フォロワー37万人超の人気漫画家“ぬこー様ちゃん”!ブラック企業勤務の男性が、万バズを量産する“美少女”漫画家になるまで

東京ウォーカー(全国版)

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あなたは“ぬこー様ちゃん”という漫画家をご存知だろうか?ほぼ毎日、自身の体験をもとにした漫画「絵日記」をTwitterに投稿し、万バズを連発。5万いいね以上も頻繁に獲得している漫画家だ。作品内では自身の姿をボブカットのかわいらしい少女の姿で描いているのだが、実際は40歳の男性。そのことは作品内でもしばしば言及しており、プロフィール欄にも「打ち切られたショックで美少女になった漫画家」と明記している。

共感性や学びの多い内容と、“ぬこー様ちゃん”の絵柄のかわいさ(ただし、実際は屈強な40歳男性)が相まって多くの人から支持を受けているわけだが、ぬこー様ちゃんはいわゆる漫画雑誌やWEB媒体での連載といった“商業連載”は持たず、自身のSNSで漫画を投稿することをメインとしている。新しい漫画家のスタイルで活動するぬこー様ちゃんに現在のスタイルになった経緯、活動において大事にしていることなどをインタビューし、前後編の記事でお届け。前編の本記事では、ぬこー様ちゃんが美少女キャラになった理由を聞く。

日本男児が絶対思ってること焼肉の話を漫画にしました_01 【画像提供=ぬこー様ちゃん(@nukosama)】

日本男児が絶対思ってること焼肉の話を漫画にしました_02 【画像提供=ぬこー様ちゃん(@nukosama)】

日本男児が絶対思ってること焼肉の話を漫画にしました_03 【画像提供=ぬこー様ちゃん(@nukosama)】


なりふり構わずの姿勢で生まれた美少女キャラ

――絵日記の中で、絵を描くようになったきっかけや、小学生のころには「漫画家になりたい」と思うようになったエピソードを紹介していますが、大学では特に漫画とは関係のない進学先を選ばれていたんですよね。
【ぬこー様ちゃん】はい、大学は情報学部で、就職もそちらの方面でするつもりでした。しかし、卒業していく先輩たちが病んでいく様子を見て思いとどまり、大学4年生のときに就職活動を一切せず、長く続けていた水泳を生かして、自分も通っていた地元のスイミングスクールに就職しました。なので、大学4年生のころはほとんど何もせずに過ごしていましたね。

2876日後に洗脳が解ける社畜_01 【画像提供=ぬこー様ちゃん(@nukosama)】

2876日後に洗脳が解ける社畜_02 【画像提供=ぬこー様ちゃん(@nukosama)】

2876日後に洗脳が解ける社畜_03 【画像提供=ぬこー様ちゃん(@nukosama)】

2876日後に洗脳が解ける社畜_04 【画像提供=ぬこー様ちゃん(@nukosama)】

――そこから、アニメやエンターテインメントの学校である代々木アニメーション学院の教師として転職されていますが、これはどういった経緯からだったんでしょうか。
【ぬこー様ちゃん】スイミングスクールで働きながら、25歳のころから同人活動をするようになりました。仕事は忙しかったんですが、同人活動も積極的に頑張っていまして、スイミングスクールに勤めて8年目のタイミングで代々木アニメーション学院(以下、代アニ)からオファーがあったんです。代アニは全国各地に拠点があるんですが、当時、広島校のイラスト科の先生が2人一気に辞めてしまったそうで、そこでイラストが描けて、中国地方に住んでいる人はいないかということで、岡山に住んでいる僕に声がかかりました。同人活動時に代アニの先生とお付き合いがあって、その方が推薦してくださったんです。代アニからのオファーが来たタイミングで、とある大学のスポーツと情報システムを組み合わせた学科の講師のオファーもあったんですが、漫画家になろうと心に決めていたので、代アニの講師を引き受けました。

――何年くらい代アニで先生をしていたんですか?
【ぬこー様ちゃん】広島で2年、大宮で1年、 東京で2年間勤めたあと、さらに非常勤講師として2年ほど働いていました。

