このご時世に申請なし・無料で利用が可能…東日本大震災がきっかけで生まれた「東北ずん子」「ずんだもん」の狙い

東京ウォーカー(全国版)

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現在、日本では著作権によりアニメや漫画のキャラクターの無断利用は厳しく規制されているが、逆に自社のキャラクターの無申請・無料での商用利用を許可して、地域活性化に役立てている会社がある。それが、宮城県仙台市にあるSSS合同会社(以下、SSS)だ。

SSSは「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」というプロジェクトを2011年より実施。自社の「東北ずん子」をはじめとしたキャラクターのイラストを、東北6県の企業や団体であれば申請不要・無料で利用できるという取り組みを行っている。とても画期的な取り組みのように思えるが、このプロジェクトを立ち上げるまでにどのような背景があるのだろうか?

今回は「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」を手掛けるSSS CEOの小田恭央さんに、このプロジェクトを開始したきっかけや、近年YouTubeでブームとなっている「ずんだもん」がヒットした理由について話を聞いた。

東北ずん子。東北地方を盛り上げるべく生まれたスーパースター


プロジェクト発足のきっかけは東日本大震災

「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」を企画しているSSSが誕生したのは、今から13年前の2011年1月。当初小田さんは、オリジナルキャラクターを使った事業を行うために他のメンバー2名と会社を設立したが、その直後に東日本大震災が発生。地震や津波の被害が大きかった東北の復興のために、SSSの社内メンバーで話し合って生まれたのが「東北ずん子」というキャラクターとこれを活用した仕組みだった。

「『東北ずん子』は東北を盛り上げるためにできたキャラクターなので、“東北の企業であればイラストを無償で利用できる”というシステムを思いつき、実施しました。また、継続的に盛り上げていくために音声合成に対応させようということになり、音声合成ソフトを作るためのクラウドファンディングも行いました」

「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」のポスタービジュアル


その後は、ユーザー自身の力で盛り上げることを主軸に置いて活動を行ってきたこのプロジェクト。「東北ずん子」や「東北きりたん」、「東北イタコ」の音声合成ソフトの開発・配布や、「ずんだホライずん」というアニメを作り、そのアニメの中で音声合成で歌わせるなどして知名度を高めてきた。個人クリエイターも非商用であれば、東北の企業や団体と同じように無料で使用可能なため、ユーザーそれぞれが音声合成を使って動画を作成し、動画投稿などを行うことにより、結果としてキャラクターやプロジェクトが知られることとなった。

東北イタコ


また、最近では「ずんだもん」が動画クリエイターの間で流行している。「ずんだもん」とは、「東北ずん子」の関連キャラクターとして生み出された、ずんだ餅をモチーフにしたキャラクター。子どもらしい見た目とキュートな声が話題となり、さらに無料の音声ソフトだったため、クリエイターがこぞってこのキャラクターの合成音声を使用し、動画を投稿。その結果、「ずんだもん」以外のキャラクターや、「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」の認知も広がっていった。

「YouTubeやニコニコ動画で『ずんだもん』というキャラクターの合成音声ソフトを利用した動画が流行していますが、これは2020年以降のコロナ禍が理由のひとつでもあります。おうち時間が増えたことにより、『何か自宅で遊んでもらえるものを作りたい』という思いから、『ずんだもん』の音声合成のもとになる音源を制作しました。すると、無料で使える音声合成ソフトを作ってくれる方が現れ、最終的に無料で使うことができるようになりました」

ずんだもん

東北きりたん


気になる使用用途は?目標はプロジェクトの全国展開

このプロジェクトでは、「東北ずん子」をはじめとした東北系のキャラクターイラストついては、東北6県にある自治体や公共団体は申請不要、そして無料で商用利用が可能だ。そのため、使用用途は商品パッケージへのプリントやポスターへの掲載、Webサイトでの利用など多岐に渡るという。そして申請不要であるため、小田さんの知らないところで思わぬ使われ方がされていることも多いのだとか。

