「ボンタンアメ」誕生100周年を目前に、新事実が発覚?倒産寸前に生まれた唯一無二のお菓子が愛され続けるワケ

東京ウォーカー(全国版)

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レトロなパッケージが目をひく「ボンタンアメ」。コンビニやスーパーで見かけたことがある人や、子どものころによく食べていたという人も多いのではないだろうか。なんとなく「懐かしい」というイメージのお菓子だが、昨今のレトロブームの影響から、そのクラシカルなパッケージをモチーフにしたキーホルダーやスマートフォンのケースが販売されていたりと若い世代にも人気で、SNSではボンタンアメに関する投稿を見かけることもしばしば。

そんな同商品は、さまざまなお菓子が生まれては消えていくなかで、100年近く愛され続けているロングセラー商品。しかも、誕生からこれまで類似商品がほとんどないのだとか。

今回は、ボンタンアメの誕生秘話や唯一無二の商品であり続ける理由について、セイカ食品株式会社(以下、セイカ食品) 製菓部業務課の東龍吾さんに話を聞いた。

約100年愛され続ける「ボンタンアメ」。関東より北部になるにつれて取扱量は少なくなるが、北海道でも販売されているそうだ


まさかの事件で倒産の危機に。窮地を救った「ボンタンアメ」

現在のセイカ食品が、菓子問屋「松浦屋商店」としてスタートしたのは1903年のこと。1919年には名称を「鹿児島菓子株式会社」(以下、鹿児島菓子)に変更して菓子工場を作り、水飴の製造を行っていた。鹿児島菓子では水飴のほかにも、ボンタンの果皮を使った「ボンタン漬け」という砂糖漬けや、「朝鮮飴」と呼ばれる飴も製造していた。

菓子問屋「松浦屋商店」として創業【画像提供=セイカ食品】


「当時、経営は決して好調ではありませんでした。そこに追い打ちをかけるように、船で県外へ輸送する際にブリキ缶に穴があき、水飴が流出してしまう事件が発生してしまったこともあります。流出してしまった水飴の損害賠償金を船の会社に請求したところ、逆に甲板の清掃代を請求されてしまったり…。大量の商品がダメになってしまったうえに、おまけに清掃代まで支払わなければならない。正直、いつ倒産してもおかしくないような状況でした」

そんなときに、社員が朝鮮飴をハサミで小さく切っておやつにしているのを見た初代社長が、そのお菓子に鹿児島の特産品であるボンタンの果実の色や香りをつけてみようと思い立つ。そうして生まれたのが、今や看板商品になったボンタンアメ。実はそんな窮地の状況で生まれたお菓子だった。

ボンタンアメは、グミでもキャンディでもない、唯一無二のお菓子だ。東さんも「ジャンルを聞かれるといつも迷ってしまうんです(笑)」と話す。そして何と言っても、オブラートに包まれているのが特徴だ。

「発売当時は、キャラメルやキャンディを包むような上質な剝離紙がほとんどない時代。もちもちとした弾力が特徴のボンタンアメは、どうしても紙にくっついてしまうため、オブラートを採用することになりました。その後の技術の発展により、オブラートを製造している会社は現在ほんの数えるほどになりました。それでも『オブラートに入ってこそボンタンアメ』と誇りを持っていますし、唯一無二と言っていただける理由でもあります」

「ボンタンアメ」発売当初のパッケージ【画像提供=セイカ食品】

菓子用ロールオブラートを使って自動包装している【画像提供=セイカ食品】


また、ボンタンアメの販売方針にも思いがあるそうで、鹿児島県と宮崎県ではテレビCMを流してはいるものの、全国的には放映されていないという。あえて鹿児島県と宮崎県内に限定しているそうだが、その理由とは?

「たとえば、国民的アニメっていつも見ているわけでないけれど、時々見ると懐かしくなりますよね。ボンタンアメも、時々見かけると懐かしくなって、手を伸ばしたくなる。そんな末長く愛してもらえる商品を目指しているんです」

「地道に真面目に」と考え、大々的な広告は行っていない


100周年を目前に、新事実発覚!今後は海外進出を積極的に

今では女子中高生の購入者も増加しているとのことで、世代を超えて愛されているボンタンアメ。そして本来なら2024年に誕生100周年を迎えるはずだったが、実は約100年越しにある新事実が発覚したという。

「1945年の鹿児島大空襲などの影響で、弊社の多くの資料が焼失してしまいました。100周年を迎えるにあたり、ボンタンアメの発売について徹底的に調査を行い、確証を得られる記録を探した結果、発売年を1年ずらすことが適正と判断いたしました。その後、販売開始年を“1924年”から“1925年”にすることを、公式サイトで発表しました」

長い歴史があるからこその事件と言えるが、ボンタンアメのパッケージデザインは発売当初からほとんど変わっていないそう。一度、パッケージを変更する案が浮上したこともあったそうだが、ある高名なデザイナーに相談したところ「絶対に変えるべきではない」とアドバイスを受けて、継続することになったのだとか。

今も昔も変わらないロゴが特徴的だ【画像提供=セイカ食品】

会社のピンチを救ったボンタンアメだからこそ、変わらないデザインにこだわっているそう【画像提供=セイカ食品】


「前身の松浦屋商店が創業して120年目を迎えた際は、たくさんの応援コメントをいただきました。『次の世代にもつなげていってほしい』という声だったり、若い世代の方からも『大好きです』『この味をずっと守ってください』といった声をいただきました。そのとき、『世代を超えて支持していただいているんだな』と実感しましたね」

「今後は海外への進出にも力を入れていきたい」と話す東さん。すでに海外で販売されているが、困難なことも多いようで、「もちもちした食感のキャンディが珍しかったり、なじみのないオブラートというものが理解されない部分もあります」と語る。

一方で、「ゼロからスタートできる海外には、多くの将来性があるのではと考えているんです」と期待を込める。どん底から誕生した奇跡のロングセラー商品は、あらゆる困難もプラスに捉えて、これからも成長し続けていくだろう。

取材=西脇章太(にげば企画)
文=永田奏歩(にげば企画)

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