「冷やし中華はいつから始める?」注目を集める気象データの活用法。天気×ビジネスの可能性とは

東京ウォーカー(全国版)

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スマホで調べれば10分後の雨雲の動きも、2週間後の天気予報も確認できる。気象予測の精度はこの15年で約30%も向上しているという。気象データが活用されるのは天気予報や防災だけではない。人々の行動と密接に関わる天気を、広告や販促に活用する企業が徐々に増えている。一般財団法人日本気象協会の社会・防災事業部の大森明子さんと、メディア・コンシューマ事業部の増田あやめさんに、拡大する気象ビジネスや、デジタルマーケティングにおいて気象予測への注目が高まる理由を聞いた。

日本気象協会コンシューマー事業課tenki.jpグループの増田あやめさん(写真左)と気象デジタルサービス課技師の大森明子さん(同右)【撮影=三佐和隆士】


気象データでビジネスをサポート。気象コンサルティングとは?

――気象ビジネスの市場規模、業界の現状について教えてください。
【大森明子】帝国データバンクの調査によると、2020年度の気象・波浪市場は約366億円。気象業界は長年横ばいという感じでしたが、気象災害が年々深刻化し、官民からの需要が増加しているのを背景に、2018年度以降は3期連続でプラス成長しています。2023年現在ではもう少し伸びているという実感があります。

【大森明子】また、気象衛星「ひまわり」やスーパーコンピューターの機能向上によって気象の予測精度が年々上がり、積極的に活用しようとする企業が増えてきました。日本気象協会でも、今までは自治体や道路会社、ダム会社といったインフラ系企業がお客様に多かったのですが、民間企業での気象コンサルティングの仕事も増えつつあります。

日本気象協会は1950年に気象協会として発足。気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行ってきた【撮影=三佐和隆士】

――気象コンサルティングとは、どのような事業活動なのでしょうか。
【大森明子】弊社の事業は「社会・防災事業」「環境・エネルギー事業」「メディア・コンシューマ事業」の三つに大きく分かれております。テレビなどでの気象解説や、オウンドメディア「tenki.jp」を運営しているのが「メディアコンシューマ事業」です。一般的に日本気象協会と聞いてイメージするのがこの事業かと思いますが、実は弊社の売り上げに占める割合が高いのは「社会・防災事業」と「環境・エネルギー事業」です。これらの事業はBtoB(企業向け取引)、BtoG(行政・自治体向け取引)のビジネスで、一般向けの天気予報よりも粒度が細かいものや、長期の予報のデータなどを提供しています。

「社会・防災事業」「環境・エネルギー事業」「メディア・コンシューマ事業」のほか、世界各国の商習慣や気候風土を考慮した気象コンサルティングなどを行う「海外事業」、防災知識の普及や学術・科学技術振興を進める「公益事業」などがある【撮影=三佐和隆士】

【大森明子】例えば「社会・防災事業」では、大雨の際にダムをどのタイミングで、どれだけ放流するのかといったコンサルティングをさせていただいています。また、「環境・エネルギー事業」では、気象を活用した電力需要予測のコンサルティングなどを行っています。今年の夏も暑くなるという予想ですが、そうなると話題になるのが省エネや節電。需要と供給の両方を正確に予測しないと、エネルギーのバランスが崩れるリスクがあります。

【大森明子】私が所属している社会・防災事業部気象デジタルサービス課は、弊社のなかでは比較的新しいチームで、民間企業との取引が増えている部署でもあります。ここ最近は暑くなってきて、冷たいものを食べたくなったといという方も多かったと思うのですが、例えば小売店であれば冷やし中華を仕入れるタイミングや数量、アイスメーカーであれば今年の夏の製造量などを、気象データをもとに最大6カ月先まで予測することができます。

デジタルマーケティングでも注目。個人情報を侵害しない気象データ

――気象データがデジタルマーケティング領域でも注目を集めているのは、どのような理由からでしょうか?
【増田あやめ】2018年に施行されたEUのGDPR(一般データ保護規則)をはじめ、個人情報保護の動きが強まっているというのが理由としてあると思います。スマートフォンではすでに2020年、2021年ごろから規制が始まり、Googleは2023年度後半にネット上の閲覧状況を追跡できる「サードパーティクッキー」の廃止を予定しています。広告単価がどんどん下がり、我々が運営しているtenki.jpでもその影響を受けているというのが現状です。しかし、気象データは個人情報を侵害しないセカンドパーティデータです。今後さらに活用が期待されるのではないでしょうか。

コロナ禍の2020年は外出自粛によりtenki.jpのPV数が下がったが、2022年の年間PVは過去最高の58億。「気象がインフラ化しているという実感がありますね」と増田さん【撮影=三佐和隆士】

――気象データは具体的にどのように活用するのでしょうか?
【増田あやめ】tenki.jpでは「天気マッチング」という天候連動型広告を販売しております。例えば、すごく冷え込むときに鍋つゆの広告を出したり、事故が起こりやすい気象条件のときにロードサービス会社がユーザーに行動変容を呼びかけたりできます。実際にtenki.jp内の広告におけるCTR(クリック率)の平均を上回るという結果が出ているので、まさに今、というタイミングで効果的に配信することができます。