――33歳で初めての連載を持ったそうですが、となるとそのタイミングでは代アニの先生をしていたんでしょうか。
【ぬこー様ちゃん】はい、そうです。正社員としてフルタイムで働きつつ、連載を持っていました。

――ハードな日々だったんでしょうか。
【ぬこー様ちゃん】そうですね。当時「コミックガンマ」という媒体での連載と、とあるスマホゲームの公式漫画連載を持っていたんですが、そこに加えて代アニをモチーフにした『専門学校JK』の連載が始まるというタイミングで、キャパシティを超えそうだったので、正社員から非常勤講師になりました。先方からは引き止められたんですが、週2回の勤務で勘弁してくださいとお願いしました(笑)。

――Twitterのプロフィールに「打ち切られたショックで美少女になる」と書いてありますが、これはどういうことなんでしょうか。
【ぬこー様ちゃん】いろいろあったんですが、『人見知り専門家庭教師 坂もっちゃん』という作品を出したんです。これは個人連載だったものを出版社に拾ってもらって書籍になった話で、それなりに自信のある作品でした。ですが、重版はかからなかったんです。それでこれはもうなりふり構っていられないな、と。かつては自分自身に起きた出来事を描くときは、自分自身に近い男キャラで描いていたんですが、この出来事をきっかけに自分を美少女キャラで描くようになりました。

――美少女アバターを使うという発想はどこから得たんですか?
【ぬこー様ちゃん】『人見知り専門家庭教師 坂もっちゃん』がイラストや漫画などを投稿できる「pixiv(ピクシブ)」で、pixivコミック月例賞大賞をいただいて、その受賞者インタビューがあるということで本社に出向いたんです。そこでファンがクリエイターを定期的に支援する「pixivFANBOX(ピクシブファンボックス)」を運営されている方とお話する機会があったんですが、男性が女性アバターを使って稼いでいるんですよ、という話を聞いて「これだ!」と思い、その日のうちに3Dキャラを作って“バ美肉”(美少女のアバターを使うこと)しました(笑)。それが現在の“ぬこー様ちゃん”のキャラデザのルーツです。

――現在も漫画とは別に3Dキャラクターを使用した活動をしていらっしゃるんでしょうか。また、キャラクターを作るのって難しくないですか?
【ぬこー様ちゃん】以前、3Dキャラを使って生放送配信をしていました。今でもたまに使っています。VRoid Studio(ブイロイドスタジオ)という3Dキャラ制作ソフトがあって、絵が描ければ簡単に作れるので、こだわりがなければ誰でも1日でできますよ。ただ、今は本職の方に新しい3Dキャラの制作を依頼しているところで、うまくいけば年内にはお披露目になるかと思います。

――フットワークが軽いですね!デジタル系の技術に手を出しやすいのは、大学時代の経験が生きているんでしょうか。
【ぬこー様ちゃん】そうですね、pixivとかアフィリエイトブログなんかは、その経験が生きたと思います。今は単純にビジネスと割り切って、使えるものは使っていこうというスタンスで活動しています。40歳なんで、こだわりもプライドも捨てて生きていかなくてはと思っています(笑)。

――男性であるというのは隠していないですよね。
【ぬこー様ちゃん】はい。ずっと女性のフリをしていた場合、男性であることが発覚した場合炎上するじゃないですか。美少女キャラを使い始めて最初のうちは、「男性です」と取り立ててアピールはしていなかったんですが、徐々に絵日記の中で「男性です、40歳です」と小出しにするようにして、読者がショックを受けないように、計画的に開示するようにしてきました。

――PR漫画を描くことで収益を得ているという話も描かれていました。
【ぬこー様ちゃん】PR漫画を描き始めたのは美少女になるさらに前、4年くらい前からですね。たまたまなんですが、僕が最初に連載をやらせてもらった「コミックガンマ」の初代編集さんが独立して、PR漫画の会社を立ち上げたんです。その縁でPR漫画の執筆をするようになりました。商品をプロモーションするのも苦じゃないし、「これは自分に向いているぞ」と手応えを感じて積極的に引き受けるようになりました。おかげさまで、さまざまなジャンルでの依頼が増えるようになり、生活が成り立っています。

