話題のChatGPTで法律相談がより簡単に⁉︎新技術を活用する弁護士ドットコムが目指す未来

東京ウォーカー(全国版)

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“専門家を、もっと身近に。”という企業理念のもと、法律相談や弁護士検索を無料で利用することができるポータルサイト「弁護士ドットコム」を運営する弁護士ドットコム株式会社が2023年5月中旬、話題のChatGPTを活用した無料法律相談サービスを開始するという。同社は今年2月に、新しいテクノロジーのサービス活用・研究を加速し専門家領域のDXを推進するためのProfessional Tech Lab(プロフェッショナル・テック・ラボ)を創設。弁護士ドットコムがさまざまな新技術を積極的に取り入れる理由を、執行役員技術戦略室長兼Professional Tech Lab所長の市橋立(いちはし・りつ)さんに聞いた。

今回お話を聞いた弁護士ドットコム株式会社 執行役員の市橋立さん【撮影=三佐和隆士】


ChatGPTを活用し、“二割司法”の解決に挑む

【写真】ChatGPTを活用した無料法律相談サービスを開発。「“知識の非対称性”という課題を補い、法律相談の敷居を下げることが目的」【撮影=三佐和隆士】


――ChatGPTを使った法律相談サイトについて教えてください。どのようなサービスなのでしょうか?
【市橋立】現在、我々が運営するポータルサイト「弁護士ドットコム」内で「みんなの法律相談」というサービスを提供していて、これは依頼者の質問に対しWeb上で弁護士が回答する公開型Q&Aサービスです。月に1万件ほど利用されているサービスですが、課題もあります。そのひとつが“知識の非対称性”です。具体的にどういうことかというと、依頼者にとって法律相談は一生に一度するかしないかというものでもあり、相談相手である弁護士との法律に関する知識や情報の差がどうしても大きくなります。そのため、相談内容の書き方がわからないということが多いのです。そうすると法的には関係のないことを書きすぎてしまったり、逆に重要な部分が抜けてしまったりします。もうひとつの課題は応答までの時間で、質問から1日経てばほぼ回答はついているものの、相談する側からすれば1分1秒でも早く回答が欲しい状況です。

【市橋立】そういった課題を補い、より法律相談の敷居を下げて裾野を広げるという目的で、チャット法律相談の開発を進めています。具体的な機能としては、チャット形式で自分の状況について書き込むと「法律的にはこのようなステップがありますよ」「一般的にはこのくらいの相場です」といったことを教えてくれます。ただ、当然ChatGPTが裁判を起こすことはできないので、「より具体的なことは弁護士に相談してみてください」という形で、必要があれば弁護士につなげるというのがサービスの流れです。

――確かに、当たり前ですが質問する側と受ける側の知識の差は大きいですよね。
【市橋立】日本では“二割司法”という問題があり、法律トラブルに遭われた人のうち2割しか満足な司法サービスを受けられていないのです。トラブルがあった際に、弁護士に相談すれば解決するというところに考えがいたらない、あるいは経済的余裕がない人は弁護士に依頼できない。そのため8割の人は、泣き寝入りしてしまったり、法的には受け取れるはずだったお金などの補償を受けられなかったり、損をしてしまっているのが現状です。この問題を解決したいと思っており、今回のChatGPT活用もその取り組みのひとつです。

誰でも使いやすいチャット形式、「AI技術の転換点」

「AI技術活用の構想自体は2016年ごろからあった」と語る市橋さん【撮影=三佐和隆士】


――「Professional Tech Lab(プロフェッショナル・テック・ラボ)」創設の背景と概要を教えてください。
【市橋立】創設の背景としてはやはりChatGPTの登場が非常に大きくて、技術自体ももちろんすごいのですが、実はそれを一般の方々が使って活用事例をSNSで投稿し始めたということが特筆すべき点だと思っています。それまでもいわゆるAIと呼ばれるようなモデルはありましたが、機械学習の知識を持っている人やエンジニアじゃないとなかなか活用が難しかった。それが一般の方でも使える、質問や相談をチャット形式でできるインターフェイスというのがかなり画期的なことだと思います。さらに、AI技術というのはこれからどんどん広く使われていくようになる転換点だというのを非常に感じました。

