ヒットの理由は「0秒レモンサワー」だけじゃない。コロナ禍で急成長をとげた「ときわ亭」の戦略とは?

東京ウォーカー(全国版)

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コロナ禍が本格的に始まる少し前、2019年12月に誕生した「0秒レモンサワー(R) 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」(以下、「ときわ亭」)。「ときわ亭」ではそれぞれの卓上にサワーのサーバーがあり、その大胆なシステムやビジュアルからSNSで話題となった。

この「ときわ亭」は、もともと宮城県仙台市を拠点に展開する「ときわ亭」ブランドと、多くの飲食業のリブランディングを手掛けるGOSSO株式会社(以下、GOSSO)がパートナー契約を結び、全国展開を図って生まれたもの。しかしご存知のとおり、2020年の年明けから新型コロナウイルスの感染者数が増え、同年4月には各地に緊急事態宣言が発令。多くの飲食店は休業を余儀なくされた。

閉業に踏み切る飲食店も少なくないなか、「ときわ亭」はどういうわけかみるみる成長を続け、現在では全国各地に89店舗を展開している。「苦難を逆手に取った戦略があったのではないか」と考えられるが、実際はどうなのだろうか。今回は、その仕掛け人でGOSSOの代表取締役である藤田建さんに話を聞いた。

コロナ禍の厳しさのなかで急成長!“レモンサワー×焼肉”で勝負する「ときわ亭」


「いい料理といい接客で客が来る時代は終わった」

本題に入る前に、まず藤田さんの経歴から紹介したい。藤田さんはアメリカ出身で、3歳のときに日本に来て、千葉県船橋市で少年時代を過ごした。そして、大学入学後にアルバイトとして入ったのが新宿・歌舞伎町にある飲食店や、居酒屋の「いろはにほへと」。これが、藤田さんが飲食業に関わった初めての経験だったというが、そのときに「飲食って、みんなに喜んでもらえる素晴らしい職業だな」と実感したという。

藤田さんは飲食店でアルバイトをする傍らモデル業も並行して行い、また、大学卒業後はITが注目された時代だったため、ウェブコンテンツのディレクション業に従事。しかし、同時期に「僕が本当にやりたいことは何だろうか」と自問自答し、そのときに思い出したのが、飲食店でのアルバイトの思い出だったそうだ。藤田さんはこう振り返る。

「新宿でのアルバイトの経験は、本当に有意義なものでした。社会人になってもこの経験を忘れることができず、『楽しい空間でお客様に笑顔になってほしい』とあらためて思い、思い切って27歳で銀座にある飲食店を運営する会社に転職することにしました」

GOSSO 代表取締役の藤田建さん


その会社で飲食店の経営を学んだあと、30歳で独立。渋谷・宇田川町の交番裏にあるビルの4階に、創作居酒屋を開店させた。沖縄料理・韓国料理・和食を取り入れた、いわゆる「フュージョン料理」と呼ばれるメニューを出す居酒屋で、藤田さんとしては相当なこだわりと意欲をもって開店させたそうだが、その思いと反比例するかのように、客足は伸びなかった。

「当時の飲食店は、『いい料理といい接客さえすれば、お客様は絶対に来てくれる』というのが定説でした。今みたいにSNSなどがない分、お客様が『自分でいい店を探す』『いいお店を知っていることに価値がある』みたいな風潮もあったと思います。そこにフォーカスしすぎてしまい、とにかくおいしい料理といい接客にこだわる一方で、“エンドユーザーにも店の存在を届ける”ということを全く考えていなかった。これが失敗した理由です。そこで考えたのは、“お客様=エンドユーザー”と考えた場合、その人たちにどういうやり方でアプローチし、どんな業態にし、届けることができるかということで、それまで考えていたこととは全く逆の考えでした。そこで店名を変え、飲み放題・食べ放題のお店に変えたところ、ドカンと当たりました」

藤田さんが見出した「100年続く飲食業」の条件とは?

