世界は日本をどんな風に見ている?Booking.comの中の人に聞いてみた

東京ウォーカー(全国版)

“なかの人”が語る、旅行と日本、そして2020年について


世界227カ国・100万軒以上の登録数を誇る、大手宿泊予約サイト・Booking.com。1996年の設立以来、“片手で足りるほどだった従業員を10年余りで1万3000人にまで増やした”というこの会社が、なぜこれほどまでに成長できたのかを、ギリアン・タンズCEOをはじめとするBooking.comの“なかの人”に伺ってみるとともに、「世界からみた日本の魅力」についても語ってもらった。

「最高の宿泊体験を」がモットー


【写真を見る】Booking.comの最高経営責任者(CEO)であるギリアン・タンズさん


—まずは、Booking.comの紹介をお願いします。

◎最高経営責任者(CEO):ギリアン・タンズさん

オランダに本社があるということで、驚かれる方も大勢いらっしゃいます。ですが、実はオランダ人は旅行好きばかり。そして国土面積がおよそ41000平方キロメートル(日本の九州とほぼ同じ)しかないオランダは、旅行と言えばもっぱら国外。日常的に国外旅行を楽しむ私たちのカルチャーから誕生したものが、Booking.comだったというわけなのです。

1996年の誕生以来、おかげさまで順調に歩みを続け、現在は100万軒以上の施設が登録されており、グローバルリーダーと言われるまでに成長できました。

それを支えたのは、優れた仲間たちや洗練されたサービスに他なりません。例えば、Booking.comではコンテンツを常にアップデートすることで、いつでもリアルタイムな情報を届けられるシステムを構築しています。簡単なことではありませんが、これからも「最高の宿泊体験を」をモットーに真摯にサービスと向き合っていきたいと考えています。

ユーザー全員が直感的にサイトを利用できるように


—ブッキングドットコムの強みとは?

まずは、限りなく簡単に予約ができるという点が一番の強みではないでしょうか。Booking.comをデザインするにあたって、私たちは“無駄をそぎ落とす”ことを大切にしました。こうすることで、知識や経験を問わず、訪問して下さる方々全員が直感的にサイトを利用できるようにしたのです。

また、私たちは最高のサービスを提供するためには、何よりもタレントマネジメント(人材確保)が重要だと考えています。そのため、起業家精神を社内全体で養い、さらなる優れたサービスが生まれる土壌を育んでいます。こうした企業努力を続け、世界中の意欲ある若者たちから「働きたい!」と選ばれる組織へと成長していきたいと考えています。

“所有よりも経験”という価値観の変化


—これからの旅行のニーズは、どう変化していくと思いますか?

宿泊施設のオンライン予約における世界的なリーダー、Booking.comの“中の人”に話を聞いた


◎マーケティング統括責任者(CMO):パパイン・ライヴァースさん

私は、Booking.comでグローバルのマーケティングを統括しています。仕事を通じて世界的な旅行者のニーズを日々目にする中で感じるのは、これまでにないほど大きな変化が、近年の旅行業界に訪れているということだね。

例えば、過去には“大きな車を持っていること”がステータスになるような時代もあった。でも、モノがあふれ、モノによる価値に限界が見られる昨今、より旅行を通じた“経験”からアイデンティティを作り上げるという傾向が顕著になってきたように感じる。この傾向は、しばらく続くと思っているよ。

近年は日本の“ローカルな雰囲気”を楽しむ外国人が多い


—日本旅行の魅力を教えて下さい

シニア ビジネス・アナリストカスタマーサービス・アナリティクス・マネジャー、ウラジミール・ステンゴールドさん


◎シニア ビジネス・アナリストカスタマーサービス・アナリティクス・マネジャー:ウラジミール・ステンゴールドさん

日本は、東京や大阪と言った都市部以外に、飛騨高山や日光といった“文化に触れられる場所”が多い点が魅力だね。僕自身、伝統的な木造建築やその土地の食材を生かしたディナーに触れて、素晴らしい体験ができたよ。たくさんのものに触れ、さまざまなものを食したけれど、中でも最高だったのは飛騨牛。神戸牛は世界的に有名だけど、飛騨牛は想像を遙かに超えて素晴らしかったよ。

◎マーケティング統括責任者(CMO) パパイン・ライヴァースさん

実は、僕はまだ日本には仕事でしか行ったことがないんだ。けれど、その少ない経験の中で出会った“おもてなしの文化”には、忘れがたい印象があるよ。細かいところまで目が届く、日本独特のあのサービス精神には、思わず心を奪われてしまった。次は、日本の“旅館”と“パウダースノーの雪山”を体験したいと思ってるんだ。その際は、ぜひ子どもたちにも体験させたいね。

逆に日本人にお勧めの旅行先はあるかって?そうだな…日本人は美味しいものが好きだから、例えばイタリアはどうだろう。ピザやパスタだけではなく、街角のバルでも驚くほどおいしい食事が楽しめるから、きっと喜んでもらえるはずだよ。あとは、韓国もお勧めだね。ソウルで食べる韓国料理には、どれも夢中になれると思うよ。

最高製品責任者(CPO)、デイビッド・ビスマンズさん


◎最高製品責任者(CPO):デイビッド・ビスマンズさん

私のお気に入りは、やはり東京だね。リスペクトやインテグレティ(=誠実さ)の精神が、西洋とはまったく異なっている。本当に驚いたよ。それから、繊細に味付けがされた食事も最高。アムステルダムにもたくさんの日本料理店があるので、今でも週末には食べに行くほどなんだよ。

最高情報責任者(CIO)、ブレンダン・バンクさん。奥さんにプロポーズしたのは日本でだったとか


◎最高情報責任者(CIO) ブレンダン・バンクさん

私も東京。特に渋谷だね。実は、宿泊した渋谷にあるとても眺めの良いホテルの部屋で、妻にプロポーズをしたんだよ。素晴らしい眺望と共にいまでも記憶に残っている、大切な場所だね。

現地で働く日本人スタッフの林田さやかさん


◎現地で働く日本人スタッフ/コピーライター:林田さやかさん

東京や京都、大阪は、やはり外国人にも人気のある都市です。ですが、日本人にも都市部が苦手な方がいらっしゃるように、外国人にも「ガヤガヤした場所は嫌」という方も大勢います。そういった層が、近年は飛騨や広島、瀬戸内といった場所で、ローカルな雰囲気を楽しんでいらっしゃるようですね。ちなみに、私の地元である長崎も人気のエリアなんですよ。

2020年は「宿泊施設の確保」「宿泊料金のコントロール」が大きなテーマのひとつに


—最後に、2020年に向けた戦略について教えて下さい

◎最高経営責任者(CEO)ギリアン・タンズさん

重要なイベントに向けては多くの会社がそうであるように、私たちも「2020」というプロジェクト名のもと、着々と準備を進めています。まずは、宿泊施設をいかに確保できるか、そして宿泊料金をきちんと調整できるかがテーマです。世界中のすべての人々が心から楽しめるよう、私たちも全力でサービスを提供していきたいと思っています。

観光庁は「2020年、訪日外国人旅行者を4000万人に」という目標を掲げている。こうした動きを受け、官庁・民間問わず国内では現在さままな取り組みが絶賛進行中だ。その一端を担うであろう彼らBooking.comの動きは今後も目が離せない。【ウォーカープラス/稲木圭祐】

稲木圭祐

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