【市橋立】ラボを立ち上げた理由で言うと、実はChatGPTが出てきたから検討したというより、それ以前からAIの技術にはかなり着目していたんです。一番古いところだと2016年ごろにIBM Watson(ワトソン)(※1)が米国のテレビ・クイズ番組「Jeopardy!(ジョパディ!)」でチャンピオンに圧勝したというニュースがあり、そのWatsonをまさに今回と同じような「みんなの法律相談」に活用してもっとよくできないかを検討していました。実際ソフトバンクが主催するハッカソンで優勝もしたのですが、当時は技術的に制限があったため実用にはいたりませんでした。そのような経緯もあり、今回、ChatGPTが登場し「活用したらいろいろなことができるぞ」というところでラボを立ち上げることになりました。

――大きな課題解決のひとつの手段として、AI技術の活用という構想自体は以前からあったということですね。チームには技術領域の方々も多いのでしょうか?
【市橋立】そうですね。エンジニア、デザイナーといったメンバーはもちろん、プロジェクトやプロダクトのマネジメントは弁護士資格を有する方が参加してプロジェクトを進めています。

――現状、ChatGPTのほかに活用を検討している技術はありますか?
【市橋立】いま一番注力しているのはやはり、ChatGPTに代表されるような大規模言語モデル(LLM)です。我々は“専門家を、もっと身近に。”という企業理念のもと、専門家領域である弁護士や税理士といった領域でいろいろサービスを提供していますが、専門家というのは非常に大量の情報を扱います。それをコンピューターで処理するというのはこれまでなかなか難しかったのですが、今回ChatGPTのような大規模言語モデルが進化していくことによって、文章の意味・内容といったところも咀嚼したうえで、いろいろな機能を実現できるようになりました。

【市橋立】一応それ以外にも今後大きな影響を与える技術として、いわゆるWeb3.0(ウェブスリー)も視野に入れています。Web3.0自体まだ定義がフワッとしていたりするので、まだまだ5年、10年先の社会実装だと見ているところではあるのですが、もし普及してきたときには非常に大きなインパクトがあるため目を配っています。

――Web3.0やブロックチェーン、暗号資産などの新しい技術やサービスに対する法整備はまだまだこれからという印象を受けますが、そちらも同時に進化していくものなのでしょうか?
【市橋立】日本はわりと暗号資産については世界でも先進的な対応をとっているというのはありますが、やはり法整備というのは何か問題が起きてから改正されることのほうが多いのでこれからだと思っています。

AI導入が弁護士業界にもたらす変化とは?

「AIは弁護士の生産性や質を上げるためのツールであり、共存共栄していくのだと考えます」【撮影=三佐和隆士】


――新技術に期待することや、弁護士業界が今後どのように変化していくと思うか、考えをお聞かせください。
【市橋立】新技術ですと、やはり大規模言語モデルの進化というのが非常に目を離せないと思っており、スケール則みたいに言われることもあるのですが、大規模言語モデルの規模を大きくして学習データも増やしていけばどんどん精度が上がるというのはわかっていて、そうすると資本の競争になるので各社いろいろと取り組んでいるわけです。逆に言うと、そうしたなかで精度が上がったものを我々がどうサービスに取り入れるかというところになってくるので、世界中の企業が競争して進化させていっているものをうまく取り入れていきたいと思っています。

【市橋立】また弁護士業界が今後どうなっていくかと言うと、センセーショナルな言い方をする人だと「弁護士がAIに取って代わられる」といった言葉を耳にすることもありますが、我々としてはそのようには考えておらず、弁護士とAIは共存共栄していくと考えています。いまのAI技術はデータから学習していますが、その限界としてデータにないものは対応できないという点もあります。新しい法律なり、新しい裁判でのアプローチなどが出てきたときに対応できないので人間が対応していくところはありますし、現状やはり大規模言語モデルのハルシネーション(※2)という嘘や間違った情報が出されることもあり、技術的に抑える工夫はされているのですが、やはりチャットだけというよりは人間がちゃんと確認したうえでの回答が必要になってきます。そこは棲み分けして使用し、どちらかといえば弁護士の生産性をAIにより上げていくことで、より依頼者にちゃんと向き合う時間が増えていくという形で共存共栄していくのだと考えています。

