駄菓子の定番ヤングドーナツが発売から35年。物価高騰でも「小さな積み重ね」で味と価格を守る

東京ウォーカー(全国版)

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飽きの来ない素朴な味わいで、子どもはもちろん大人にもファンが多い駄菓子の定番商品「ヤングドーナツ」が、2023年に発売から35年目を迎えた。製造するのは岐阜県にある宮田製菓株式会社。製造部部長の渡邊孝義さんに、原料のこだわりや、物価が高騰するなかでも4個入り48円という手頃な価格で販売を続ける理由を聞いた。

「ヤングドーナツ」35周年パッケージ

子ども向け、購入しやすい価格でヒット

宮田製菓はキャラメルを製造する個人商店として1950年に創業。その後、キャラメルの競合が増えたため、新たに発売したのがドーナツだった。最初は「あんドーナツ」、次におやつとして食べられる一口サイズの「ハニードーナツ」を大袋に入れて販売した。

渡邉さんは「当時は、なかなかヒット商品に恵まれなかったようです。そこで、味の評判がよかったハニードーナツをトレイに入れて、お子様でも購入しやすい価格で販売したのがヤングドーナツです」と話す。子ども向けだから「ヤングドーナツ」と名づけて販売したところヒット。同社の看板商品となった。

昔から変わらないというイメージだが、実は2011年に改良をしている。それまでは使用していなかった牛乳を使用し、しっとりした食感に仕上げた

物価高騰でも原料の質は落とさない

発売当時は1袋30円。その後2008年に40円、2022年に48円に値上げした。子ども向けというコンセプトを守るため、可能な限り値上げしないよう努力をしてきたという。

そのため、将来にわたって、より低コストで製造できるよう、製造ラインをロボット化している。「駄菓子という低価格な商品だからこそ、資材を含めた原料コストについても、小さな改善を積み重ねてきました。また、お取引のある業者様のご協力を得ながら、コストを抑えられるよう努力してきました」と渡邊さん。

1日の製造量は平均8万パック。春の行楽シーズンは注文が増え、10万パック以上製造する日もあるという

一方で、譲れないのは原料へのこだわりだ。使用する牛乳は北海道産だけ。昨今は卵の供給不足が深刻化しているが、地元の鶏卵メーカーの協力で、新鮮な卵を毎日仕入れている。「物価が高騰しているからといって、安い原料を使うつもりはありません。原料価格を抑えると、味を落とすことになるからです」

他社とのコラボやグッズ制作でさらなる知名度アップを目指す

サンリオのキャラクターとイメージキャラクター「ヤングくん」がコラボしたパッケージ

近年は、コラボも積極的に行っている。2017年にパインアメとコラボして「パインアメヤングドーナツ」を発売。プロ野球・中日ドラゴンズのマスコット・ドアラやチロルチョコ、VTuberの夏色まつりなど、さまざまな企業やキャラクターとコラボを行った。

最近はフジパンとコラボした「ヤングドーナツ大きくしてみました‼︎」が話題に。ネット上では「子どものころの夢が叶う」「贅沢な気分」といった声が上がった。

「ヤングくん」はもともと公式サイトに登場していたキャラクター。30周年記念パッケージに採用されてイメージキャラクターとして定着した

渡邊さんは「最近はコラボ商品だけではなく、クッションやスマホリング、マグカップなどのグッズも制作しました。そうしたグッズなどを通して、より多くの方に『ヤングドーナツ』と『ヤングくん』を知っていただけたのではないでしょうか。でも、ヤングドーナツと宮田製菓が結びつかないという方は、実は地元でもけっこういらっしゃるんです。今後は宮田製菓の知名度も上げていきたい」と話した。

この記事のひときわ #やくにたつ
・ターゲット層の設定がヒットにつながる
・コンセプトを守り続けることが長く愛される秘訣

取材・文=伊藤めぐみ

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