「パサパサしておいしくない」というバームクーヘンのイメージを払拭!滋賀県発「クラブハリエ」の戦略とは?
東京ウォーカー(全国版)
進学や結婚、手土産と、さまざまな場面で贈り物として登場するバームクーヘン。特に関西圏の人にとっては「クラブハリエのバームクーヘン」が定番ではないだろうか。
滋賀県発祥のクラブハリエのバームクーヘンは全国的に愛されており、2023年で誕生50周年を迎えた。さらに、近年クラブハリエではバレンタインのイベントにも力を入れており、バームクーヘン以外の洋菓子にも注目が集まりつつある。
今回は、株式会社クラブハリエ 広報室の筧さんに、50年という長い歴史を持つクラブハリエのバームクーヘンや、2024年で誕生10周年を迎えるというバレンタイン限定の「ハートブラウニー」について話を聞いた。
当時のバームクーヘンは「おいしくないもの」だった?
もともとは、和菓子舗「たねや」の洋菓子部門としてスタートしたクラブハリエ。さまざまな洋菓子を製造するなか、1973年に京都の洋菓子店で修行を積んでいた当時の職人が「うちでもバームクーヘンを販売しよう」と提案したのが始まりだという。
当時のバームクーヘンは、“年輪”をイメージしていることから引き出物や内祝いなどでもらうもので、日持ちさせるために水分量が少なく、「パサパサしておいしくない」というイメージが強かった。
「焼きすぎると水分が飛んでしまうので、水分量を保ちつつ生焼けにならない絶妙な焼き加減で、職人の手と目を頼りに製造しています。作り方や材料なんかは、実は50年前とほとんど変わっていないんですよ。ただ、たとえば同じ素材でも気温や温度により味や水分量が変化するので、そういう差を作らないように、保存環境は現在までに大きく進化したと思います」
バームクーヘンの製造に乗り出したクラブハリエだが、もともとあった「パサパサでおいしくない」という世間のイメージはかなり根強く、発売当初の売り上げは芳しくなかったそう。結婚式の手土産としては購入されることはあったものの、“身近なお菓子”としては浸透しづらかったようだ。
契機となったのは、1999年の阪神梅田本店への初出店。「とにかく食べてもらってイメージを変えよう」と、通りがかりの人に試食品を配ったという。また、バームクーヘンがどのように作られているのかもよく知られていない時代だったことから、店内で丸太状になっているバームクーヘンをカットするというパフォーマンスも取り入れた。こうして完成までの過程を見せることで関心も集まり、バームクーヘンのマイナスイメージを徐々に払拭していったのだとか。
阪神梅田本店での出店は、クラブハリエが全国展開するきっかけとなった出来事であり、クラブハリエのバームクーヘンの50年の歴史の中でもひと際印象に残るエピソードだったと、筧さんは振り返った。
「今ではバームクーヘンも身近なお菓子になりました。当時はマイナスイメージが先行していましたが、シンプルでクセがないお菓子なので、老若男女に食べてもらえます。しかも普通の生ケーキより日持ちするし、カットの仕方によって何人ででも食べられる。そういうメリットもあって、贈り物として定番化したんじゃないかと推測しています」
「より食べやすいように」と、2011年には「バームクーヘンmini」という手のひらサイズのバームクーヘンも登場。「通常サイズだと大きすぎて食べ切れない」という声に応えるべく作られた商品だ。個包装になっているので大勢に配りやすく、食べ切りサイズなので自分用として購入する人も多いそう。
また、クラブハリエのバームクーヘンといえば、パッケージデザインも印象的。正方形の箱は木を連想させるブラウンカラーの市松模様となっている。長年変わらずこのデザインが使われているのにも、理由があるのだとか。
「『ダミエ柄』と呼んでいるこの市松模様のデザインは、日本古来より愛用されているデザインでもあります。そのことから、『商品も長年愛されるように』という想いを込めているんです。変わったデザインにしてしまうと流行り廃りが出てしまいますから。パッケージデザインとともに、商品自体も流行り廃りのない存在になってほしいと思っています」
贈り物として購入されることが多いバームクーヘン。崩れたり傷ついたりしないよう、箱は頑丈に作られているという。そのため、地元・滋賀県では箱を小物入れとして愛用している人も。こうした使い方について、筧さんは「そのまま捨ててしまうのではなく、再利用してくださっているのを見るのはとてもうれしいですね」と語った。
フードロス問題に取り組んだ結果、思わぬヒット商品が誕生
クラブハリエに、バームクーヘンから派生した商品があるのをご存知だろうか。それが「ドライバーム」。年輪の部分に気泡が入ってしまったり、バームクーヘンのまわりにかかっているフォンダン(砂糖衣)が割れていたりと、商品として販売できないバームクーヘンができてしまっていたのがきっかけで考案された。
「以前からフードロスを減らす取り組みを行っており、『ロスになってしまうバームクーヘンを何とかできないか』と検討し続けていたんです。いろいろ試した結果、ドライバームが生まれました。想定よりもかなり好評で、逆にロスが足りなくなってしまうくらいでした(笑)」
最近では「バームクーヘンMIMI」という、いわゆる“バームクーヘンの端っこ”を販売しており、こちらも人気を集めているという。ロスが減らせるように機械も改良を続け、商品用として出荷するバームクーヘンの基準を改正したことで、ロスも減らすことができたそうだ。
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