スターバックス閉店3時間前から20%オフ。フードロス対策から生まれたポジティブなサイクル

東京ウォーカー(全国版)

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社会全体で考えなければならない問題は数多く存在するが、その中でも身近な問題のひとつが「フードロス」。日本では、1年間に約612万トン(2017年度推計値、農林水産省・環境省調べ)もの食品が廃棄されていると言われている。このフードロスは、環境悪化へ直結するのはもちろん、将来起こり得る食糧危機を前に無視できない問題になりつつある。

近年、さまざまな企業で取り組みが実施されているが、スターバックス コーヒー ジャパンでは、ケーキやサンドイッチといったフード類を、店舗の判断で閉店3時間前を目処に20%オフで販売するフードロス削減プログラムを2021年8月より開始。これまでディスカウントを行わなかったスターバックスが値引きに踏み切ったということで、大きな話題を呼んだ。プログラム開始から1年半が経過した今、この取り組みの現状を取材。そもそも、この施策に踏み切ったきっかけや理由も含め、スターバックス コーヒー ジャパン サポートセンター(本社)商品本部フード部部長の森田一毅(いっき)さんに話を聞いた。

スターバックス コーヒー ジャパン 商品本部フード部部長の森田一毅さん。2016年にスターバックスにジョイン、フードの責任者として今回のフードロス削減対策の先頭に立ち、実現に向けて動いた【撮影=三佐和隆士】


食べられるのに廃棄しなければならない。店舗従業員たちの葛藤が対策を後押し

スターバックスはコーヒーショップなだけあって、多くの人がドリンクを求めにやってくる。そのため、フードはドリンクに寄り添うものとして開発されているのだそう。

「私たちは、常々”ストーリーテラー”であろうと話し合っています。その言葉には、ドリンクとの相性を考え抜いたフードを取りそろえることに加え、メニューが持つ価値観がいかにお客様の“共感”を得られるストーリーを紡いでいるかを大事にしたいという思いを込めています。フードロスやプラントベース(植物由来の食生活)など、現代はさまざまな価値観があります。限られた品ぞろえの中で、多様な価値観に応える選択肢をご提供し、かつお客様に満足感を持って購入していただけるか。食べておいしいだけではなく、スターバックスで過ごしたひとときがよいものになるか。そこに貢献できるフード作りを目指しています」と森田さん。

2020年、スターバックスは使うよりも多くのものを社会に還元していく“リソースポジティブカンパニー”になることを目指し、さまざまな戦略・目標を掲げた。そのうちのひとつが「店舗などから出る廃棄物の50%削減を目指す」というものだ。

コーヒーを淹れたときに豆かすはつきもの。スターバックスではただ廃棄するのではなく、たい肥にすることで良い循環を作ろうとしている【写真提供=スターバックス コーヒー ジャパン】

豆かすを利用したたい肥で育てた農作物を使ったスイーツを展開。おいしさを妥協せず、食品廃棄量削減という“ストーリー”が購入の動機になることを目指している【写真提供=スターバックス コーヒー ジャパン】

「スターバックスの店舗で出る食品廃棄物のうち、期限切れのフードの割合は15%ほどにすぎません。メインはコーヒー抽出後の豆かすで、7割を占めています。豆かすについてもリサイクル活動を進めていて、固めてトレーに混ぜたり、たい肥や牛の飼料にしたり、消臭剤にしたりしています。ニンジンや抹茶の畑で豆かすたい肥を使用し、収穫したニンジンはキャロットケーキに、抹茶はケーキやスコーンにしています。全体の豆かす廃棄量に対して限定的ではありますが、何かひとつのことで解決するのではなく、いろいろなアクションを通じて削減目標を達成していきたいと考えています」

豆かすのリサイクルは着々と進んでいるようだが、回収のコストや法律の問題など、リサイクルならではの課題もある。

「たい肥や飼料にしても使ってくださる方がいないといくら作っても意味がないです。模索しながら試してみて、課題が出てきたら対処していくというトライ&ラーンで進めています。豆かすのリサイクルについてはもう8年くらい取り組んでいますね」

期限切れフードの廃棄量は店舗あたりの食品廃棄量としては少ない割合ではあるが、これを無視することはできないというのは、現場のパートナー(従業員)からの声も大きかったそうだ。

「閉店直前まではお客様におすすめしていたフードを、閉店したら廃棄しなければならない。このことに、店舗に立つパートナーたちは葛藤しているということは以前から聞いていました。スターバックス全体として、食品廃棄量を減らしていくという方針が打ち出されたのと時を同じくして、2019年に開催された『ユースアントレプレナーアクション』で、フードロス削減案を提出したチームがいたんです」

ユースアントレプレナーアクションでは、「日本や地域のゴミ問題」「日本の農業や酪農の未来」「新しいつながりをつくること」の3つのテーマでアイデアを募集。最優秀賞に輝いたのは、“透明な紙カップ”を実用化することでプラスチックゴミの削減を目指したチームで、こちらの提案内容も非常に気になるところだ【写真提供=スターバックス コーヒー ジャパン】

「ユースアントレプレナーアクション」とは、30歳未満のパートナーを対象に、リーダーシップや起業家精神を養うプログラムとしてスターバックスが開催したコンテスト。有志のチームが社会問題に対してアイデアを練り、対策をプレゼンテーションしていく。ファイナリストのひとつになったチームが、フードを廃棄せず、活用する仕組みを提案した。実際に実施された割引システムとは異なる内容ではあるが、期限切れフードの廃棄対策を後押しするきっかけになったという。

「問題提起してくれたパートナーたちとはラウンドテーブル(部署・役職の異なるメンバーと、上下関係や立場を超えて自由に意見交換をすること)をしていき、店舗に立つパートナーたちからどういったことが現場で起きているのか、どういう気持ちなのか議論を重ねていきました。これは私個人の解釈ではありますが、サステナビリティと言われると非常に大きな話になって何をすればいいのかわからないと思ってしまいがちです。しかし、パートナーの視点に立つと、食べられるものを捨てなければならないというのはすごく大きな問題です。数字の大小ではなく、身近な問題としてパートナー1人ひとりが強い思いを持っていたことが、今回導入したプログラムの大きな原動力になりました」

期限切れフードを減らすためにさまざまな工夫がとられた。発注システムのロジックを変更することで、店舗に適切な数を仕入れて売り切るようにする。陳列を工夫することでフードをより魅力的に見せ、販売促進につなげる。試食を提供して販売機会に増やす。

「さまざまなアクションをとったうえで、さらなる削減方法としてディスカウント販売を決めました。しかし、スターバックスはこれまでこれほど大規模で継続的なディスカウントをしてきませんでした。そのために、部署をまたがって時間を重ねての話し合いが行われました」

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