研究者ってどんな人?ベールに包まれた“顔”をカードに!熱い想いと“未来の研究者への願い”を込めた「研究者カード」が話題

東京ウォーカー(全国版)

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茨城県では「女将カード」など変わったカードがたびたび話題にあがっているが、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以降「産総研」)が発行している「研究者カード」もそのひとつだ。SNSへ投稿されているカードの写真を見ると、どれも研究者たちがポーズを取ってかっこよく写っており興味を引く。なぜ、研究者にスポットを当てたカードを作ろうと思ったのか…?このカードを企画したという、産総研のブランディング・広報部の荻原直祐さんに、制作の経緯や意図などについて話を伺った。

「研究者カード」の発案者!ブランディング・広報部の荻原直祐さん【画像提供=産総研】


“顔が見える”研究者であってほしい

――まずは、「産総研」がどのような組織なのか教えていただけますでしょうか?

【荻原直祐】産総研は、茨城県つくば市に本部があり、全国12の研究拠点、約2200人の研究者を擁する日本最大級の公的研究機関です。7つの研究領域を持ち、地質から生物、ロボットまでさまざまな研究を行っています。

【荻原直祐】産業分野の研究なので、ダイレクトに「身近にあるもの」というよりは、「身近にあるものの中に活かされている」というイメージです。たとえば、人工甘味料の開発や、最近話題の「量子コンピュータ」に生かせる研究成果も産総研で生み出されています。

――そんな凄い研究機関で作られた「研究者カード」とは、どのようなカードなのでしょうか?

【荻原直祐】わかりやすく言いますと、「(研究者の)カジュアルな名刺」ですね。一般企業でも、顔入りの名刺がありますよね。あれをすごくしたバージョン…だと思っていただければ。

SNSで話題の「研究者カード」制作秘話に迫る!【画像提供=産総研】


【荻原直祐】2022年11月に(産総研の)一般公開イベントを行ったのですが、そのときにプロトタイプとして6種のカードを制作して配りました。2023年11月の一般公開では大幅に増やし、74種を配布しました。

【写真】地質情報の研究者・村岡やよいさんのカード。カード裏面にある「好きな作業」や「気分転換の方法」は研究者の人間味ある一面を知れておもしろい【画像提供=産総研】


――なぜ「研究者カード」を作ろうと思われたのでしょうか?制作のきっかけを教えてください。

【荻原直祐】以前話題になった「ダムカード」「マンホールカード」など、それまで「モノ」に焦点を当てたカードは知っていたのですが、2022年に広報内で「人」に焦点を当てたカードもあるということが話題になりまして。それは、青森の「漁師カード」や東京電力パワーグリット の「ラインマンカード」だったんですが、それらのいいところは「顔」が見えるところだなと思ったんです。漁師さんも作業員さんも、(一般の人からは)漠然としていて顔が見えないじゃないですか。研究者も全く同じだなと思ったんです。

【荻原直祐】約3年前に私が産総研(の広報部)に入った当時の広報は、研究成果の発表は行われていたのですが、「どういう研究者が発見した研究なのか」というのがわかりづらいというのが課題でした。そういった課題から、産総研の研究者に会ってもらう(一般公開)イベントの来場者へのお土産として、“顔が見える”“現場の空気がわかる”研究者カードは有効なのでは…ということで、2022年の夏ごろから制作をスタートしました。

――カードを作る際にこだわったところはありますか?

【荻原直祐】研究内容や研究施設の解説を載せているのですが、それだけだとちょっと堅くなってしまうので、研究者の人となりがわかるような「好きな作業」「気分転換の方法」という2つの項目を入れました。特に「気分転換の方法」は、入れてよかったと思っています。気分転換の方法が「おいしい唐揚げを作ること」という研究者がいまして、それは対面で話したとしても引き出せないことだなと思いました。研究者って、顔も見えないし普段何をやっているかわからないじゃないですか。だけど、研究者の顔を見せることで親しみを持ってもらうというのも、このカードの魅力のひとつだと思います。

2023年の一般公開ではブースが常に大行列だったという人気研究者・雨宮邦招さんのカード【画像提供=産総研】


【荻原直祐】あとは、撮影ですかね。研究者はみんな忙しいので、カメラマンさんにお越しいただいて、産総研内に特設スタジオを作り撮影しました。みなさん最初は緊張しているのですが、だんだんノリノリになってきて、かっこいいポーズで生き生きとした表情に仕上がったので、よかったと思います。スマホ撮影だとクオリティが下がってしまうので、「絶対にプロに撮影してもらう!」というところはこだわりました。そういったこだわりも、カードが話題になったポイントかもしれません。

「研究者カードは」コミュニケーションツールとしての役割も


――カードは、イベントへの来場者全員がもらえたのでしょうか?

【荻原直祐】研究者カードは、「研究現場やブースに実際に行って、研究者と直接話した(質問した)人に渡す」というルールのもと配布しました。なので、「直接話すことに価値を置いた」というのがほかのカードとの違いだと思います。そうすることで研究者個人を知ってもらい、「この研究やこの研究者はおもしろかったな」とか「将来この人と同じ分野の研究がしたい」などと思ってもらい、あわよくば産総研の研究者になってもらえたら…という願いも込められています。

――ということは、メインターゲットは若年層なんですね。

【荻原直祐】そうです。コロナ禍以前の一般公開は誰でも来場OKだったのですが、2023年は中学生以上とさせてもらいました。それは、研究者とガチなやり取りをしてもらいたかったからです。ある程度、基礎知識がある学生さんのほうが、研究者とコミュニケーションもしっかりとれると思いました。なので、そういった「コミュニケーション」を目的としていて「本人から直接もらえる」というところが、研究者カードの特徴だと思います。

【荻原直祐】2023年は中学生以上としたことで、(割合としては大人のほうが多かったですが)前年より学生さんは増えたと思います。特に、大学生が多かったですね。なので、各研究者と相当レベルの高い会話が繰り広げられたようで、研究者たちも喜んでいました。

――イベントに訪れた学生など、来場者の反応はいかがでしたか?

