ファミリーマートはなぜ「服」を売るのか?コンビニ業界では異例のファッションショーの開催も

東京ウォーカー(全国版)

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食料品、雑貨、日用品などの買い物はもちろん、チケットの購入や荷物の受け取りもできるようになり、近頃ますます便利になっているコンビニ。さまざまなサービスの中でも、今特に注目されているのが、大手コンビニチェーン・ファミリーマートが展開する「コンビニエンスウェア」だ。

最初は靴下や下着類から徐々に知名度を上げていたが、現在、コンビニエンスウェアの勢いは止まらず、2023年11月30日には業界初のファッションショーを開催。その革新的な取り組みが話題になっている。

今回は、株式会社ファミリーマート 商品本部 日用品・雑誌部の須貝健彦さんに、コンビニエンスウェア誕生の経緯や、ファッションショー開催の裏側について話を聞いた。

ファミリーマートのコーポレートカラーを活かしたデザインが特徴的なソックス【画像提供=ファミリーマート】


衣類部門の売り上げを伸ばすため、2021年3月に販売開始

コンビニ業界における衣料品の取り扱いは、主に雨具や急な出張時のような緊急時に対応する商品に限られており、もともと株式会社ファミリーマートも例外ではなかった。そんななか同社は、「日常生活にマッチする商品の提供」を目指し、衣料品に着目。試行錯誤しながらも、2021年3月にコンビニエンスウェアの展開を開始した。

「ブランドの長期的な成長を見据え、ファッションデザイナーの落合宏理さんをクリエイティブディレクターとして迎えました。東京五輪の開催を控えていたこともあり、まずは試験的に関西の100店舗から販売をスタートしました。そこで好評を得たので、2021年3月に全国展開を始めたんです。『いい素材、いい技術、いいデザイン』をコンセプトに商品開発を行っています」

コンビニエンスウェアは若年層を含め、これまでコンビニで衣料品を購入しなかった層も取り込むことに成功しているという。須貝さんは「コラボ商品の発売時などには一部の店舗では初日に完売するほどの人気です」とブランドの現状を語る。さらに地方では、都市部と比べ衣料品店が少ないため、ファミリーマートで衣料品を購入する人が増えているのだそう。

今回取材に応じてくれたのは、株式会社ファミリーマート 商品本部 日用品・雑誌部の須貝健彦さん


商品の陳列に苦戦。制限のあるなかで取り入れた工夫とは?

衣料品店は、広範囲の陳列スペースや試着室があることが特徴で、衣服を魅力的に見せる構造になっている。対してコンビニでは、限られたスペース内で商品を効率的に販売することが求められるため、衣料品を販売するレイアウトに適していないという問題があった。では、どのように対応しているのだろうか。

「商品の配置には常に難しさを感じながらも、陳列の順序や商品名の文字色、パッケージのサイズなど見せ方にこだわっています。また、以前は白、黒、グレーのソックスが人気でしたが、現在はファミリーマートを連想するカラー『ラインソックス コンビニホワイト』が最も売れています。ソックスを店舗入口近くで陳列していることが多いので、季節感を出すためにピンク、きいろ、わかくさ色など明るいカラーも採用しています」

ソックスだけで約30種類、ブランド全体では約90種類の商品を展開している。(2024年1月時点)【画像提供=ファミリーマート】


2023年12月に発売された「スウェット パーカー」であれば、シンプルな商品だからこそシルエットを意識したり、素材から新たに開発していたりと、細かい部分までこだわり抜くことを大切にしているそう。「これらの部分について、落合さんとは毎週打ち合わせをしていますね」と須貝さん。加えて、コンビニ業界では前例のない新たな取り組みも。

「コンビニエンスウェアの売り場は、通常、棚2〜3台で展開していますが、2023年11月に開店した麻布台ヒルズ内の店舗では11台すべてを使い、商品をハンガーにかけて販売しています。お客様からは『もはやアパレルショップですよね』と言われるくらいで、特に抵抗なくデニムジャケットやデニムパンツを購入してくださっています。こうした反応を見て、とても手応えを感じましたね」

「スウェット パーカー(くろ)」※店舗により取り扱いがない場合あり【画像提供=ファミリーマート】

「デニムジャケット インディゴ」(ファミマ!!麻布台ヒルズ店限定商品)【画像提供=ファミリーマート】

「デニムパンツ インディゴ」(ファミマ!!麻布台ヒルズ店限定商品)【画像提供=ファミリーマート】


業界初のファッションショーを開催!コンビニで服を買うのが当たり前の未来に

衣料品の展開に力を入れる株式会社ファミリーマートは、2023年11月30日に「ファミフェス」を開催。これは「ファミマのチャレンジ大発表会」というコンセプトのもと、日本に活気をもたらすことを目的として企画されたイベントで、特に注目を集めたのが、コンビニエンスウェアの新作を披露するコンビニ業界初のファッションショーだ。

「当初はファッションショーだけ開催する予定だったのですが、せっかくの機会にそれだけではもったいないと、コンビニエンスウェア以外のプライベートブランドの商品をPRする大型イベントとなりました。約1年半の計画と準備を経て開催したショーは、国内だけでなく、なんと海外のメディアにも取り上げていただいて、大きな反響を呼びました」

「ファミマのチャレンジ大発表会」というコンセプトで開催された「ファミフェス」【画像提供=ファミリーマート】

ファッションショーの様子。会場の陳列やファッションショー用のアイテム開発など、前例がないことばかりで苦労したそうだ【画像提供=ファミリーマート】


展示された商品について、ファミリーマートの加盟店舗のオーナーたちからは「自分の店でも取り扱いたい」などの声が寄せられており、また、イベントをきっかけに多くの社員がコンビニエンスウェアを着用するようになったという。その理由を尋ねたところ、「ファッションショーを見て感動した」「新たな可能性を感じた」といった意見が多かったのだそう。そして最後に、今後のブランド展開について聞いてみた。

「ブランド開始以来、売り上げは順調に伸びてきました。2024年は『30%以上の売り上げ増加』を目指してまい進していきます。また、“コンビニで衣料品を買う文化”を定着させるためにも、新商品を継続的に開発していく予定です。これまでコンビニ業界にはなかった取り組みですが、多くのお客様からの支持を得られる商品を販売したいと思っています」

「サロペット くろ」(ファミマ!!麻布台ヒルズ店限定商品)。来場者の反応、SNS、メディアでの反響から、ファミフェスの成功を実感したという【画像提供=ファミリーマート】

広島東洋カープとのコラボ商品。「地域限定商品の展開もしていきたい」と須貝さん【画像提供=ファミリーマート】


長年、必要なものは何でもそろう場所として親しまれてきたコンビニだが、コンビニエンスウェアの登場により、そのニーズはさらに増加しつつある。「コンビニで衣料品を買うのは当たり前」と言われる日が来るのも、そう遠い未来ではないのかもしれない。

取材・文=西脇章太(にげば企画)

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