カクヤスはコロナ禍をどう切り抜けたのか?会長の話に見つけたビジネスのヒント!銀座のクラブ限定配達サービスも大当たり

東京ウォーカー(全国版)

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「23区内どこでも、最短1時間で、1本から、無料で」というキャッチフレーズで、これまでの“配送の常識”を覆して大きく成長してきたカクヤスグループ。競合他社も寄せ付けない“カクヤスモデル”という独自の配送網を武器に、昨今は日用品や高級ワインの配達などの新たなサービス展開も始めている。さらに九州でM&Aを成功させ、東京以外での活動も活発化。前編では「お酒1本から当日に無料配達」という、これまでにない配送スタイルの確立までの軌跡について話を伺った。今回はカクヤスグループがどのようにコロナ禍を切り抜け、今後、アフターコロナの世の中にチャンスを見出していくのか、代表取締役会長の佐藤順一さんに話を伺った。

業務用の当日配送を軌道に乗せ復活した矢先、今度はコロナ禍で20億の損失

株式会社カクヤスグループ 取締役会長 佐藤順一さん【撮影=オオノマコト】

ーー赤字覚悟の配送網のインフラ整備が功を奏しましたね。
それが2019年の12月でしたね。そして、さらに30数店舗余分に出して、都内2時間だった宅配サービスを1時間に進化させました。我々はサテライトと呼んでいるのですが、飲食店は前日に注文しなくなるだろうと考えて、繁華街に配送の専用倉庫を作ったんです。歌舞伎町や六本木で、交差点を渡るのに信号待ちをしなくて済むようにサテライトを配置して、サテライトからボンボン運ぶようにしました。その結果、業務用7割、家庭用3割の会社になりました。それが上場できた大きなポイントでもあります。

ーーただ、すぐにコロナ禍を迎えました。
【佐藤順一】まともに商売をさせてもらえたのは、たったの2カ月ですよ。コロナ禍になって「一体どうなるんだろう?」って。上場したため対外的な信用もあり資金調達はできましたが、最初の1年で20億強の営業赤字が出たんです。コロナ禍では飲食店には補償金が出ましたが、流通業は全く出なかったので、もろに赤字を食らうわけですよね。しかも3年も続くなんて当初は想像もしていなかったですよ。「1年ぐらいで終わるんじゃない?」みたいなね。そんななか、最初の1年の様子を見ているとあることに気がついたんです。それまでは繁華街の飲食ビルに入っている居酒屋チェーンが重要だったんです。でも、コロナのせいで大手町も新橋もスカスカで、どこが忙しいのか探すと、赤羽とか都心から少し離れた街にある“親父の顔が見える”個人店。なぜかというと、顔を知っているので、ついつい行っちゃうんですよね。そして、コロナの影響が1年続いた時点で、何か手を打たないといけないと考えたとき、宅配倍増計画を推し進めました。我々の売り上げは、飲食店、来店、宅配がそれぞれ3分の1ずつ。そのうち、飲食店が消えちゃったんですよね。だったら「宅配を倍にすればいい」という感じで、お笑いコンビのバナナマンに出演していただきCMを打ちました。

コロナ禍に打ったCMでお笑い芸人のバナナマンを起用し、新規会員数を40%増やすことに成功した【撮影=オオノマコト】

バナナマンを起用したTVCM【画像提供=株式会社カクヤスグループ】


ーーピンク色の部屋で「お酒がない!」って日村さんが慌てているCMですね。
【佐藤順一】そうです。いろいろな対策を打ちながら作り、倍までは届かなかったですが新規会員数が40%くらい増えたんですね。成功か失敗かといえば成功はしました。ただ、まだ配送の55%分が残っていますが、もし飲食店のお届けが復活したら、運べなくなってしまうのが目に見えていました。そこでコロナ禍の2、3年目は、業務用専門の即配物流網を作って、そこから飲食店の当日配送に対応できるようにしました。つまり、それまで大型のルート配送と宅配網という二層物流でしたが、その間に即配物流網を設けることで、三層物流網を作り込みました。今、大手居酒屋チェーンはコロナ禍前の70%くらい。でも個人店はコロナ禍前より10%くらい増えています。配送件数は全体で20%くらい増えているので、サテライトを増やしていなければ完全に運べませんでした。結果、莫大な費用がかかりましたが、増やして正解だったなと思っています。

