巻き込んで、そこの空気も、シーンや状況もすべて、その物語自体を一緒に作れるのが、舞台の魅力だと思っています。

Q:映像にない苦労や、やりがいは?

終始、緊張していないといけない。それは心の緊張、身体の緊張もありますけど、その緊張がいい緊張になっていると、役柄の感情が湧き上がってきて、どんどん役に入っていける感覚になるんです。テレビドラマや映画よりも、本気で魂がその感情にならないと立っていられないという状況が難しくもあり、やりがいのある、それが舞台に立つということなんだなと感じています。

Q:大阪に来た時、行くところ、行きたいところは?

前の舞台の時、ホテル近くの串揚げ屋さんがおいしかったので、また行きたいです。道頓堀ではたくさん写真撮りました(笑)。USJも大好きです。あ、通天閣に行ってないので行きたい! あと…新世界? 楽しそうじゃないですか(笑)。

■STAGE 鈴木おさむ劇場「美幸~アンコンディショナルラブ~」

期間:平成28年5/27(金)~30(月)

会場:サンケイホールブリーゼ (大阪市北区梅田2−4−9 ブリーゼタワー7F)

交通:地下鉄四つ橋線「西梅田駅」より徒歩3分ほか

作・演出:鈴木おさむ

出演:鈴木浩介、大島優子

音楽:中田ヤスタカ(CAPSULE)

価格:¥7,500

問合せ:06・6341・8888

取材・文=高橋晴代、撮影=西木義和

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