「制度的に、キャラクターがどのように利用されているか計測ができない状態になっています。たとえば、『ずんだサイダー』のパッケージに使われていたり、不動産屋さんの店舗の壁に『東北ずん子』の絵が描かれていたり、お土産屋さんで『ずんだもん』のグッズが売られていたり、お米のパッケージになっていたりなど、さまざまな形で利用されています」

このような仕組みの狙いは、SSSが事業展開をしている以外のところで、自治体や企業が自主的にキャラクターの名前を広めてくれるところにある。いわゆる一般的なマーケティングをするのではなく、「みんなでキャラクターを盛り上げていくこと」が目的だ。そのため、広告費をかけずにキャラクターを拡散でき、地方活性化にも役立つという大きなメリットがある。

「『ずんだもん』や『東北ずん子』のおかげで、東北の名産品であるずんだ餅を知る人が増えたり、2023年7月にはお菓子メーカーのロッテから『紗々 <ずんだシェイク>』が発売された際、『ずんだもん』とのコラボの案件が来たりしました。また、東北以外の企業からグッズ関係の問い合わせがあったり、ゲーム会社から『キャラクターをゲーム内に登場させたい』といった問い合わせも増えました。キャラクターを通して東北のことを知ってもらえる機会が増えるのは、とてもうれしいですね」

SSSは「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」を全国各地で展開することを目標に、「四国めたん」や「九州そら」、「中国うさぎ」など日本各地の地域のキャラクターを創作し、音声ボイスの配布などを行っている。「将来的には『東北ずん子』と同じように、これらのキャラクターを各地方で申請不要、無料で使えるようにしたい」と小田さん。

「『東北を盛り上げる』という目的から始まったこのプロジェクトですが、この仕組みを全国的に広げていくのが今後の目標です。そのために、まずは東北がほかの地域と仲良くならないといけないと思い、“いろいろな地域のキャラクターを作ってそれぞれが仲良くなる”というコンセプトにしています。将来的には“日本の全地域ごとに使用無料のキャラクターがいる”という形にしていきたいと考えています」

四国めたん

九州そら

中国うさぎ


地域活性化だけでなく、動画クリエイターのサポートにも注力

「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」が注目された理由のひとつに、「ずんだもん」のYouTubeやニコニコ動画でのバブル的な人気もあった。狙い通りのキャラクターの広がり方に、「うまくいってとてもうれしい」と小田さんは話す。

「今後もキャラクターを使用した動画コンテンツが制作・投稿されることにより、多くの人が地方を知るきっかけにつながると思います。将来的にはChatGPTやARを組み合わせて、自分が見ているコンテンツを『ずんだもん』に解説してもらうといったこともできるようになると思います。また、『ずんだもん』の音声がボイスチェンジャーの分野にもうまく広がってほしいと考えていて。たとえば、『ずんだもん』の声を使って自分の話したいことを話すとか、そのような使われ方もされてほしいなと思っています。『ずんだもん』を演じる人が増えてほしいですね。その結果、東北のことを知る機会が増えてくれるとうれしいです」

ずんだもん


SSSは今後、「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」の全国展開と並行し、動画クリエイターをサポートするような仕組み作りも行っていく予定だそう。ボーカロイドで楽曲制作をする「ボカロP」が有名な歌手や楽曲提供者になったように、動画クリエイターがアニメ監督や作画担当といった映像市場に乗り出していくことを支援するのが目的だ。「東北ずん子」や「ずんだもん」を利用して、業界で有名になる人が現れる日もそう遠くないかもしれない。

「『東北ずん子』や『ずんだもん』などを利用した動画制作を通して、映像業界で活躍する人が出てきたら本当にうれしいです。そのようなクリエイター志望の人たちを応援する取り組みも行い、今後もさらに活動の幅を広げていきたいと思っています。ぜひ、今後とも当プロジェクトをよろしくお願いします!」

ずんだ餅の妖精の姿をしたずんだもん


東日本大震災がきっかけで始まった「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」。YouTubeをはじめとした動画コンテンツが一般化した今、地方活性化の方法は刻一刻と変化している。その先駆けのひとつとなっているSSSの取り組みに、今後も注目していきたい。

取材・文=福井求(にげば企画)

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