【荻原直祐】当日に来場者の声を直接聞ける機会は少なかったのですが、2023年の一般公開でつくば会場に来場していた高校生が、実は親御さんに許可をもらってひとりで北海道から来られていたというX(旧Twitter)の投稿をたまたま拝見して。そういう風に興味を持って遠方から来ていただけたのは、とてもうれしかったですね。

【荻原直祐】また、研究者カードだけでなく、来場者に配布した「公式ガイドブック」に掲載していた「研究者漫画」も好評だったようで、うれしかったです。

2023年11月の一般公開で配布された公式ガイドブック【画像提供=産総研】

公式ガイドブックを裏返すと、そこからは「研究者漫画」になっているという仕掛けもおもしろい【画像提供=産総研】


クリエイティブ集団が展開する“技あり”な広報活動


――「研究者カード」だけでなく、「研究者漫画」もあるのですか!?

【荻原直祐】はい。5人の研究者を取り上げて、それぞれの研究で「グッとくる瞬間」などを語ってもらっている漫画です。「研究者漫画」は産総研の公式X(旧Twitter)にすべてアップしていますので、興味のあるかたはぜひご覧ください。

「至高の暗黒シート」を開発した雨宮さんは、研究者漫画にも登場!【画像提供=産総研】


――かなりのクオリティですが、これは外部の漫画家さんに依頼して制作されたのでしょうか?

【荻原直祐】いえ、これは広報室に漫画が描ける人(※)がいまして、描いてもらいました。2023年の一般公開の目玉企画のひとつとして、「研究者カード」と「研究者漫画」を制作しました。漫画で描かれている研究者は全員研究者カードを作っていた人だったので、当日この漫画を読んで「会いたい」と思って行って、研究者カードをもらってくれた方もいたと思います。

※篠原彬【ペンネーム芦藻彬(あしもあきら)】さん …「微分、積分、世界の終わり」(ジヘン)でプロデビューしており、現在は産総研の広報で「研究者漫画」を執筆中。

――えっ!広報にプロの漫画家さんがいらっしゃるんですか!すごいですね。

【荻原直祐】はい。私を含め、デザインができる人もいるので、研究者カードも研究者漫画も、ほとんど内製しています。外部に発注しないので大変ですが、一方、やりたいことをスピーディーに進められるのがいい点だと思います。ちなみに、私はプライベートで映像作家的なこともしていたので、広報では動画撮影や編集もできるんです。

――なんと!もはや「広報」という名のクリエイティブ集団ですね!なぜ、そこまで広報活動に力を注がれているのでしょうか?

【荻原直祐】やはり、「顔が見えない組織は嫌だ」という思いが大きいと思います。私自身も、そういう思いで入社したので。“顔が見える”ようにするためにどうするかを考えたとき、たとえば私は動画を撮れるので「研究者個人の思いに触れた動画を撮ってX(旧Twitter)などで発信しよう」という風に動いていったのだと思います。

【荻原直祐】あとは近年、産総研自体がブランディングに力を入れていこうという方針になっているのも大きいかもしれません。特に、2023年4月からはこれまでの「広報」が「ブランディング・広報部」という名前に変わり、人数も増やしたんです。社内から広報をやりたい人を公募して集まってきたうちのひとりが、先ほど話に出た篠原(漫画が描ける人)です。彼はもともと別の部署で事務職をしていたのですが、公募で広報に来たんですよ。

――なるほど、徐々に専門性を持つ方々が広報に集まってきたということですね。今後、新たに取り組まれる企画などはありますか?

【荻原直祐】実は、「研究者カード」の評価が産総研内でかなり高くて。「私も作りたい」と言ってくれる研究者が増えているんです。学会発表など研究者同士で会う場や、学生さんのリクルーティングの場などで自己紹介に役立つという話をいただいていまして、一般公開のイベントに限らず、希望する研究者のものも制作していければと思っています。

【荻原直祐】産総研としてはもちろん、表現者(クリエイター)としてのプライドがあり「下手なものは出せない」という気持ちもあるので、これからもクオリティにはこだわっていきたいです。

――ちなみに「研究者カード」の再配布の予定は?

【荻原直祐】2023年の一般公開については「中学生以上」という条件があったため、小学生以下のお子様が来られなかったのですが、2月10日(土)につくば市の「イーアスつくば」で、小学生以下を対象とした「出張産総研 ミニミニ一般公開」を開催予定です。

【荻原直祐】2月16日(金)には、つくば市の「co-en(コーエン)」で「金夜(きんよる)サイエンスカフェ」を開催します。こちらは、11月の一般公開に来られなかった方を対象に、年齢制限なしでお越しいただけますので、ぜひ足を運んでいただければと思います。来場する研究者などイベントの詳細は、産総研の公式X(旧Twitter)でお知らせしていきますので、随時チェックしてみてください。

今回紹介したカードや漫画以外にも、研究者の取材動画をYouTubeにアップしたり、一般公開のときにはニコニコ動画で生配信をしていたり…と“攻めた広報”が印象的な産総研。「顔が見える広報」をテーマにこれからも斬新な切り口で、産総研やさまざまな研究について広く認知を得られる活動をしていくことだろう。

この記事のひときわ #やくにたつ
・アイデア次第で広報活動の幅を広げることができる
・こだわりがクオリティを上げ、目を引くきっかけになる

取材・文=矢野 凪紗

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