藤田さんは、過去にウェブコンテンツの仕事をしていたこともあり、後におとずれる、グルメ情報をネットで知る時代にもいち早く乗ることができた。店を2店舗、3店舗と増やすことができたことに加え、「ぐるなび」では全飲食店の中でアクセス1位を獲得する店舗に成長させた。

また、これらの成功を受け、自社の飲食業の運営と並行してさまざまな事業のブランディングも行い、22ものブランドをゼロスタートで“流行る店”へと成長させた。その後、藤田さんは“流行らせるだけ”でなく、“100年続く飲食業”のブランディングを意識し始めたという。

「コロナ禍の直前まで私が注力していたのは、『駅前の空中階ビジネス』と『100年企業』でした。『駅前の空中階ビジネス』では、コロナ禍以前は広告媒体をうまく使って集客を得ることができました。でも、空中階で長く営業を続けられているのって、本当に『鳥貴族』さんくらい。『駅前の空中階で、さらに100年続けることができる業態ってなんだろう?』と考えた際、私が思い浮かんだキーワードが3つありました。ひとつは『大衆的であること』、もうひとつが『日常的なものであること』、そして『路面店であること』でした。つまり、『空中階で長く続けるのは難しい』という仮説にいたったわけですが、そこはすでに世間に浸透した、根強いブランドの名前があればクリアできるだろうと思いました。それからはゼロからのスタートではなく、たとえば地方都市で多くの店舗を展開するいいブランドでありながら、県外には知られていないお店を探すことにしました。そこで出合ったのが、仙台市の『ときわ亭』です。すでに40近くの店舗を展開するブランドで、地元で根強い人気を得ていました」

そう考えた藤田さんはさっそく「ときわ亭」にアポイントを取ったというが、素人目には、「地元でコツコツ積み上げてきたブランドの名を、突然東京からやってきた企業人にそう簡単に渡さないのでは」とも思える。しかし、「ときわ亭」の過去の経験と、藤田さんの想いが見事にマッチした。

「これは不思議な縁だったのですが、かつて『ときわ亭』は中目黒にお店を出した経験があったそうです。しかし、仙台市では有名でも全国では無名ということから、やむを得ず撤退したと言います。こんな経緯から、ローリスクで『ときわ亭』が全国に広まるのであれば悪い話ではない、という印象でした。また、『ときわ亭』の社長は私よりひと回り年上の方だったこともあり、M&Aで『ときわ亭』ブランドを買うということではなく、『パートナー契約』とさせていただくことでWin-Winを貫き、どちらが上でも下でもなく、お互いの夢を達成するためにタッグを組ませていただくことになりました」

そうして、2019年12月に全国版「ときわ亭」の1号店が誕生。コロナ禍の話は後述するが、同店の一番の特徴はブランド名にもある「0秒レモンサワー」だ。客がテーブルの脇にあるサーバーから自由に飲みたい量のサワーを飲むことができるというもので、店員を呼んだり、別の接客をしている店員がこちらに来ることを待つという煩わしさを一切排除した、画期的なサービスだった。

「先ほど言ったとおり、私が独立したころまでの飲食業は、言わば『いい料理だろう』『いい接客だろう』と、悪い言い方をすればお客様に“売りつけていた”感じでした。それでは100年は続けられないだろうと思い、お客様の立場に立って考え、各テーブルにサワーのサーバーを設置して提供させていただくことにしました。これはたまたまでしたが、開店当初はハイボールが流行りながらも、健康的なイメージがあることからレモンサワーも支持され始めているタイミングで。結果的に“サワー×焼肉”という業態が、多くの方から好評を得ることになりました」

「ときわ亭」では各テーブルにサーバーが設置されており、「0秒レモンサワー」を注文すれば客が自由にサワーを注ぐことができる

「0秒レモンサワー」には8種類のフレーバーシロップがあり、その中から好きな2種を選べる。さらに別売りの「サクレ レモン」を加えて楽しむアレンジ技も


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