なぜ“ねぎ”がここまで有名に?生産者が語る「深谷ねぎ」の魅力と深谷市が“ねぎ推し”なワケ

東京ウォーカー(全国版)

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2024年より発行される新1万円札のモチーフになる実業家・渋沢栄一の故郷として、メディアで目にする機会が増えた埼玉県深谷市。この地には、渋沢栄一と同じく有名なものがある。それが「深谷ねぎ」だ。

ねぎ全体で見ると作付面積は茨城県坂東市に軍配が挙がるものの、深谷市はその経営体数および生産量で群を抜いている。日本屈指のブランドねぎとして広く知られており、その味は知らなくとも「名前だけは知っている」という人は多いだろう。

もっとも、「おいしい」と言ってもねぎは料理の引き立て役として扱われがち。では、なぜひとつのねぎがここまで有名になっているのだろうか。今回は、そんな「深谷ねぎ」について深谷市の担当者に話を聞き、実際に農家を訪ねてみた。

日本一のねぎ生産量を誇る、埼玉県深谷市の「深谷ねぎ」。なぜ一大ブランドに?


“脇役”でとどまらない!「深谷ねぎ」とは?

「深谷ねぎ」とは、埼玉県深谷市で生産される「根深ねぎ」の総称で、複数の品種が存在する。深谷市でねぎの栽培がスタートしたのは1800年代後期。このエリアでは藍栽培が盛んだったが、やがて衰退。次に、養蚕と併せてねぎ、やまといも、ゴボウといった野菜類の生産が始まった。

特にねぎは、利根川右岸の「北郷」と言われる沖積地帯(河川の堆積作用で形成される平野)で栽培されるようになったが、これは、水が豊かで土が硬いことがねぎの生産に適していたからだという。

やがて、この地で栽培されたねぎは「深谷ねぎ」と呼ばれるようになり、東京都を主な消費地として出荷されることに。さらに、交通網が発達すると流通量が増加。京浜エリア、東北エリア、北海道へと販路を拡大し、ねぎの一大ブランドへと成長していった。

「『深谷ねぎ』は一年中収穫されますが、収穫期によって『春ねぎ』『夏ねぎ』『秋冬ねぎ』に分類されます。薬味や鍋物、お味噌汁に欠かせないねぎですが、『深谷ねぎ』の旬は12月ごろから出荷される『秋冬ねぎ』です。寒さでねぎの糖度が増すため、甘くて柔らかいのが特徴です」

ひと口に「深谷ねぎ」といえど、複数の品種が存在するようだ


担当者がそう話すように、「深谷ねぎ」の人気の秘密はその糖度の高さ。なめらかでみずみずしい味わいにもかかわらず、「みかんにも匹敵する」というほどの糖度を含んでおり、一度口にするとほかのねぎでは満足できなくなるほどだ。

一般的にねぎは、薬味など“脇役”として扱われることが多いが、「深谷ねぎ」はそのおいしさから地元ではメイン食材として使われることが多く、「深谷ねぎ」だけを使ったかき揚げ丼を出す店や、「深谷ねぎ」をメイントッピングにしたラーメン店などもある。

実際に「深谷ねぎ」だけのかき揚げ丼を食べてみたが、弾力のある食感と甘味たっぷりの味わいから、「深谷ねぎ」だけでご飯がどんどん進む。ねぎで白米をガツガツ食べるという、これまでにないねぎの楽しみ方ができた。

【写真】地元で人気の「深谷ねぎ」だけを使ったかき揚げ丼


生産者が語る「深谷ねぎ」作りの難しさと魅力

深谷市では、親の代から引き継いだ「深谷ねぎ」の生産者も多い一方で、脱サラやセカンドキャリアとして「深谷ねぎ」生産に取り組む人もいるのだとか。担当者が紹介してくれた「深谷ねぎ」生産者の横田誠さんも、そういった「脱サラ生産者」のひとりだ。なぜ「深谷ねぎ」の生産にいたったのかを聞いてみた。

「20年ほど前に、妻の実家である深谷市の土地に家を建てたんですよ。そのそばに畑があったので、せっかくなのでそこを借りて野菜を作ろうと思ったんです。当初はキャベツ、ブロッコリー、白菜などを考えましたが、やはりねぎが一番だと思いました。ねぎは一年中作れるし、何よりこの深谷市の風土に合っている。特に冬場、霜が降りたころの『深谷ねぎ』は糖度が増しておいしいですから。それで『ねぎを作ろう』と思い立ちました」と横田さん。

「深谷ねぎ」生産者の横田誠さん


利根川流域の肥沃が育んだ「深谷ねぎ」だが、横田さんによれば、川のそばで作るがゆえの生産の難しさもあるという。

「私が『深谷ねぎ』の生産を始めたのは20年くらい前ですが、年々生産が難しくなってきていますね。地球温暖化の影響なのかどうかはわからないですが、暑い日が続くようになったことと、あとは害虫が原因です。利根川の水流に乗り、よそから害虫がくるようになってどんどん卵を産み、土の中に潜り込むようになったんです。そうすると、ねぎの根っこがすぐダメになる。これを駆除するための作業が本当に大変なんです。薬剤を使って自分のところの害虫を駆除できても、さまざまな影響により害虫が飛んでくるので、まさにイタチごっこ。その駆除の手間暇や薬品のコストなどが年々上がって、利益率は悪くなる一方です」

横田さんによれば、年々「深谷ねぎ」の生産が難しくなっているという


それでも横田さんはあきらめずに生産を続け、特に「深谷ねぎ」が最もおいしくなる冬を楽しみにしているという。

「冬場の『深谷ねぎ』は本当においしいですよ。甘さが全然違います。『深谷ねぎ』は一年中食べることができますけど、『深谷ねぎ』の本当の味は『冬ねぎ』だと思っています。また、『深谷ねぎ』は“細いもの”もいいんです。よく『太いほうがいいねぎだ』と思われがちですが、細いねぎのほうが私はおいしいと思っています。個人的には、鶏肉と細めの『深谷ねぎ』を一緒に炒めて、中華風のだしの素と醤油を回しかけて食べるのが好きです。味噌汁にももちろん合うし、焼肉にも合いますし、シーチキンと和えて食べるなんていうのもおすすめです。『深谷ねぎ』の旬の味である『冬ねぎ』を食べてもらえたらうれしいですね」

ちなみに「深谷ねぎ」の保存方法だが、新聞紙に巻いて、冷蔵庫の中や暖房があたる場所を避けて常温で保存しておけば、長く食べられるそうだ。そして「皮を剥けば最後の一枚までおいしく食べられる」とのこと。

「深谷ねぎ」の旬はやはり冬。いつもは薬味として使うねぎを主役にして食べてみよう


深谷市では、全国のブランドねぎが一堂に会するイベントの開催も決まっている。どこまでも“ねぎ推し”の深谷市で、あらゆるねぎの違いを体験してみるのもおもしろそうだ。普段何気なく口にしているねぎだからこそ、新たな発見があるかもしれない。

取材・文・撮影=松田義人(deco)

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