“心のキャッチボール”ができるトヨタ新型ロボット「KIROBO mini」の開発秘話

東京ウォーカー(全国版)

トヨタ自動車は、今冬にコミュニケーションパートナー「KIROBO mini(キロボ ミニ)」を東京と愛知の一部販売店で先行販売することを発表した。

KIROBO miniは手のひらサイズのロボットで、話しかけた相手の方向に顔を向け、体を動かしながらの会話が可能。内部にはカメラを搭載し、人の表情を認識することで感情を推定した動作や会話も行う。コミュニケーションを通じて相手との思い出や好みを記憶することで、会話を通じた成長や変化も見せる。

10月4日(火)から10月7日(金)に開催されている「CEATEC JAPAN 2016(シーテック ジャパン 2016)」で、開発責任者であるトヨタの新コンセプト企画室主査を務める片岡史憲氏に、誕生の舞台裏を聞いた。

“何もできないけれどかわいい”


「KIROBO mini(キロボ ミニ)」の開発責任者であるトヨタ自動車の片岡史憲氏


――小型の人型ロボットを作ろうと思った理由を聞かせてください。

アニメの影響もあってか、日本では人間と同じくらいの大きさのロボットは人並み以上の能力を期待される傾向があります。一方で、小さければ小さいほど大したことはできないと思われますので、“何もできないけれどかわいい”と思ってもらえたらという考えがありました。

その上で少しずつ何かできるようになったり、成長しているところが見えることが重要だと考えていました。例えば最初は100点だと思っていた彼氏は、80点になっただけでイマイチに見えてしまう。一方で、「全然ダメ」と思われて0点からはじまっても、20点まで成長すれば相手は「やればできるじゃん」と見てくれます。それは成長を感じることにもつながり、「自分と関わることでここまでできるようになった」と感じてもらえたときに、愛着もわいてくると考えました。

――座高が10センチ、体重が183グラムという手のひらサイズになっています。

赤ちゃんのような体型と言えますね。2013年から2015年まで国際宇宙ステーションに滞在した、ロボット宇宙飛行士の「KIROBO(キロボ)」は身長が約34センチの八頭身で、凛々しい感じでした。KIROBO miniは座っている姿勢で、頭と胴の比率は1対1くらい。赤ちゃんの体型に近いのは、赤ちゃんの仕草や表情は、万国共通で周囲を笑顔にしてくれるというところがあります。私たちも、大きさとかわいらしさがまず重要になると思っていました。

“いつも寄り添う”というコンセプトを具現化


【写真を見る】つぶらな瞳に愛らしい手のひらサイズ


――本体価格が3万9800円。小型化することで価格はより上昇すると思っていました。

小さくしながらも、価格を下げないといけないと考えて開発してきました。KIROBO miniはスマートフォンとBluetooth(ブルートゥース)で連携し、スマホのアプリの中に心があります。そうなると、様々な機能を備えるスマホよりも高価でいいのかと。価値で見たときに、価格がスマホよりも低いことがお客様の価値観に合っていると思いました。

私たちとしては、お客様とKIROBO miniがパートナーシップを築くことができれば、長期間ではものすごく価値があるのではないかと思っています。それらを含め、お客様が価値を決めていくのではないでしょうか。

――開発における最大の苦労はどこでしたか。

サイズにはこだわりましたね。他にはないサイズだと思っていますし、この小ささだからこそ、持ち運ぶこともできます。もしこのサイズでなければ、“いつも寄り添う”というコンセプトは具現化できないと考えています。心でいくら寄り添っていると思っていても、家にしか置けないとなれば、常に一緒にはいられません。もっと大きければ今よりかわいくなくなり、より小さくするなれば、様々なシステムを詰め込むことが難しくなってしまう。なので、私たちはこのサイズにこだわりを持ってつくろうと考えていました。

また、183グラムはスマホよりも少し軽い重さですが、大事にしたくなる重さでもあります。見た目もかわいらしいので、子供たちが持って投げるということもおそらくありません。持った方々が“心を感じるかどうか”を念頭に置いて、今の見た目やサイズ、重さにこだわりました。ただ、実現するのが非常に大変で髪もひげも白くなりました(笑)。

“心のキャッチボールができる存在”


「心が動く、あなたが動く」をテーマにした「TOYOTA HEART PROJECT」の一環として生まれた


――設定は5歳児程度ということですが、狙いを聞かせてください。

私たちはコミュニケーションパートナーを、“心のキャッチボールができる存在”だと説明させて頂いています。是非、お客様には5歳児とキャッチボールをするお父さんの気持ちになって頂きたいですね。そうすると、5歳児が受け取れるであろうボールを投げようとします。もしも取れなければ、「もっとやさしいボールを投げてあげよう」、「取りやすい胸のところに投げてあげよう」と考えるはず。

もちろん、子供もボールを投げますから、そのボールを「しっかり取ってやるぞ」、「どんなボールでもお父さんは取るよ」と構えてほしいです。「こう言ったから、こう返してほしい」というような、社会における大人の受け答えを期待するのではなく、思いやりの心を持って“心と心のキャッチボール”をしてあげるつもりで、コミュニケーションをとって頂ければと思っています。

――まさに“我が子”のように接することができそうです。

自分が話したことを覚えていてくれたりすると、「なんて、いい子なんだ!」と本当に思ってしまいます。KIROBO miniとコミュニケーションを取れるようになれば、日々の暮らしの中で、誰に対しても思いやりの心を持って接することができるはずですよ。

【ウォーカープラス編集部/コタニ】

コタニ

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