【連載/ウワサの映画 Vol.7】”呪い”から解放されたい!”アンラッキー”一家の強盗計画

東海ウォーカー

みなさん、ソダーバーグが帰ってきましたよ!映画監督引退宣言から4年、”期が熟した”らしく、新作「ローガン・ラッキー」を引っ提げての映画界復帰でございます。めでたいです。「デジタル環境も整い、小さな会社で映画を作り大規模公開できるようになってきた」と語る彼は、米国内の配給を行う新会社を設立し、本作の企画から公開までのクリエイティブ面を自ら仕切ったとのこと。チャニング・テイタムら人気スター陣を起用し広く公開するという偉業を、メジャースタジオの支配抜きで成し遂げました。歴史的事件と言える、独立系映画会社の新モデルの旗揚げです!

チャニング(左)と親しい脚本家がデビューを飾った本作。「チャニングがストリッパーにならずに帰郷していたら」という想定の物語らしいです。仲間が犯罪者になりそうって…、ひどい©2017 INCARCERATED INDUSTRIES INC. ALL RIGHTS RESERVED.


ソダ―バーグ×チャニング・テイタム、といえば、チャニングのストリッパー時代を題材にした「マジック・マイク」ですよねぇ。世界中の女性にとっては狂喜乱舞の傑作でしたが、監督チェンジの続編に勢いがなく…。「辞める前に、この続編だけでも撮ってほしかった…」と恨み節と共に俊才の偉大さを痛感したものですが、今回、そのコンビの復活が実現。チャニング自慢のシックス・パックがぽっこりお腹に変貌した(役作りです)のは痛恨の極みとはいえ、冴えないおデブ体型が引き立てる”あふれる優しさ”に再度ホレてしまいます。

【写真を見る】チャニング&アダムの兄弟なんて、贅沢ですねぇ。兄貴と組んだ犯罪で投獄された過去を持つ弟は、当然今回の犯行計画を怪しみます。アダムの目つきがたまりません©2017 INCARCERATED INDUSTRIES INC. ALL RIGHTS RESERVED.


人気監督ならではの”スター吸引力”も健在です。ツキに見放されたローガン兄弟の兄役にチャニング、弟役に「スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ」(12月15日公開)のカイロ・レン役といい鬱屈ぶりが悩ましいアダム・ドライヴァー、彼らの妹役にエルヴィス・プレスリーの孫娘ライリー・キーオ。さらに、伝説の爆破師役でコミカル&キュートな一面をアピールするダニエル・クレイグ、FBI捜査官役で終盤を盛り上げるヒラリー・スワンクと、まぁ、豪華な顔ぶれ!

囚人を犯罪に勧誘するために、堂々と刑務所に赴くローガン兄弟。映画とはいえ、大胆すぎて笑えます©2017 INCARCERATED INDUSTRIES INC. ALL RIGHTS RESERVED.


主人公は、アメフト選手として有望視されながらも、膝の故障でプロへの道を断念したジミー・ローガン(チャニング・テイタム)。妻に捨てられ、足を引きずっているせいで仕事もクビになり、たまに会える娘だけが心の支えです。そんな彼が、どん底人生からの一発逆転をかけた現金強奪計画を立てます。ターゲットは、元の職場であり、何百万ドルもの売上金を運ぶ気送管設備があるサーキットの地下金庫。米最大級のストックカーレース〈コカ・コーラ600〉のレース中に犯行に及ぶことに。イラク戦争で左腕を失い義手生活を送るバーテンダーの弟・クライド(アダム・ドライヴァー)と、スピード狂で美容師の妹・メリー(ライリー・キーオ)に加え、服役中の爆破師・ジョー(ダニエル・クレイグ)を金庫の爆破担当として勧誘。犯行当日にジョーを脱獄させ、事が済んだら速やかに刑務所に帰還させるというトンデモな作戦を立てますが…。

クレジットカード決済機能を停止させ、輸送管を通じキャッシュが集まった金庫を爆破、そして輸送管につなげたホースから大金を吸い上げるという作戦。が、ジョーが単純ミスを犯し…©2017 INCARCERATED INDUSTRIES INC. ALL RIGHTS RESERVED.


ソダ―バーグ×犯罪もの、ということで、「オーシャンズ11」と比較される運命の本作ですが、華麗な犯罪スペシャリスト集団とは天と地…。ローテクな”ローガンズ6”があまりに地味で、逆に魅力的です。爆弾の材料から気送管輸送システムへの仕掛けまで、シロウト丸出しの素朴&奇抜な作戦のオンパレード。地道ながら計算され尽くした計画の一部始終に釘付けです。「無職になったんで強盗でもします」っていう流れに道義的疑問を抱くのも束の間、両親の代から続く”不幸は連鎖する”という一家のジンクスを、もはや”呪い”級にビビっているジミーたちにほだされちゃうんだよなぁ。「まだ不幸が起きていない妹や娘を守りたいんだよぅ!」という叫びすら聞こえる始末…。キャラが強力な証ですね。軽快なテンポやスタイリッシュな映像も、”間違いなし”のソダ―バーグ印です。

ダニエル・クレイグは自分で髪をブリーチして金髪にする気合の入れよう。いつもの”圧”は随分抑えています。彼、意外にも愛嬌があるんですね!©2017 INCARCERATED INDUSTRIES INC. ALL RIGHTS RESERVED.


メジャーと独立系を行き来しながら、オスカーも手にし、秀作を連発してきたソダ―バーグ。両者の間で理想のスタイルを模索し、ついに新たなビジネスモデルに道筋をつけた彼の志を讃えましょう。「万人受けするように作れ」など圧力かけ放題の大手スタジオに大多数の監督が抗えない…。そんな中、納得のいく作品を作ること&大規模公開することの両立は奇跡に近く、それに挑む反骨のクリエーターは絶滅危惧種なのですから。【東海ウォーカー】

知的に見せたいがゆえに、トンチンカンなトークで場を異様な空気にするジョーの弟ら、愛すべきキャラが続々登場!©2017 INCARCERATED INDUSTRIES INC. ALL RIGHTS RESERVED.


【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは2018年1月5日公開「キングスマン:ゴールデン・サークル」のコリン・ファース!

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