迷う前にやってみることが大切。失敗の中から小さな成功を見つけて次へ続ける

「これやったらうれしいよね」とお客さんの立場で物事を決めていると語る佐藤会長【撮影=オオノマコト】

ーー局面局面での判断が運命を決めていますが、迷った際はどうされているのでしょうか?
【佐藤順一】よくいろいろな方に聞かれるんですが、迷って手を打たなかったら、逆にそっちのほうがヤバかったですよね。例えば飲食店からの需要が戻ったのに運べないとか。「カクヤスは全然届けてくれないじゃないか」みたいな話になっていって、お客さんがどんどん離れていくということは起こり得るので。そこは、確実に手を打っておかなきゃいけない。やっぱり最初の意思決定は、どちらかというと、もう嗅覚とカンでいくしかないんですよね。「これやったらうれしいよね。絶対」みたいな感じで。失敗したら止めればいいと。うまくいったら、成功した理由を数字で検証する。そうすると、ちょっと安心するんですよね。これの繰り返しです。

ーーそういう仕事のスタイルは、営業されていたときの経験が役立っているのでしょうか?
【佐藤順一】もともとそういう脳なのかもしれないですね。やっぱりその最初から理詰めで考えるとサービスとしてつまらないものになるじゃないですか。自分の都合を優先していくので。だから、最初はお客様の立場に立ってサービスをリリースする。例えば、配送エリアが狭かったり、時間がシビアだと入口の敷居が高くなる。するとお客様は敷居をまたいで入ってこなくなりますよね。でも敷居を取っ払ってバリアフリーにすれば、いっぱい入ってくるわけです。入ってきた注文をどう捌くかは、その後の知恵じゃないですか。入ってこなかったら何も生まれないので。こうやっていかないと、新しいサービスも生まれないんですね。だから常に相手の立場に立って考えて、「こんなの割に合うわけないじゃん」っていうようなものでも、まずやってみることが大切。やった結果、失敗だったとしても「この部分はうまくいったね」っていう部分もあるんです。そこをもうちょっと磨いて、最後にそれが機能するように工夫しています。

ーーそうやって宅配の先駆けとなるシステムを作っていかれたわけですね。
【佐藤順一】はい。それもね、いまだに進化しているんです。今までは、お店の配送エリアが決まっていたんです。例えば、A店とB店があって、A店だけめちゃくちゃ忙しくてB店は暇。このままB店に注文が入らずA店だけに注文が入ると、A店だけがパニックになるじゃないですか。だから、配送エリアの概念を全部取っ払って、A店が忙しくなったら、B店が代わりに配送するんです。そういう仕組みに今変えようとしています。そうすると、23区全体が今のインフラでどう解決するかという話になるので、ここでまた飛躍的に配送効率が上がってくると考えています。

ーー店舗同士がお互いに助け合うんですね。
【佐藤順一】そんな感じです。常にそういうことをやりながら、ITも多少導入してお届けを進化させているのが今ですよね。ですから三位一体型から飲食店の業務がなくなって、それをサテライトの即配網が担うようになった。でも結局店舗は55%余っているわけじゃないですか。この余っている部分で一生懸命お酒をやろうと思っても、お酒に関してはこれ以上難しそう。すると、「酒以外をどんどん充実させなきゃダメだよね」という発想に切り替えて、ペットフードや日用雑貨を扱ったりするようになりました。お酒の物流って、10時から12時までが忙しいんですよ。でも12時を過ぎるとパタッと暇になるんですね。それで夕方17時ごろから注文が増えるんです。だから、お酒以外をやるとして酒と親和性の高い食材を扱うと、お酒のピークと需要が重なるじゃないですか。するともっと人も車も必要になる。だったら12時から16時で運べるものって何だろう?と考えた結果、ペットフードだったんですね。それなら追加の投資も必要ないので、今の仕組みの中でシフトを組み直せば回せるようになるんです。そうすることで、物流効率を上げることを考えています。

