「拝啓、民泊様。」に登場する“蒲田・雑色”に注目

東京ウォーカー

【連載】聖地巡礼さんぽ~あの作品の街を歩く~Vol.23


漫画や映画、ドラマなど、人気作品の舞台となった街を散策し、“住みたい街”としての魅力を深堀していく本連載。ここからみんなの“住みたい街”が見つかるかも?

第23回で取り上げるのは、10月からMBS・TBSで放送中の、黒木メイサ&新井浩文主演によるドラマ「拝啓、民泊様。」。テーマは、2020年の東京オリンピックに向けてますます注目が高まる「民泊」。突然、民泊ビジネスを始めることになった夫婦が、舞い込むトラブルに悪戦苦闘しながら、おもてなしの大切さに気づいていくハートフルストーリーだ。

右も左もわからぬまま始めた民泊は、早速トラブルが続出!(C)2016 拝啓、民泊様。


「『特区民泊』の制度を知っていただくよい機会であり、また都内屈指の数を誇る銭湯や、商店街も作品中に紹介いただけるということだったので、区として全面協力させていただくことにしました。ドラマで紹介される『特区民泊』制度の監修、撮影の協力等、庁内の様々な部署が協力させていただいています」と言うのは、大田区観光課の新山公美子さん。

本作は、民泊が全国で初めて認可された国家戦略特区域である大田区の全面協力のもと、大田区各所が物語の舞台になっている。

【写真を見る】黒木メイサ演じる沙織が働く労働基準監督署の相談室のシーンは、大田区役所内で撮影(C)2016 拝啓、民泊様。


そんな大田区に「2年くらい住んでいたことがあるので、地理勘がありました」というのが、本作のメガホンをとった谷内田彰久監督。

「京急蒲田駅」でのシーンのオフショット。中央が谷内田彰久監督(C)2016 拝啓、民泊様。


劇中に登場する蒲田、雑色周辺のスポットや街の魅力を、2人のコメントを織り交ぜながら紹介していく。

「京急蒲田駅」


「空港からのアクセスを考えると、やっぱりこの街の玄関口だと思った」(谷内田彰久監督)というのが、羽田空港とを結ぶ空港線が走る京急蒲田駅。劇中では、民泊のゲストを迎えに行くシーンで何度も登場する。

「WELCOME TO JAPAN」のボードを持つのは、寛太(新井)の父・寛十郎(鈴木正幸)(C)2016 拝啓、民泊様。


駅付近28か所の踏切をなくし、「京急蒲田駅」は2012年10/21に上下線高架化が完成。今年度末に平和島駅から六郷土手駅の「京急蒲田駅付近連続立体交差事業」が竣工するといい、アクセスの快適さ、駅の使いやすさが着々と進化している。また、通訳サービスも完備しているそうで、今後増加が予想される外国人客への対応も準備万端。

駅は3階建て。「京急蒲田駅」から本線と空港線が分岐し、写真右側を走るのが羽田空港につながる空港線


入社以来1年半、京急蒲田駅で勤務する営業係の宮崎和幸さんは、蒲田周辺について「品川、羽田、横浜に、それぞれ10分ほどで行けて、通勤にも遊びにも使いやすいと思います。また、JR蒲田駅との間に商店街が発展していて活気がありますね」と話してくれた。

赤いボディがトレードマークの京急線と、営業係・宮崎和幸さん


「太平湯」


ゲーム開発会社からリストラを告知された寛太(新井)が、ネットで見つけた「民泊セミナー」に参加した帰り、後輩であり妻・沙織(黒木メイサ)の兄でもある昌平(中野裕太)に相談で訪れたのが「太平湯」。第一話から毎回登場する重要なスポットだ。

