日本産クラフトジンのファン増加中!市場拡大の理由は世界を見据えた戦略にあり

関西ウォーカー

多くのメーカーが新作ジンを発売し、アルコール業界で話題になっている。世界的ブームが日本にも到来!<※情報は関西ウォーカー(2018年8月28日発売号)より>

イギリスやアメリカを中心に世界でクラフトジンブーム


「大きく伸びているのは、従来のジンにアレンジを加えたクラフトジンを含むプレミアムジンの市場。当社の推計で2017年は、前年比で約2.4倍。2018年もそれに近い伸び率になりそうです」と答えてくれたのは、「ROKU」の開発を担当したサントリースピリッツ(株)の鳥井さん。今、イギリスやアメリカを中心に世界的なクラフトジンブームなのだそう。

開発期間は約2年。トニックや炭酸水で割るだけでおいしくなるのが「ROKU」の魅力/サントリー ジャパニーズクラフトジン「ROKU」


ベースのスピリッツに、ジュニパーベリーをメインにした数種のボタニカル(風味を生む素材)を加えて蒸溜したものがジン。各社は、蒸溜時に加えるボタニカルで日本らしさを出している。

サントリーの「ROKU」は、日本ならではの魅力を持った“ジン”を造りたいという思いから、ジュニパーベリーなどの定番素材に加えて、桜花、桜葉、煎茶、玉露、山椒、柚子の6種のボタニカルを使用。上品な香りと繊細な口当たりが魅力のサントリー初のクラフトジンだ。飲んでみると桜葉や山椒、柚子などの優しい味や香りが口の中でバランスよく広がる。700mlで度数47%、希望小売価格は4000円(税抜)。

【写真を見る】「ROKU」に使用する玉露/サントリー ジャパニーズクラフトジン「ROKU」


「ROKU」に使用する桜花/サントリー ジャパニーズクラフトジン「ROKU」


大阪港にあるサントリーの大阪工場で蒸溜される。工場は1919年に操業開始


サントリースピリッツ(株)商品開発研究部 専任シニアスペシャリスト 鳥井和之さんは、サントリー大阪工場でジンのほか、ラム、ウォッカなどホワイトスピリッツと呼ばれる洋酒の研究や開発をおもに手がける。

日本らしい味わいと仕事 世界で勝負する和製ジン


和の風味を感じるジン「季の美」を造る京都蒸溜所は、京都の風土や伝統、文化に魅了された創業者が日本初のジン専門蒸溜所として2015年に設立。こちらも、販売の推移は好調だ。

江戸時代から続く唐紙店を継承するKIRA KARACHOがボトルの文様を監修/季の美 京都ドライジン


「季の美」は、ジュニパーベリーの効いたロンドンドライスタイルに、柚子や玉露、生姜などおもに京都産の「和」のエッセンスを加えたスーパープレミアムクラフトジン。水にもこだわり、伏見の水を使用するなど、京都で造ることを生かす。2016年10月発売の人気商品。700mlで度数45%、希望小売価格は5000円(税抜)。

「季の美」の国内販売を担当する株式会社ウィスク・イーの坂巻隆浩さんは、「ジン市場は今、急成長中。ただ今後、安定期に入るとジンもほかの酒類と同じく少しずつ淘汰されると考えられます」と、ブレイクの先も予測。

しかし、不安はない。「季の美は今年、英国の2つの品評会で最高賞を授かりました」と坂巻さん。鳥井さんも、「ROKUの試作品を本場のロンドンやジン文化の最先端地スペインに持ち込んで、多くのバーテンダーに試飲を依頼。その意見を反映させています」と話す。メジャーになったウイスキー同様、日本のクオリティの高いクラフトジンを世界で飲んでもらう。そんなグローバルなビジョンが、すでに見えているのだ。

数字で見るヒットのポイント


【22年ぶり】サントリーのジンの新製品発売。1995年発売のロングセラー「アイスジン」以来。サントリー最初のジン「ヘルメスドライジン」は1936年発売。

【2.4倍】2017年のプレミアムジンの国内出荷量の前年比。1.1万ケースから2.7万ケースに伸びていて、2018年も同レベルでの出荷増が見込まれている。

【14か国】「ROKU」の販売エリア。2018年6月末時点で、アジアでは中国、フィリピン、ヨーロッパではイギリス、ドイツなどで販売している。

関西ウォーカー編集部

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