――需要予測などを含め 、現在どのぐらいの企業が気象データを活用しているのでしょうか?
【大森明子】2020 年に気象庁が発表した報告書によると、産業界では6割以上の企業が、事業に気象の影響があると回答しています。そのうち、「事業実施にあたって気象情報・気象データを利活用している」と答えたのは32.5%。ただ、32.5%のうち18.9%が「経験と勘により利用している」という結果でした。気象データを収集・分析して、将来予測を事業に活用しているのは全体の約1割にとどまっております。やはり気象データをどう活用すればいいのかわからない、気象データアナリストが社内にいないので活用できないといった課題があるようです。

気象庁が育成講座を開くなど、活躍の場が広がることが期待される「気象データアナリスト」。日本気象協会のアナリストは各業界に特化した専門性を持っていることが特徴という【撮影=三佐和隆士】

――「気象データアナリスト」の育成講座なども増えていますよね。ビジネス業界ではアナリストの需要も高まっているのでしょうか。
【増田あやめ】弊社の社員の2〜3人に1人が気象予報士なのですが、アナリストははまだまだ少なく貴重な人材です。全体で見ると、かなり少数なのではないかと思います。

気象ビジネスを拡大させ、世の中全体をより良く

――気象ビジネスの拡大によって、一般消費者にはどのような影響がありますか?
【大森明子】私の部署は、需要予測によって社会の無駄をなくして、“社会の精度”を高めることを得意としています。よく聞くのは「販売機会ロスを減らしたい」という小売店の声です。暑い日に外でスポーツをしているとき、近くの自動販売機に自分が飲みたい麦茶やスポーツドリンクが軒並み売り切れていた、という経験は、みなさん少なからずあると思います。需要を読み、適切なタイミングで商品を補充することができれば、企業は販売機会を逃さずにすみ、消費者にとっては欲しい商品を欲しいときに手に入れられるというメリットがあります。

ヘアケア商品や防水グッズなど、あらゆる商品の広告が気象条件に影響されるという【撮影=三佐和隆士】

【大森明子】企業として売り上げを上げたいというご要望があるなかで、私たちは広告・販促に気象データ活用すると効果的ですというお話をさせていただいています。例えば「鍋つゆの新商品を発売しました」という広告を出すとします。暑い日だと消費者は「まだ暑いのに」と感じますが、ちょうど肌寒くなってきて、鍋を食べたいと思うころなら、「食べてみたいな」「スーパーに買いに行ってみよう」など、ワクワクした気持ちになりますよね。消費者にとってストレスのない広告・販促につながります。

――6月26日にローンチされた「ウェザーマーケティングレポート」について教えてください。
【増田あやめ】tenki.jpの天気マッチング広告は「最高気温25度以上のときに配信してほしい」など、お客様のご要望に応じて配信していましたが、想定とは異なる結果が出ることもあります。そういった課題があるなか、気象デジタルサービス課の解析技術を、広告データを扱うお客様にもより広く、有効に使っていただくために開発したのが「ウェザーマーケティングレポート」です。

「ウェザーマーケティングレポート」で分析したデータは繰り返し利用できるが、分析結果にはトレンドなども反映されるため、定期的に購入したほうがより効果的という【撮影=三佐和隆士】

【増田あやめ】お客様のお手元にある、2カ月以上1年未満の広告運用データをご提供いただき、弊社が保有する気象データによって、最も反応する気象要素や気温のしきい値などを解析。その結果を報告書として納品させていただきます。報告書は天気マッチング広告以外でご活用いただくこともできます。解析に使用するのは、一般公開されていない「人口重み付け気象データ」です。人口の多い都市に重み付けをしてならした気象データで、マーケティングで活用するうえでは、全国平均の気象データより精度が高いという見解が示されています。

【大森明子】デジタル広告であれば、14日先までの日次の天気予報でも十分にご活用いただける部分はありますが、例えば夏商材のキャンペーンを打ち出す際などは、15週先までの週次の予測を活用いただくことで、梅雨明けのタイミングによって時期を調整することができます。

「人口重み付け気象データ」の活用例。全国のアイスクリームの売上金額と週平均気温の推移(2021年7月~8月)。重み付けをしたデータは全国平均した気象データよりも全国売上との相関が高いことがわかる【画像提供=日本気象協会】

ーー気象デジタルサービス課で行っているコンサルティングを、より利用しやすくしたというイメージでしょうか?
【大森明子】そうですね。やはり大手ナショナルクライアントなどが、気象による需要予測などを積極的にご活用いただいていますが、それだけでは世の中全体を良くしていくことは難しいと考えています。ご利用いただく企業の裾野を広げたいという思いがあり、「ウェザーマーケティングレポート」はトライアルも含めてご検討いただきやすい価格に設定しました。

【大森明子】日本気象協会は、気象が好きな人間が集まる会社です。気象災害による被害をなくしたい、社会の役に立ちたいと真剣に思っています。気象データをより多くの方に活用いただくことで、社会や経済活動、人々の生活の質が向上してほしいと考え、持続可能な社会の実現を目指して日々活動しております。

この記事のひときわ #やくにたつ
・広告・販促の効果を上げるために気象データが有用である
・個人情報を侵害しない気象データは今後ますます注目が集まる
・天気×ビジネスは消費者の生活の質も向上させる

取材=池田尚浩、文=伊藤めぐみ、撮影=三佐和隆士

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