――再び商業連載を目指すことは考えていないんでしょうか。
【ぬこー様ちゃん】ストーリー漫画については量を描けない、向いていないことに気づいてしまったので、僕はやらないかな。やれる人はどんどんやったほうがいいと思うんです。ちゃんとした世界観を作って、キャラクターを作ってということができる人は想像がつかないような売れ方をするので、できるのならそれを狙いたいですけど、僕はもうそれができる年齢ではないので、そこはわきまえて、自分のできることをやっています。

――ではPR漫画をメインに活動されているんですね。
【ぬこー様ちゃん】PR漫画の収益もあるんですが、実は今、一番の収入源はAmazonにアップしている無料の絵日記なんです。「Kindleインディーズマンガ」は、読者側のダウンロードは無料なんですが、作品が読まれるとクリエイターに還元されるんです。「インディーズ無料マンガ基金」から収益が分配されるようになっているんですが、この基金の総額が毎月1300万から2000万に増額されました。クリエイターが増えるのに伴って増額されているのでありがたいシステムですね。

ぬこー様ちゃんの名づけ親はアンチ?強心臓は就職先でも発揮

――ぬこー様ちゃんという敬称が重なったペンネームが印象的です。由来を教えてください。
【ぬこー様ちゃん】これはアンチから呼ばれた名前なんですよね。自分からは名前を決めたことがなくって。誰かが勝手に僕のことを「すれーぬこう」って呼び出したんです。それでしょうがなくその名前で名乗るようになって、そのうち「ぬこー」とだけ呼ばれるようになったんです。そしたら今度は僕が偉そうだということで、皮肉で「様」をつけられるようになって、「ぬこー様」になりました。ただ、「ぬこー様」だとエゴサしやすいのでいい名前だなと思っています。「ぬこー」だと猫が出てきてしまいますけど(インターネットスラングで猫のことを「ぬこ」と表記する)、“様”がつくと自分のことになるので。

――商業連載作品の『専門学校JK』は「ほっけ様」名義ですよね?商業連載時はこの名義だったんでしょうか。
【ぬこー様ちゃん】そもそも名前にこだわりがないんですよ。『専門学校JK』連載時、他でも連載を持っていたんですが、そこでは「ぬこー」名義でした。で、同人は「ぬこー様」と、3つの名前を運用していた時期もありました。

――そこからさらに“ちゃん”がついた理由は?
【ぬこー様ちゃん】美少女化するということで「ちゃん」をつけました。“ちゃん”や“くん”などの敬称をそのまま名前の一部にしている人は芸能人にもたくさんいますが、せっかくなら2つつけちゃおうかなと、ノリで決めましたね。会話のときは呼びにくいので、そのときは“ぬこーさん”とか“ぬこーちゃん”とかで全然いいです。

――エゴサがしやすいとのことですが、よくされているんでしょうか?
【ぬこー様ちゃん】めちゃくちゃしています。特に漫画を投稿したときは頻繁にしていますね。というのも、僕の名前を出してツイートをしてくださっているのって熱心な方なわけで、そういった方の意見をなるべく取り上げたいんです。漫画を投稿して1時間、誰も名前を書いていなかったら「おもしろくなかったのかな?」という指標にしています。たまに、エゴサができないような一般名詞を使ったハンドルネームの人もいるじゃないですか。それはもったいないなって思いますね。

――アンチが名づけ親というお話でしたが、アンチってやっぱりいるんですか?
【ぬこー様ちゃん】いますよ!DM(ダイレクトメッセージ)やリプライはなくなりましたけど、匿名掲示板でいろいろ書かれていたりしますね。4、5年前は熱心なアンチが1日2回、僕の本を出している出版社に電話をしてきたそうです。過去、よく利用していたお絵かき掲示板でトラブったときがあってそのときの人たちが僕のことを定期的に叩いていたり。ただ、こちらが気にしなければノーダメージです。