「太平湯」の店主・昌平(中野)。外国語が堪能で、海外で民泊を利用したこともある昌平に、「民泊を手伝ってくれない?」と頼む寛太(C)2016 拝啓、民泊様。


脱衣所で話し込む2人の前に、さりげなく置かれた「黒湯サイダー」。しかし「太平湯」では販売していない(C)2016 拝啓、民泊様。


蒲田・雑色含む大田区といえば、「地下から汲み上げた源泉に、海藻などを含む大昔の海水に由来する」(大田区観光課の新山公美子さん)という温泉“黒湯”が有名。ドラマの中で「黒湯」として紹介されている「太平湯」だが、実は……「太平湯って黒湯じゃないんです。撮影で特別に黒湯にさせてもらいました」(谷内田彰久監督)という。

劇中は黒湯だが、本物の「太平湯」は黒湯ではないので要注意!(C)2016 拝啓、民泊様。


民泊のゲストに銭湯のマナーを説明する昌平(中野)(「太平湯」)(C)2016 拝啓、民泊様。


「黒湯」ではないが、体を芯から温め、入浴後の肌をしっとりツヤツヤにしてくれる「岩盤泉」や、ストレス解消・疲労回復に効果的な「森林浴」が発生するスチームサウナなどを楽しむことができる。

この地で60年近く営業を続ける「太平湯」は、現在二代目となるご夫婦が切り盛り。ご主人の渡辺和雄さんに地元の魅力を聞くと、「日の出通り、糀谷、七辻など、商店街が多く、どこも元気。必要な物は何でもそろうので、買い物には便利。また、親しみやすく、人情のある人が多いですね」と語ってくれた。

朗らかなご夫婦の人柄にふれ、取材スタッフの気持ちもポカポカに。

「T.T.M URUSHI DOJO」


寛太の妻・沙織(黒木)が、リストラのことを沙織に打ち明けられずにいる寛太の様子を不審に思い、呼びつけたのがこの格闘技ジム。

兄・昌平(中野)もビビるほど、怒ると怖い沙織(黒木)。趣味はボクシング(「T.T.M URUSHI DOJO」)(C)2016 拝啓、民泊様。


急きょロケ地に決まったという「T.T.M URUSHI DOJO」。「なんと新井さんの知り合いだったというオチがありました」(谷内田彰久監督)という偶然(C)2016 拝啓、民泊様。


扱うジャンルは、キックボクシングから柔術、レスリング、総合格闘技、フィットネスまでさまざま。プロ格闘家としても活躍する代表・漆谷康宏さんが、「格闘技は怖いというイメージを持たれがちですが、楽しさを知ってもらい、楽しみながら続けてもらいたい」というように、初めて格闘技に触れる人でも体を動かすのが楽しくなるメニューを用意。

「T.T.M URUSHI DOJO」の代表・漆谷康宏さん。本記事アップ日の11/12(土)、「修斗」の試合に出場


取材に伺った日は、漆谷さんが自らインストラクターを務めるキッズキッククラス。「格闘技をやることで、強くなったり、新しいことができるようになり、自分に自信が持てて明るくなる」(漆谷さん)という利点から、キッズ会員も多い。

元気にあいさつからスタート(「T.T.M URUSHI DOJO」)


さらに「一人で黙々とトレーニングするジムとは違い、来たら挨拶をしたり、対人練習やクラスで人とコミュニケーションを取ることができるので、友達もできます」と漆谷さん。言葉通り、練習するキッズたちの仲良く楽しそうな様子にほっこり。

遊んでいるような感覚でできる体幹トレーニング(「T.T.M URUSHI DOJO」)


ちなみに漆谷さんが思う蒲田のいいところは、「おいしいごはん屋さんや飲み屋さんがいっぱいあるところ」だそう。

「雑色商店街」「肉のいのせ」


活気ある商店街が多い大田区の中でも、最大の店舗数を誇る「雑色商店街」。劇中では、登場人物たちが何気なく通行する、大田区の“日常の景色”として登場する。

世界中の民泊を紹介する動画ブロガーとして知られる韓国人ゲスト・キムウンジョン(韓英恵)を、寛太の民泊へ案内する昌平(中野)(「雑色商店街」)(C)2016 拝啓、民泊様。


