渋谷駅西口エリアに広がる桜丘町は、渋谷界隈でも特筆すべきエスニック料理店の密集地。異国情緒あふれる店が連なるさくら通りをのぼった先に、この地で20年以上続く、都内有数の人気インドネシア料理店「アユンテラス」がある。
バリの風が漂うリゾート空間
オーナーの柴田力さんは自他ともに認めるバリ島フリーク。現地に2年半滞在したのち、バリの文化を伝える橋渡し的な店として、1997年に「アユンテラス」をオープンさせた。
家具や扉、調度品、皿やグラスにいたるまで、バリ島で買い付けた稀少価値の高い品々が並ぶ店内は、高級感漂うオリエンタルな空間。民族音楽のガムランが流れ、壁に飾られた彫刻やイカット(織物)を眺めながら、籐のイスでゆったりとリゾート気分に浸るひと時は格別だ。そこには時空を越えたバリのさわやかな風が流れているよう。
本格的な味わい!香り豊かな甘辛焼きそばに感嘆
バリさながらの雰囲気もさることながら、提供する料理の味も在日インドネシア人をも魅了する本格派。数あるメニューの中でもとりわけインドネシア料理の魅力を実感できるのが、甘辛焼きそばの「ミ ゴレン ケチャック」(1100円)。
この店ではエビや鶏肉に加え、ニンジンや小松菜、キャベツ、タマネギなどの野菜をたっぷり投入。一度食べたら忘れられない芳醇な味わいの決め手は、インドネシア料理に欠かせない2種類の調味料だ。
唐辛子ベースの自家製サンバルの辛味と、甘醤油のケチャップマニスの甘味が見事に調和。炒めた中華麺や野菜の歯応えと共に、多種類のスパイスが奏でる重層感のある甘味と辛味がふわりと広がり、具材のトマトの酸味と相まってヤミツキになる。
「ミ ゴレン ケチャック」 辛さ度:★★/パクチー度:ゼロ ※度数は5つが最高、ライター個人の感想による
上品なアユンテラスの料理の礎(いしづえ)は、オーナーの柴田さんが本場のスパイスを駆使して独学で築いた味。インドネシアの郷土料理とバリのリゾート空間。時間を忘れて長居する常連が多いのもうなずける。【東京ウォーカー】
取材・文=小林優子、撮影=伊原正浩