――強心臓ですね!強心臓といえば、絵日記『2876日後に洗脳が解ける社畜』ではスイミングスクール在職時の話を描かれています。フェイクも交えた話とされていますが、終業後、「私たちが働けているのは会社のおかげ、会社への感謝の気持ち示すため」と業務時間外の館内清掃をやるよう先輩たちに命じられたのに、無視して帰宅していますね。これは本当だったんでしょうか?
【ぬこー様ちゃん】本当です(笑)。初日からきっちり帰りました。この会社、間違っているから俺が変えてやらなきゃなって本当に思っていましたね。自分が生徒として通っていたスクールだったんで、社長のこともスタッフのことも知っていたのもあって、余計に「こいつらなんとかしてやんなきゃ」って。思い込みと勘違いが甚だしい話ですが(笑)。

2876日後に洗脳が解ける社畜_09 【画像提供=ぬこー様ちゃん(@nukosama)】

2876日後に洗脳が解ける社畜_10 【画像提供=ぬこー様ちゃん(@nukosama)】

2876日後に洗脳が解ける社畜_11 【画像提供=ぬこー様ちゃん(@nukosama)】

2876日後に洗脳が解ける社畜_12 【画像提供=ぬこー様ちゃん(@nukosama)】

――給料も良いとはいえず、有給休暇が取れなかったり、時間外労働やサービス残業が多かったりと、いわゆる“ブラック企業”だったわけですが、その認識はなかったんですよね。
【ぬこー様ちゃん】2001年にブラック企業という言葉が使われ始めて、ブラック企業の働かせ方はおかしいぞという認知が広がったわけですが、同業他社と比較するとまだマシだったこともあって、その当時は自分の会社がおかしいとは思っていませんでした。

――このお話を描いたのはなぜでしょうか。
【ぬこー様ちゃん】せっかくなのでこの経験をみんなに共有したいな、と思って描きました。仕事について悩んでいる人も多いと思うんですが、そういう人の励みになればと。「読んで勇気をもらえて辞めました!」というコメントもきましたね。ブラック企業の体質を内部から変えるのは難しいです。就職時に「こいつらなんとかしてやんなきゃ」って思っていましたが、結局何も変えられなかったです。作品のあとがきでも書きましたが、辞める直前の僕は「ブラック企業にいたおかげで成長できた。強くなった」と思っていましたけど、まともな会社にいたほうが絶対成長したと思っています。

――無事に転職できて何よりでした。ぬこー様ちゃんは漫画家志望の方から寄せられた相談に乗るエピソードも「絵日記」で描いていらっしゃいます。人にアドバイスをしたり、教えることがとても上手であるように感じるのですが、これはどうやって養われたんでしょうか?
【ぬこー様ちゃん】高校生のとき、スイミングスクールで最年長の状態で、年下の子たちの面倒をみなきゃいけなかったんですよ。普通のスクールの場合はコーチが教えると思うんですが、僕の通っていたところではコーチがメニューを置いていなくなっていました。わからないことがあると、みんなが最年長である僕に聞きに来ていたので、仕方なく教えるというのをやっていました。次第に“教える”ということが難しいとわかってきて、どうやっていけばいいのかと考えるようになりました。大学生になってからもバイトで水泳と体操のコーチをしていたのもあって、10年以上“教える”ということをやっていました。さらに代アニで、さまざまなタイプの生徒と交流していた経験も大きかったと思います。志の高い子がいる一方で、不登校気味の子が外へのつながりを持つために在籍していることもあって、そうしたモチベーションの差から生徒同士のいさかいも頻繁でしたね。

――代アニでの生徒指導のエピソードは学ぶところが大きいと評判ですね。
【ぬこー様ちゃん】そうですね、漫画業界に限らず、さまざまな業界にも通じると反応をいただいています。僕の漫画が読者の方にプラスに働いているのなら良かったです。

商業連載という点ではつらい経験をしてきたぬこー様ちゃんだが、その果ての「なりふり構わない」「新しいものを取り入れる」という姿勢が現在のスタイルを作り上げたことがわかる話だった。後編では、ぬこー様ちゃんがたどり着いた、漫画家のSNSを活用した新しい戦い方などについてを聞いていく。

この記事のひときわ #やくにたつ
・こだわりを捨てて、新しいものをどんどん取り入れていく
・エゴサを上手に利用して、ファンの意見を取り入れる
・ネットで叩かれても、こちらが気にしなければノーダメージ
・ブラック企業からは早く抜け出す

取材・文=西連寺くらら

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