日本酒やビール、ワインなど各種お酒が充実しているカクヤス王子店の店内【撮影=オオノマコト】


ーーその需要はいかがですか?
【佐藤順一】まだ始めて日が浅いので、ものすごくいっぱい売れてるわけではないけれども、確実に売れますよね。でも、ここは爆発的に売れなくていいんですよ。ちょっとずつ売れるものを12時から16時の間に挟んでいって、埋めていけばいいんです。もうコロナもだいぶ収束してきて会社も黒字体質になってきましたから、そこを何も焦ってやる必要はないんです。ただし、ご家庭で本当に必要とされているようなモノがあれば、それを手掛けていこうと、アンテナを張っています。

ーー確かに家庭内にストックするとかさばる日用品を、必要な当日に届けてもらえるのは便利ですよね。
【佐藤順一】たまたま猫を飼っている知り合いがいて、「猫砂が当日に届くって夢みたい」と言っていました。ネット通販でも中4日かかるらしいですよ。だからそういうのも、お客さんの要望としてあるものはやっていく。あと今後は店のキャパの問題が出てくるから、大きな物流センターにそういったかさばる商品を全部ストックするようにしています。通過型物流といって、すべての注文データをマザーセンターに飛ぶようにして、マザーセンターから店舗まで届けて、そこから配送する。これは翌日配送になりますが、通過型でやると在庫をかかえる必要がなくなります。この商品群は翌日配送ですよっていう形になりますが、場合によってはネット通販よりはずっと早く届けられます。こうすることで、取り扱うジャンルもどんどん増えますね。だからたぶん『なんでも酒や』じゃなくて、『なんでもお届けや』になる。

【佐藤順一】結局、お酒のマーケットだけに固執していると、マーケットが縮小しているからどこかで底が来るじゃないですか。そうすると“お酒専門”から“お酒もやっている”に転身していかなきゃなんないですよね。あと、商品を自社で運んでいるので、コミュニケーションは強いんですよね。よく耳にするのですが、ウチの配達のスタッフがお年玉をいただいているそうなんです。

ーーお届け先のお爺ちゃんお婆ちゃんからですか?
【佐藤順一】そう。そういう付き合いができているって、すごいことですよね。やっぱりビールを玄関先に置こうとすると、重いから「ちょっと台所まで持ってきて」って、声をかけられるそうです。それで冷蔵庫の横に置いてあげるとかね。それってある意味、ネット通販より深くまで入り込んでいますよね。この付き合いが、これから我々の財産になってくる。本当の意味でラストワンマイルになれるってことじゃないでしょうか。

ーー人間関係が希薄な今のご時世ですから、御用聞きのような原点回帰のコミュニケーションも必要かもしれませんね。
【佐藤順一】先日、アパレル会社の社長さんと食事をしたのですが、「佐藤さんはどういう意図で今の物流を作り込んでいったの?」って聞かれました。それで今のような話を伝えると、「一緒に何かできないかね?大手配送会社に頼むよりもいいかもね」って言っていたんです。そして、「何で飯行こうと思ったの?」って聞くと、大手配送会社の役員と会ったときに、『実は我々がやりたかったのは、あのカクヤスのお届けなんだ。でも悔しいけどできない』って言われたんですって。それで、「それをやっているカクヤスって何なんだ?」って興味が湧いたらしいんです。

ーーもしかしたら、違うジャンルの会社と手を組んでやることも?
【佐藤順一】やるかもしれないですよね。リクエストは結構ありますよ。

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