15万円超えのチケットも即完売!!鉄道マニアから熱視線を浴びるJRE MALLの「車両撮影会」がスゴい

東京ウォーカー(全国版)

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高額チケットでも完売が続出!車両撮影会の人気の秘密に迫る

JR東日本が運営するECサイト「JRE MALL」。鉄道会社が運営するとあって、鉄道関連グッズの販売がメインなのかと思いきや、ふるさと納税やビックカメラとの連携グッズまで幅広い商品を取りそろえている。その中でも鉄道マニアから注目されているのが、「鉄道イベント・体験」のカテゴリー。1万円以上の高額な体験チケットが並ぶが、完売しているものが多く、人気の高さがうかがえる。2022年11月現在、一番高額な商品は電気機関車の操縦体験で15万1842円だが、こちらも完売!

JRE MALLでは、2021年8月からこうした鉄道イベントの販売を行っており、売上は好調だという。従来、無料イベントは多く催してきたものの、なぜ、“販売”をする方向性にいたったのか、JR東日本マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門新規事業ユニットの飛鳥井啓さん、事業推進ユニットの鴨田佳宣さん、藤野悠生さんに話を聞いた。

JRE MALLの「鉄道イベント・体験」ページ。100件以上のイベントが並び、完売しているものも多い

JR東日本マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門新規事業ユニットの飛鳥井啓さん(中央)、事業推進ユニットの鴨田佳宣さん(左)、藤野悠生さん(右) 【画像提供=JR東日本】


コロナ禍での減収。現場から湧き上がった「イベントを開催したい!」の思い

もともと、JR東日本では品川区にある東京総合車両センターをはじめとした、各地の車両センター・基地にて、地域貢献のイベントを開催していた。このときのイベントは、入場無料で、広く来客を募集する形で行っていたのだそう。

「それが2020年から始まったコロナ禍で軒並みイベントが中止となってしまいました。今期は黒字になりましたが、コロナ禍で業績も悪化しているなか、車両基地や駅などの現業機関でも何か収益を上げることはできないか、という声があがりました。人数を制限すること、そして事前予約制にすることで参加者の把握が可能となり、コロナ禍においても開催できるイベントとしてスタートしたんです」

有料イベントの発案は現場側からあがったもの。それをJRE MALLで“販売”できるようにルートを整えていったのだそう。

「有料化にあたってイベントに付加価値を用意することは現場でできるんですが、販売となると現場で行うのは難しいんです。JRE MALLは2018年3月に開設したんですが、有料化はこれが軌道に乗ってきたのとちょうどいいタイミングでした。販売にあたっては、売上がきちんと汗をかいた場所(現場)に計上されるようにしたり、現場サイドで主体的にやっていけるようにあらかじめ綿密なマニュアルを用意したりしました。いちいち本社や支社にお伺いを立てなくても、現場サイドで走っていけるように体制作りをしたんです。なので、企画からJRE MALLでの商品ページも含めて現場サイドで作り込んでもらっています。もちろん本部・支社で確認はしていますが、これはもう形式的なものですね。売り方も含めて現場で最良のものに持っていけるようにしています」

それまで“無料”であったイベントを“有料”にすることに対しては、社内から「お客様に理解を得られるのか」という懸念の声もあったそう。しかし、イベントに取り組んでいくうちに、それまでの無料イベントとは一線を画すものであるという認識が浸透していった。

「それまでの無料イベントでは、事前にどれくらいの人数が来場するのかわからないこともあり、場合によっては並んでいただくこともありました。無料なので“できる範囲で”という意識で、個々のお客様へのニーズの掘り下げということはできませんでした。テンプレートに沿った形だったんです。一方、有料イベントについては現場自らがアイデアを掘り下げた体験を発案していき、少数の人とやり取りをしていく…アプローチの仕方が全く違います」

鉄道マニアと一口で言ってもさまざまなカテゴリー、層がある。写真を撮りたい人、乗るのが好きな人、ジオラマを作る人、鉄道好きの子ども、子どもにつられて自身も鉄道好きになった親…。無料イベントのときはそういった多様な層がまとめてイベントに参加する形だった。

「お子様が参加するイベントだと安全策のために柵を設けるなどしなければなりません。しかし、写真を撮りたい大人からすれば、柵が映り込んでしまって不満、ということがあったんですね。逆に子連れのお客様からすれば、子どもが飽きてしまったときのために休憩スペースが欲しいとか、ベビーカーで行きたいとか、それぞれ求めるものが違っていたんです。そこを少人数イベントにすることで棲み分けができるようになり、それぞれのニーズに応えることができました。その点が大きく評価され、売上につながっていると考えています」

