タイ進出から10周年!味噌は現地の人にどう受け入れられているのか!?タイで人々の心をつかむマルコメの戦略とは?

東京ウォーカー(全国版)

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味噌業界で国内NO.1シェアを誇るマルコメ株式会社。これまで「だし入りみそ」「液みそ」など、ほかとは一線を画す商品づくりが注目されてきた。最近では、味噌の原材料である米糀や大豆に着目した「プラス糀シリーズ」「ダイズラボシリーズ」なども話題に。また、アメリカや韓国、タイなどに現地法人を構え、海外の売り上げも右肩上がりとなっている。

そんなマルコメ株式会社は、2018年に子会社となる味噌の専門店「蔵乃屋株式会社」を開業。現在、日本では豊洲市場本店と三重県のVISON店の2店舗とECサイトを展開しているが、2022年12月には3店舗目かつ海外では初店舗をタイ・バンコクのショッピングモール「Central World(セントラルワールド)」にオープンした。量り売りの味噌店「蔵乃屋」のタイでの展開について、また、2013年のマルコメタイランド設立からちょうど10年という節目を迎える同社について、マルコメタイランド代表取締役社長の山本佳寛さんに話を伺った。

マルコメタイランド代表取締役社長の山本佳寛さん【写真提供】Marukome (Thailand) Co., Ltd.

ーーマルコメタイランドは今年で10周年ですが、そもそもなぜタイに現地法人を作ろうと思ったのでしょうか?
【山本佳寛】一般的にタイは立地、市場ともにASEANの中心として最適な国といわれています。マルコメとしても1980年代から商社経由でタイにも販売していて、特に飲食店でのシェアを拡大し続けていました。タイは親日国としても知られており、今後市場として魅力があると判断し現地法人を設立しました。

ーータイには日本人が多く住んでいますが、それもきっかけとなったのでしょうか?
【山本佳寛】日本人が多くいるということは、タイの人が日本食に触れる機会が多くなるという点では大事なことだと思いますが、それよりも「現地の方にどれだけ手に取っていただけるか」というのが一番重要だと考え、タイは伸びていく市場であると判断しました。

【山本佳寛】なので日本人の数というよりは、日本食を発信する場所、つまり日本食店の数と、受け入れ側(消費者)がどれだけ寛容性を持っているか、というところを重視しました。先述したように、タイに現地法人を設立した際には既に自社製品がタイで流通している状況でしたので、そういったところが「受け入れられる」素地としてあったと思います。

ーーマルコメタイランド10年の節目を迎える前の昨年12月に、満を持して「蔵乃屋」を開店されましたが、タイの人々にとって日本の食文化である“味噌”は、現在どれくらい需要があるのでしょうか?

2022年12月にバンコクのショッピングモール「Central World」にオープンした蔵乃屋【写真提供】Marukome (Thailand) Co., Ltd.

【山本佳寛】「2022年度タイ国日本食レストラン調査」(JETRO)によると、タイには5325店舗の日本食料理店があり、そのうち2394店舗がバンコク都にあります。10年前の2012年は1676店舗でしたから、この10年間で3倍以上も店舗数が増えたことになります。このデータから、外国人や一部の富裕層だけでなく、タイでは一般の方々にも日本食が身近になってきたということがわかります。

【山本佳寛】実際、バンコクの街中には日本食レストランが溢れています。ショッピングモールに入っても必ず日本食レストランがあり、最近では日本の大手回転寿司チェーンも進出しており、タイ人にとって日本食は身近な選択肢のひとつになっています。それらの日本食レストランで必ず提供されているのが「味噌汁」です。最近では味噌を使用したメニューも豊富になってきており、味噌もタイ人にとって身近な調味料になりつつあります。

ーー一般家庭でも、味噌の需要は増加しているのでしょうか?
【山本佳寛】家庭で生味噌を使用して料理を作る人はまだ多くはありませんが、タイではキッチンのないアパートに住んでいる方も多いため、お湯を入れるだけで簡単に調理できるインスタント味噌汁が人気です。

【山本佳寛】日本人が行くようなスーパーではなく、現地のタイの方々が利用するスーパーでのインスタント味噌汁の売り上げが急激に伸びていることから、家庭内での需要が増えてきていると実感しています。コロナ禍でインスタント味噌汁の需要は高まっていたのですが、タイではコロナ禍が明けて1年ほど経った今でも、売り上げが伸び続けています。こういったことから、タイの家庭で普通に味噌汁を飲む状況になってきているのではと考えています。

ーー「蔵乃屋」の量り売り味噌のお値段はおいくらですか?

