コンビで活動する芸人の場合、演者やマネージメントサイドからすれば、ピン、すなわちひとりずつの仕事が増えた方が、金銭的にオイシイ。例外はあるにせよ、たとえば個々でテレビ出演すると、ギャラはコンビでの半分とはならず、それぞれ上乗せとなるのが一般的だ。漫才師の場合は、本芸を披露するかどうかで出演ギャラが変わる場合もある。
ただこの世界は、お金だけでは測れないのが面白いところで、コンビで活躍する姿を目にしたいのが受け手の心理だし、またコンビでの仕事が上手く回っていれば、個々のオファーも途切れない、ということにも繋がる。まあ、これも時に例外はあるが。 ますだおかだが、久しぶりにコンビでの冠番組を始めた。「ますだおかだのオモログ」(カンテレ)だ。関西のディープなスポットをマンスリーゲストとともにロケして歩く「街ブラ」番組だ。5月にスタートしたところだが、二人のやり取りが既にとてもいい。ゲストを盛り立てながらの進行ながら、彼らのトークは完全に漫才として成立している。ますだの「te n.」(読売テレビ)等で見せるロケを回す卓越した腕や、東京で花開いた、おかだ珠玉の「すべりトーク」など、ピンでの活動がコンビの円熟味に一役買っているのだ。
女性漫才コンビのアルミカン(赤阪・高橋)も、企業人相手にいい味を出す。まったりしてて良い番組だ。
プロフィール/影山貴彦(かげやまたかひこ)
同志社女子大学 学芸学部情報メディア学科教授。元毎日放送プロデューサー(「MBSヤングタウン」など)。早稲田大学政経学部卒、関西学院大学大学院文学修士。上方漫才大賞審査員、GAORA番組審議委員、日本笑い学会理事。著書に「影山教授の教え子が泣きにくる。~涙が笑顔にかわる京都の女子大研究室」など。