完売続きの車両撮影会の様子。写真は2022年11月に開催された「豊田車両センター201系撮影会」。午前と午後の2部制で、各15名参加した 【画像提供=JR東日本】

撮影会で使用された201系は1981年(昭和56年)に製造された通勤電車で、引退済みの車両。撮影会はその車両を間近で見られる貴重な機会となった 【画像提供=JR東日本】

大人限定のイベント時は、無料イベントのときには公開していなかったエリアに入れるように体験プログラムを組んだ。親子向けのイベント時は新幹線の中でお弁当を食べられたり、運転席に入って運転士の制服を着て記念写真を撮れるようにしたり、子どもが喜ぶ要素を取り入れた。それぞれの客層に向けたイベント作りが行われているという。そのおかげで、一つひとつのイベントの参加可能な人数に制限はありつつも、多くのリピーターを生んでいる。

「1人当たりの単価は高いですが、少人数なこともあってJRE MALL全体の売上の中で、鉄道イベントの売上が特段高いということはないんです。その代わりリピート率が高い!とてもいいお客様に恵まれて大事にしていただいていますし、そうした方々に向けてもっと喜んでいただけるイベントを提供していきたいと考えています」

車両撮影会からファンコミュニティへの発展へ

それまで無料のイベントしかしてなかったこともあり、有料イベントにした際、値付けには悩まされたのだそう。

「当日対応する社員の人件費、イベントで用意する資材などの原価は絶対割らないようにしよう、きちんと収益が上がる金額を設定しようという考えでした。今はたくさんのイベントがありますから、類似イベントや他社開催のイベントを含めた相場感を見て値段を設定しています。参加してくださったお客様からヒアリングをきちんとしていくことで、値段やイベント内容が妥当か、もっとよくできる点はないか確認することを徹底しています」

冒頭で15万円超えのイベントについて紹介したが、今までで一番値段が高かったイベントは81万円なんだそう。

「新潟の古い国鉄電車115系の撮影会があったのですが、これの先行入場権利をオークション形式で販売したところ、81万円でした。ほかの方より1時間早く入場して、自分の好きなように写真を撮れるというものだったんですが、ニーズとマッチしての金額になったと考えています。ただ、正直ここまでの金額になるとは思ってもいませんでした。一般販売の方式だと電気機関車の操縦イベントが10万円を超えるのですが、販売のたびに完売しています」

2022年11月時点で最高額の「鉄道イベント・体験」商品は電気機関車の操縦体験。15万を超えるが、全日程完売済み

高額のイベントが完売したことは、イベント開催の自信につながった。

「車両や線路のメンテナンス部門というのはコストのかかる部門であり、直接的に収益を上げる部門ではなかったので、こうしたイベントを開催することで収益を上げるということ自体が新鮮だったようです。『我々でも稼げるんだ』という励みになっています。今まではヘルメットを被った社員がお客様と直接やり取りをするということは基本的に考えられなかったんですが、イベントではメンテナンス社員がお客様の案内や受付もこなす姿は、会社としても新鮮に映っていますね」

ニュースでは、しばしば写真を撮りたいがあまりに悪質な行動を起こす鉄道マニアの話が上るが、こうした特殊なイベント開催をすることで問題が起きたことはないのだろうか。

「車両撮影会などのイベントに参加してくださる方々は本当に皆さん節度を守っていらっしゃるので、トラブルが起きたということは一度もないですね。こちらのルールも十分ご理解くださったうえで撮影をしてくださる方々です。なので、そういった方々に喜んでいただけるコンテンツの提案を、と考えています」

この流れを受けて、JR東日本で新たに取り組まれたのが“撮り鉄”向けのファンコミュニティ開設だ。2021年11月から「撮り鉄コミュニティ」として、ファンコミュニティのプラットフォームサービス「Mechu(ミーチュー)」内に開設され、月額1100円の会費を支払うことで、限定イベントの参加などの特典が受けられる。

「コミュニティの人数としては決して多いわけではないのですが、皆さん熱い思いをお持ちで、こだわりもそれぞれあるので、掲示板などを利用して、さらにそのニーズをリサーチしています。ただ完成品を提示するだけではない、“プロセスエコノミー”の要素を取り入れながら、さまざまなサービスに展開していきたいです」

顧客を鉄道ファン・鉄道マニアとしてざっくり括るのではなく、細分化して考えることで新たなビジネスにつながっていることがわかる。今後も“撮り鉄”だけではなく、さまざまなニーズに合わせてのビジネス展開が期待できそうだ。

この記事のひときわ #やくにたつ
・顧客の層を細分化することで、それぞれのニーズに合わせた商品展開をする
・現場主導で動けるように体制を整える
・コスト部門に収益の役割を与え、モチベーションを向上
・成功例を生かして新たなビジネス展開につなげていく

取材・文=西連寺くらら

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