東京の秋の風物詩「べったら市」が開催
10月19日、20日に東京・日本橋で、「べったら市」が開催され、多くの人でにぎわいを見せた。同祭りは、毎年同両日に開催される日本橋の伝統的な催しで、JR新日本橋駅と地下鉄小伝馬町駅の間にある宝田恵比寿神社とその周辺通り沿いに、500あまりの露店が軒を連ねる。JR新日本橋駅を降りて、首都高速1号線の高架下を抜けると次第に聞こえてくる威勢のいい声。
「べったら~、べったら~!お姉さん、お一ついかが!」
ビルの隙間で飲むのも悪くない!
日本橋と聞いてイメージするのは、大小のオフィスビル群。そんな場所で祭りなんてできるのかと思うだろうが、その通りに不思議な光景が広がっている。
決して広くはないビルとビルの間の道に、たこ焼きや焼きそばといったザ・屋台系をはじめ、イタリアン、小籠包、ケバブなどの海外系、、七味唐辛子や飴細工などの伝統系、さらには近隣専門店のウナギの串焼き、地ビールを出すビアバー、地方のアンテナショップ、VR(ヴァーチャルリアリティ)体験ブースまでが出店。ジャンル問わず、屋台の種類の豊富さは全国屈指と言えるだろう。
さらに、祭りと聞けばファミリーや若者でにぎわうことを想起するが、ここでの主役は働く大人たち。オフィス街だけに、背景とは正直あまりマッチしていないスーツ姿の男女が、メイン通りや路地裏でつまみ片手に酒を酌み交わし、ちょっと早い忘年会かのごとく、日ごろのうっぷんを笑い飛ばしている光景を目にすることができる。見上げれば普通のオフィスビル。周囲には仕事帰りを思わせる人々。にもかかわらず、目の前に広がるのは色とりどりの屋台とおいしそうな匂い。大人たちが浮き足立つのも不思議ではない。
そもそもべったら漬けって何?
「べったら市」は江戸時代中期ごろから始まったとされ、歴史は深い。10月20日に宝田恵比寿神社の門前で商売繁盛を祈願する祝事が行われており、その前日19日に立っていた市が起源という。戦時中に一時中断したものの戦後再興され、それが今に続いている。
市の名称にも冠される「べったら漬け」とは、麹と砂糖などの甘味料で漬け込んだ大根の漬物のこと。口に入れると甘味が広がり、鼻から麹の香りが抜ける。ぽりぽりとした食感が、酒のおつまみに最適だ。市と同じく江戸時代中期ごろに誕生したとされ、その呼び名は衣服に触れればべったりとくっ付いてしまうことに由来しているそう。
試食でも食べておきたい逸品!
現在は、べったら漬けを販売する屋台は市に33出ている。とりわけ人気が高いのが、宮内庁御用達にもなっている東京にいたか屋(日本橋浜町)の「東京べったら漬」だ。この町で生まれた味と伝統を脈々と受け継ぎ、食通の文化人からも評価を得ている逸品という。同店だけではなく、各屋台の軒先では、とにかくたくさんのべったら漬けを試食できる。お店の人に声をかければ「いくらでも食べてって!」と笑顔で応えてくれるので、まずはいろいろと食べ比べるのもいいだろう。
東京の真ん中、ビルの隙間で毎年開催されている日本橋の秋の風物詩「べったら市」。今年行けなかった人は、来年は仕事終わりに足を運んでみては。【東京ウォーカー】
編集部