――人としてやるべき領域に専念しやすくするためのツールということですね。人によるとは思うのですが、弁護士の方々の実際の反応はいかがですか?
【市橋立】ChatGPTが出てきてから弊社の取り組みがメディアでも取り上げていただくことがあったのですが、弁護士からの反応としては「こういったものを使っていかないといけない」という、逆にちゃんと使っていけば生産性などいろいろなことが改善していくと考えている方々も多いように感じています。

――専門領域において新技術を積極的に活用するにあたり、気をつけていることや、進めていくうえで課題に感じていることはありますか?
【市橋立】やはり一番重要なのは顧客の課題解決に役立つかどうかだと考えています。いろいろな新技術が出てきていますが、「これを使ったらお客様のこういう課題を解決できる、もっとよくなる」というユースケース、使う際の視点というのは絶対外さず考える必要があります。

【市橋立】気をつけている点であり課題でもありますが、新しい技術が出てきたとき、その技術の進化のトレンドを気にかける必要があると考えています。新しい技術は使い方などがあまり定まっていない状態であることが多いのですが、技術がそのまま進化していけば解決する部分と、しない部分があると思うんです。前者に対して、頑張って自前でコストをかけてもそれはいつか技術の進化によりカバーされていくので、そこでカバーできないところに注力しなければいけない。そこの見極めには気をつけています。

プロフェッショナル・テックのリーディングカンパニーとして、弁護士ドットコムが目指す未来

「みんながハッピーになれる社会を将来的に目指していきたい」【撮影=三佐和隆士】


――新技術を活用することで、弁護士ドットコムが目指す未来について教えてください。
【市橋立】ChatGPTをはじめ大規模言語モデルを活用していくことで、弁護士をはじめとした専門家へのアクセスをより身近にしていきたいと思っています。それはもともと我々が弁護士ドットコムというサービスを開始した理由でもありますし、創業者の元榮(太一郎)としても、こんなに困っていらっしゃる方がいて、ITの技術を使えばもっと力になれるはずだという思いがあるので、ぜひ解決に向けてやっていきたいと思っています。

【市橋立】またそれを進めていくことで、個人が暮らしやすくなる、自分がしたいことをして生きていけるという未来があると思っています。我々は専門家領域で仕事をしていますが、何か困りごとがあるから専門家に相談するわけで、先ほど申し上げたとおり“知識の非対称性”を補うことで相談がスムーズになり、依頼者に寄り添う時間が増えることでより速く問題解決ができるようになると、個人がより自分のしたいことに注力できる環境が整っていくと思うので、そういった形でみんながハッピーになれる社会というのを将来的に目指していきたいと考えています。

――“知識の非対称性”を補うという部分で、相談する側も新しいものに触れていく経験則を上げていく必要は出てきますね。
【市橋立】法律のような、普段慣れない分野については我々が補う部分を作る必要はあると思うのですが、一般的にインターネットが出てきたときに必要とされた検索リテラシーと同じくらいの、ChatGPTリテラシーみたいなところは、一定の基準は求められてくると思います。

――確かに、インターネットで検索するスキルと、AIに質問するスキルというのはある意味、近しい感じがします。
【市橋立】加えて、先ほどのハルシネーションという部分にもつながりますが「検索結果のサイトが本当に信用できるか?」という部分のリテラシーも共通していて、ChatGPTの回答が正しいかどうか判断するスキルが必要になってくると思います。

――最後に、弁護士ドットコムを利用するユーザーに向けてメッセージをお願いします。
【市橋立】法的トラブルというのは一生に一度あるかないかという頻度ですので、不安や大変な思いをされていると思うのですが、そういうときに弁護士が力になれるケースは非常に多くあると思うので、ぜひ無料相談を試してほしいと思います。また、これから出るチャット法律相談もより気軽に使っていただけると思いますし、それ以外にもすでにある「みんなの法律相談」や「弁護士検索」も含めて一度使ってみていただければと思います。

※1 IBM Watson (ワトソン):IBMが誇る人工知能システム。世界中で使われているAIとして知名度が高い(AI研究所)
※2 ハルシネーション(Hallucination):AIが生成する情報や文章が実際の事実や知識とは異なる架空の内容になってしまうこと(IT navi)

この記事のひときわ #やくにたつ
・AIは課題解決のための手段のひとつ
・新しい技術やサービスが顧客の課題解決に役立つかという視点で考える
・技術の進化の過程で解決されない部分を見極めて注力することが重要

取材=浅野祐介、文=山本晴菜、撮影=三佐和隆士

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