9月中旬より発売が開始された、P&Gの衣料用洗剤「さらさ」。“無添加”をキーワードに、同社がシェア・ナンバーワンを誇る「液体洗剤」市場に投入した新ブランドだ。
この「さらさ」という商品名を見て“ちょっと珍しいな”と思った方は、観察眼が鋭い方だろう。P&Gの衣料用洗剤といえば「アリエール」「ボールド」、共に商品名はカタカナだ。大手他社の主要製品を見ても、おおよそはカタカナの名前。そう、衣料用洗剤の商品名に“ひらがな”が使われるのは少々珍しいことなのだ。
なぜ、今回P&Gは「さらさ」というひらがなの名を採用したのだろうか。そこには、彼らが同商品に賭ける強い思いがあった。
「さらさ」は、P&Gが初めて“日本発”として投入した商品だ。米国に本拠を置く同社では、これまで海外市場での展開後に日本に持ち込むパターンが常だった。液体洗剤の2大ブランド「アリエール」「ボールド」もこの形だ。
だが、今回は違う。日本国内で消費者調査を繰り返し、2000人以上・600時間以上という膨大なリサーチとテストを重ね、3年の歳月をかけて開発を進めてきた。現在国内に流通する衣料用洗剤に対する消費者のニーズを徹底的に調べた。
結果、約30%の消費者が現在市場に出ている洗剤に満足していないという調査結果を得ることとなる。P&Gがターゲットに捉えたのは、まさにこの約30%の層だった。「より真っ白に」ではなく「本来の色でキレイに」という意見が多く挙がった。「今ある洗剤では自分にとって不要な成分まで入っている気がする」という声もあった。意外にも消費者が求めているのは「洗浄力」以外の要素だったのだ。
そして「引き算」の発想が生まれる。「これまでの洗剤開発は“白くするための成分を加える”“香りを持続させるための成分を加える”という“足し算”の開発でしたが、今回我々は、お客様が不必要であると思っている成分をどれだけ排除できるかという“引き算”の発想で開発を進めました」と同社は語る。
そこから今回のキーワード“無添加”にたどり着く。蛍光剤や漂白剤、着色料などを排除し、それらの効果を取り除きながらも、phの調整や水中の金属成分の分析など、同社が誇る技術を駆使することで、洗浄力と無添加の両立を実現したのだ。
日本人の声で日本人のために生まれた洗剤――P&Gはこの新商品を「さらさ」と名付けた。無添加である今商品のテーマ“やさしさ”を表現できる日本語(ひらがな)を使い、レイアウトも縦書きにした。
米国メーカーのP&Gが初めて投入する“日本発”の商品「さらさ」。ひらがな3文字の商品名は、彼らが日本の消費者の声に向き合った証だった。【東京ウォーカー】