画一的な市販品ではない、「量り売り」という販売形態も現地の“本物志向”の高所得層に人気の秘密【写真提供】Marukome (Thailand) Co., Ltd.

【山本佳寛】全品、100g100バーツ、日本円だと389円くらいになります(2023年2月22日レート換算)。

ーー「100g100バーツ」というのは、レストランや業者ではない、一般のお客様にとって高くはないのでしょうか?
【山本佳寛】スーパーの店頭に並んでいる味噌の価格と比べると、約10倍ほど高いです。ただ、同店のターゲットは高所得者層なので、その方々にとってはそれほど高い価格設定ではありません。バンコクで働いている中間層はランチを屋台で50バーツ、コーヒーを50バーツ程度で生活しています。スターバックスでコーヒーを購入した場合100バーツ以上しますが、何回かに1回はスタバのような高級店で購入する傾向があります。この「100バーツ」という価格設定が「高そうで安い、手に届く」という贅沢感を出していると思います。

ーー「高そうで安い」という絶妙な価格設定ということですが、蔵乃屋の味噌を購入しているお客様は、どのような点に魅力を感じていると思われますか?

蔵乃屋のスタッフは、お客様にヒアリングし、ニーズや好みに合った味噌や使い方を提案してくれる【写真提供】Marukome (Thailand) Co., Ltd.

【山本佳寛】一番は「本物」というところだと思います。スーパーで売られているものは「大量に作られたもののひとつ」というイメージがあると思いますが、蔵乃屋では「量り売り」という売り方をしているので、その点で価値がプラスされていると思っています。また、店頭で少しでも興味を持っていただければ、スタッフからすべての商品についてご説明していますので、さまざまなアドバイスを受けて、お客様に「もっといいものを食べてみようかな」という意識を持っていただけているのではないかと。

【山本佳寛】それから、説明を聞くだけでなく視覚でも理解していただけるよう、店頭ではそれぞれの味噌を使った料理の写真も設置しています。それらをスマートフォンで撮影して、帰ってから購入を考える方もいらっしゃるので、そういった視覚的なアイテムも役立っていると思います。

ーー日本の蔵乃屋では豊富な種類の味噌がありますが、「タイランド店」では現在6種を販売しているとのこと。この「6種」は、現地の方の好みなどを踏まえて選ばれたのでしょうか?

店頭では6種の味噌を販売しながら、現地の好みのリサーチも行う【写真提供】Marukome (Thailand) Co., Ltd.

【山本佳寛】現在は、特徴のある6種の味噌を選んで販売しています。定番の米味噌、麦味噌、豆味噌に加え、料亭で使われているような白味噌、(日本では地理的に離れている)北海道味噌、米麹の割合が高い24割麹味噌(大豆に対して麴を2.4倍使用した味噌)をラインナップし、逆に現地の方の好みをリサーチしている状況です。日本とほぼ同じ傾向が出ており、甘味が強い24割麹味噌が一番人気ですね。

ーー蔵乃屋で買われた味噌は、やはり味噌汁に使われるお客様が多いのでしょうか?
【山本佳寛】店頭では味噌汁をおすすめしているので、まず味噌汁に使用される方が多いと思います。最近ですと、飲食店の方も来店されており、味噌をどのようにアレンジすればいいかなどをアドバイスさせていただくこともありますし、ラーメン用の味噌として複数種ブレンドして使っていただいているケースもあります。

タイ・バンコクを中心に味噌が現地の人にとって身近な存在となりつつある。その魅力をさらに伝える発信源になっている「蔵乃屋タイランド店」。同店について山本社長は「タイのみならず発酵文化圏である東南アジア各国へ味噌を発信できる拠点にしたい」とも語っていたが、東南アジアで味噌が愛される日は、そう遠くないかもしれない。

この記事のひときわ #やくにたつ
・ターゲット層が価値を感じられる価格設定や販売方法が大事
・店舗販売では「売る」だけでなくリサーチの視点も
・価値を感じてもらえるアドバイスや提案をすることが購入や信頼につながる

取材・文=矢野 凪紗

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