高校野球スペシャル連載 “ワタシ”が語る甲子園 第8回/元阪神・赤星憲広さんの甲子園(後編)

関西ウォーカー

“高校野球大好き”な著名人が甲子園の魅力を語るスペシャル連載「”ワタシ”が語る甲子園~100年の熱狂ストーリー~」。情報誌「関西ウォーカー」と連動してスタートしたWEB版連載では、誌面に掲載しきれなかった未公開トークを含むスペシャル版を前後編で掲載する。

連載第8回目は前回に引き続き、元阪神タイガース、今春は「みんなの甲子園」(MBS)で6季目のナビゲーターも務めた赤星憲広さんのインタビュー(後編)をお届け!

高校野球とプロ野球、甲子園が見せる“二つの顔”


高校球児にとって甲子園は特別な場所。今年もどんなドラマが生まれるか楽しみにされています


―高校野球、プロ野球と、何度も甲子園で野球をされてきたと思いますが、甲子園球場はどの立場でも独特な雰囲気なのでしょうか?

「野球をしている人にとって、やはり甲子園は特別な場所だと思います。でも、高校野球の時の甲子園と、プロ野球の時の甲子園では、見せる“顔”が全く違うんです。阪神にいた時、モニターで高校野球の中継をよく見ていましたが、いつも試合をしているはずの甲子園が別の球場に見えるんですよ。高校生の時は『とんでもなく大きな球場だ』と思って緊張もしましたが、プロの時は『こんなに小さかったっけ』と、球場に立った時の感じ方も違いました。よく甲子園には“魔物が住んでいる”と言いますけど、魔物というより独特の雰囲気ですね。その中でなかなか結果が出ない、というのも一つのドラマ。“二つの顔”を持つ球場ってなかなかないと思うんです。そこが甲子園の魅力だと思いますね」

「甲子園を目指す球児にメッセージを送れたら…」と話す赤星さん


失敗した自分だからこそ…。「みんなの甲子園」で伝えたかったこと


―今春も「みんなの甲子園」(MBS)でMCを務められました。どのような気持ちで番組に取り組まれたのでしょうか。

「僕も甲子園を目指していた球児の一人。甲子園では大一番でエラーをしてしまった経験もあります。そういった自分の経験を踏まえ、甲子園を目指す球児たちにメッセージを送りたいと考えながら、毎年取り組んでいます。いろんなドラマがあるから高校野球は楽しいということを伝えたいんです。あとは、高校野球をやって、プロを経験して、また高校野球に戻ってきて、新鮮な気持ちもありますね。高校時代を思い出すことも多く、楽しいです」

取材を通してたくさんの高校球児と接してこられました【画像を見る】


―大人になって高校球児と接してみて、驚いたことはありますか?

「大阪桐蔭の根尾 昂君に取材をした時、高校生とは思えない大人の受け答えで驚きましたね。履正社の安田尚憲君(現千葉ロッテ)も受け答えが落ち着いていましたし、しっかりした子が多いなと感じます。でもおもしろいのは、取材の時は淡々と対応して何事もないように振る舞っていても、僕がその場を離れると『赤星だ!すげえ』って興奮してくれる選手が結構いるそうです。そう思ってくれてたんなら、その時言ってよ~って(笑) 」

―これまで取材してきた選手や学校で、心を動かされたエピソードはありますか?

「たくさんありすぎます(笑)。例えば東日本大震災で大変だった学校も取材させていただきましたが、必死に頑張っている彼らを見ているとすごいなって…涙が出てきました。僕は注目チームやドラフト候補の選手を取材することが多いですが、練習環境に恵まれなくても頑張っているチームも気になりますね。僕も高校時代はどちらかと言うと練習環境に恵まれていない方だったので」

―ご自身が高校球児だった時と変わらないと思うところはありますか?

「野球に対する考え方や取り組み方など、根本的なところは変わらないと思います。練習環境としては、昔よりウエイトトレーニングの器具が揃っていて良くなった部分もありますし、高校や野球部の数が減っていて厳しくなった部分もある。作戦の内容や選手の考え方も変わってきてはいます。でも野球の本質は変わらないですし、今は昔の野球の良さを進化させているようにも思います」

―夏の甲子園でもたくさんのドラマが見られそうですね。

「取材させてもらった子たちが活躍しているのを見ると、親心というか、うれしくなります。高校野球は勝ったチームだけがすごい訳ではなく、負けたチームにもドラマがありますし、大逆転や引き分け再試合、想像できないドラマやとんでもないことが起きるのも甲子園。どんなチームが見られるか今から楽しみです」



〈今回の語り部〉

赤星憲広…1976年4月10日生まれ。愛知県出身。阪神タイガース時代は2度のリーグ優勝を経験。引退後は野球解説者として活動するほか、RED・STAR Baseball Clubのオーナーを務める

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