雑色駅の駅前アーケードを中心に200店舗以上が軒を連ねる「雑色商店街」


「商店街の風情を撮影したかったので、いくつか候補のあった中から選びました。商店街の奥を電車が走り抜けるのはとてもいい景色だなと」と谷内田彰久監督が評するように、雑色駅から商店街を西へ進むとJRの線路に行き着き、電車が通過する景色は風情がある。

通過しているのはJR京浜東北線(「雑色商店街」)


ドラマには出てこないが、「雑色商店街」で有名なのが、創業54年を数える「肉のいのせ」の「シューマイ」。岩手県の豚肉「岩中」を使った逸品で、水曜限定販売にも関わらず、多い日には約1万個を売り上げるという。そのため、仕込みは月火の2日がかり。

黄色い店構えが目印の「肉のいのせ」。水曜日には「自家製シューマイ」を求める客で行列ができる


「(雑色は)かっこつけなくていい街。何着て歩いても大丈夫(笑)。自然な姿でいられるってことだよね。(商売については)お客さんとのつながりをいかに強くするか。お客さんに喜んでもらえるものを作っていきたい」と素敵な笑顔で語ってくれたのは、創業者・猪瀬三郎さん。

創業者の猪瀬三郎さん(左)と、現店主の中道利夫さん(右)


仕込みの忙しい日に突然お邪魔したにも関わらず、取材に対応してくれて、コロッケまで食べさせてくれたお店の方々。コロッケも人もあったかい!

「大田区観光情報センター」


大田区観光課の新山さんが「大田区にいらしたらぜひお立ち寄りください」というスポットがコチラ。

京急蒲田駅の改札を出てすぐのところにある「大田区観光情報センター」(C)2016 拝啓、民泊様。


「来訪者と『まち・ひと』をつなぐ観光拠点」を目指して、15年12月にオープンしました。大田区には、国際線の増便が進む羽田空港があります。2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会を控え増加していくことが見込まれる大田区への来訪者に楽しんでいただくために、観光案内、大田区の個性豊かなお土産の販売はもちろん、茶道、華道、折り紙、ものづくりワークショップなど、ユニークな体験が楽しめます。地元の人しか知らないおいしいお店やおすすめの銭湯等をご案内します」(大田区観光課の新山公美子さん)。

「多くの外国人キャストでにぎわっている様子が撮影され、こんな風景が日常になる日も近いと感じました」(大田区観光課の新山公美子さん)(「大田区観光情報センター」)(C)2016 拝啓、民泊様。


存在を知らなかったという谷内田彰久監督は、「いろいろな活用ができる場所だな」と、撮影をしてみて感じたそう。

劇中では、民泊のゲストが着物を着てもてなされるシーンとして登場予定なので、今後の放送をチェックしよう。

ではそれぞれが思う、蒲田・雑色の魅力とは。

「下町の景色が残る街並みで、どことなく商店街があるのが住むのに適しているという感じでしょうか。街に人が根付いているという感じとも言えます。また、僕の実家も銭湯で、銭湯だらけのこの街にとても親近感というか郷愁を感じます」(谷内田彰久監督)。

「庶民的な商店街や銭湯が多く、どこか懐かしい雰囲気が残っています。蒲田名物の羽根つき餃子をはじめ、とんかつ、ラーメン、焼き鳥などリーズナブルな人気店が多いことでも知られています。住んでみると、買い物にも便利で、人と人とのつながりが感じられる人情味あふれる街です」(大田区観光課の新山公美子さん)。

「人通りが多く撮影が中断していました」(谷内田彰久監督)というように、人が多く往来する「雑色商店街」(C)2016 拝啓、民泊様。


取材先でも、出てくるキーワードは「商店街が元気」「人情」。そんな昔ながらの魅力にあふれる街が、「民泊」や外国からの観光客によって盛り上がりを見せていくのが何だかおもしろくも誇らしい。人も街も活気に満ちあふれる蒲田・雑色周辺、ますますパワーアップしていきそうな予感!【東京ウォーカー/小林未亜】

第24弾は11月下旬配信予定

小林未亜

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