【松井玲奈インタビュー】女剣士・沖田総司を軸に描く 幕末エンターテインメント「新・幕末純情伝」上演!

関西ウォーカー

演劇界に一時代を築いた劇作家・つかこうへいの七回忌にあたる今年。命日の7月10日(日)を挟み、東京と大阪で特別公演「新・幕末純情伝」を上演する。

新撰組の沖田総司は実は女だったという設定の物語で、これまで牧瀬里穂、石原さとみらで何度も上演されてきた人気作だ。今回、紅一点、九代目となる女剣士・沖田総司を務めるのは松井玲奈。SKE48を卒業後、初めての舞台で主演する。

小さい頃から男として育てられ、ひたすら剣の修行を強いられてきた孤独な女、総司。愛する土方歳三のため勤皇の志士たちを斬りまくる彼女の前に、坂本龍馬が立ちふさがる。幕末の京都を舞台に繰り広げられる、総司と土方、そして龍馬の熱い恋の行方は?勝 海舟、桂 小五郎ら、若き志士たちが夢見る新しい時代の夜明けとは?

龍馬を演じるのは役者としても評価されるノンスタイルの石田明、土方に細貝圭、以蔵には早乙女友貴らのキャスティングで。稽古真っ最中の松井が来阪、主演舞台で大阪デビューする意気込みを語った。

Q:つかさん、もしくはその作品を知ってましたか?

舞台は好きで、つかさんのことは知っていたんですけど、作品に触れるのは今回が初めてで、「新・幕末純情伝」も出演が決まってから本を読みました。人の感情の流れのなかで物語の起承転結があって、すごくおもしろいし、やりがいのある作品だなと思っています。

Q:おもしろいと思う部分は?

沖田総司という女剣士を軸に、いろんな男性たちが総司を思って心をかき乱されながら、みんなで時代を変えるという志の中で生きていく。人間の感情の変化っていうものが、すごくよく描かれているなと思っていて。1人1人のキャラクターが発する言葉やひとつのフレーズによって、みんなの心が動かされて次の展開に進んでいくんです。言葉の持ってる力がすごくおもしろい作品だなと。特に、岡田以蔵が総司のことを思って、勝海舟と剣を交えるシーンでの以蔵の長ゼリフがとても好きですね。それぞれのキャラクターが総司を思うセリフが、どれも心に響いてくるので、私もその気持ちに応えるような心持ちで芝居をやらなきゃいけないと感じています。

Q:これまで女子ばかりだったのに、今回は男子ばかり。稽古場は臭くない?

みんな男性ですけど、臭くはないです(笑)。グループのライブでかく汗の量より多くて、稽古後はTシャツが絞れるぐらい。男性陣も汗だくになってみんなで一緒に作って行く感じは、今までやって来たこととまた違って、すごく楽しいなと。ほんと、部活ですね(笑)。

Q:体育会系の部活の経験は?

剣道部でした。でも、剣道のクセが抜けなくて、それが逆に殺陣の時に足を引っ張ってしまうこともあるので、すごく難しい。立ち姿は褒めてもらえることが多いので、それは良かったなと思ってますけど。

Q:気は強い方ですか?

負けず嫌いではあります(笑)。男性陣のなかで、女の子だから体力がもたないとかはイヤなので、できるだけ同じレベルでできるように頑張ろうという気持ちで稽古に参加しています。稽古前のトレーニングでは、私が筋トレが好きなので追加要求して、みんなにイヤがられて(笑)。石田さんは、筋トレを避けて生きてきたって言ってます(笑)。

Q:ハードですね。やせませんか?

体重が落ちたというより、筋肉が増えました。筋肉量を増やしたい、たくましくなりたいと思って、毎日、稽古前にプロテインを飲んでます(笑)。

Q:石田さんとのコンビはいかが?

前半の出会いのシーンとかは掛け合いがおもしろいんですけど、後半になればなるほど、石田さんがどんどん二枚目になっていくんです。すごくストレートに総司のことを思って気持ちをセリフに乗せて伝えてきてくださるのが、稽古を重ねるにつれて心に響いてくるので、ほんとにすごいなと思っています。今までの龍馬にない龍馬像を持っていらっしゃいますね。

Q:この作品を通して伝えたいことは?

この作品が持つものは、何よりも熱量だなと思っていて。その熱量の中から発せられるセリフだからこそ、説得力があって、心に響いてくるんだなと。なので、ひとつのことに対してまっすぐに向き合うことの素敵さみたいなことを、何よりも観ている人に感じ取ってもらえれば、一番うれしいですね。

とても切ないお話で、後半はずっと胸が苦しいままやるんです。これを何公演もやっていく時、自分たちの精神状況はどうなっていくのかなって思うぐらい。だから全身全霊、体当たりでやって、2016年の「新・幕末純情伝」として一番いいものができたらいいなと思っています。

Q:ご自身の「ここを見て」というところは? 

アクションシーン、立ち廻りを観ていただけたらうれしいです。ひとつひとつの殺陣のシーンで斬る理由や思っていることが違うので、それぞれの太刀筋にもちゃんと感情を乗せて、どう思って斬っているのかが、伝わるようにやっていきたいと思っているので。早乙女友貴さんの立ち廻りは、美しくてすごいですね。横でずうっと見ていたいぐらい。

Q:この作品に出会って感じたことは?

ひとつのことに対して真面目に向かって行く男性の背中っていうのは、とっても素敵なものなんだなって。だから自分自身も、もし男性に付いていくのであれば、ただ楽しいだけじゃなくて、頼りがいのある、ちゃんとした志を持っている人に付いていきたいなと、この作品に触れてみて強く思いました。

Q:今回、一番楽しみにしていることは?

公演自体が一番楽しみです(笑)。今までグループでやった2本のお芝居は東京だけで、大阪でお芝居やったことがないので。今回の梅田芸術劇場も初めてですし、大阪に舞台を観に行ったこともなくて。大阪のお客さんたちがどういう雰囲気でお芝居を観るのかっていうのも、今回が初めての体験です。舞台はお客さんと一緒に作るものだと思っていて、その日の空気感、お客さんの受け取り方でまったく変わってしまうものだと思っているので、それが大阪でどんな雰囲気になるのか、すごく楽しみですね。

Q:大阪デビューなんですか?! 行きたいところは?

大阪にライブやイベントで来ても、基本的に、ホテル、駅、会場しか行ったことがなくて、大阪を味わったことがまったくないんです。大阪で行きたいところは、通天閣です(笑)。

Q:なぜ通天閣に?

ビリケンさんの足を触りに行きたい(笑)。なんかご利益ありそうだなって思って(笑)。あの辺りは大阪の下町感があるエリアなイメージがあって、そういうところで、なんかちょっと飲み歩いたりしてみたいなっていう気持ちはあります(笑)。あとは…公演が始まる前に行けるのが一番いいんですけど、新撰組のゆかりのある場所、京都になると思いますけど行ってみたいなと。東京には総司のお墓があるので、絶対お参りに行こうと思っています。

取材・文=高橋晴代、撮影=福羅広幸

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