お風呂とトイレが一緒=「ユニットバス」じゃない⁉東京オリンピックがきっかけで誕生したユニットバスの秘密

東京ウォーカー(全国版)

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賃貸物件を借りる際に決め手になるポイントのひとつが、トイレとお風呂が一緒か、別々かではないだろうか。現在は「セパレート」というトイレとお風呂が個別になっている浴室が人気が高い傾向にあり、近年建築されたマンションやアパートでは、この形式が一般的になっている。

一方で、少し古めのアパートやマンション、そしてホテルなどでよく見かける、トイレとお風呂が一体になっている形式の、いわゆる「ユニットバスルーム」(以下、ユニットバス)が現役のところも少なくない。この形式の浴室は2024年で誕生60周年を迎え、実は長い歴史があるのをご存知だろうか。
 
今回は、ユニットバスの誕生秘話について、衛生陶器をはじめとする住宅設備機器を製造・販売するTOTOの宮脇さんに話を聞いた。

「ユニットバス」は“お風呂とトイレが一緒になったもの”ではない⁉

 

トイレが一緒になっていないものも「ユニットバス」⁉

ユニットバスとは、浴室のすべての構成部材や部品を工場で生産・加工し、現場ではこれらの部材・部品を組み立てるだけで完成させることができるプレハブ化された浴室のこと。一般的に想像されるユニットバスは“トイレとお風呂が一緒になっているバスルーム”だが、“浴槽と洗い場だけ”や“浴槽と洗面台だけ”のバスルームも、工法によってはユニットバスの部類に入るという。
 
「ユニットバスの種類としては、浴槽と洗い場がセットになった『1点ユニットバス』、浴槽と洗面台が一緒になっている『2点ユニットバス』、そして、浴槽、洗面台、トイレがひとつの空間にある西洋式の『3点ユニットバス』の大きく3種類があります。これらをまとめて広義的に『ユニットバス』と呼びます」
 
ユニットバスが誕生する以前、一般的な浴室といえば「在来工法」が主流だった。これは、防水工事を施したうえに床や壁にタイルを貼って仕上げた浴室のこと。レイアウトなどの自由度が高く、オリジナルのデザインができるのがメリットだ。しかし、断熱性・気密性が低いというデメリットも。そして浴室をイチから作るため、施工費用が高くなり、工期も長くなるのが大きな問題点だった。
 
「在来工法のデメリットを払拭したのがユニットバスです。ユニットバスは、建築物の中にもうひとつ部屋を作るような形で、直接的に建築に依存していないのが特徴ですね。また、気密性の高い構造になっているため、断熱性に優れています。在来工法の浴室と比較して組立がとても簡単なので工期が短く、工事にかかわる価格も安く抑えられるのがメリットです」

「在来工法」と「ユニットバス」の比較

どちらにもそれぞれメリットがある

「和風ユニットバスルーム」と「洋風ユニットバスルーム」

 

近年ではこのユニットバスの形態が一戸建てやマンション、ホテルなどさまざまな建築物に使われていて、今ではメジャーになっているが、最近は一軒家だけでなく賃貸でも浴室とトイレがセパレートになっている部屋が好まれる傾向にあるため、浴槽、洗面台、トイレが一緒になった3点ユニットバスは年々減少しているそうだ。しかし、ホテルの建設では依然として3点ユニットバスの人気が高いのだとか。

 

実は日本生まれ!誕生のきっかけは東京オリンピック

日本の浴室に革命を起こしたユニットバス。特に、3点ユニットバスについては外国で開発されたものかと思いきや、実は日本で独自に生み出されたものだった。そのきっかけとなったのが、今からちょうど60年前の1964年に行われた東京オリンピック。その前年の1963年に「ホテルニューオータニ」の建設が始まり、その際にユニットバスが採用されたのが始まりだ。
 
「当時のホテルニューオータニの建築にかかる期間は、通常であれば3年ほどと言われていました。しかし、東京オリンピックまで時間がなく、ホテル自体の工期が17カ月しかない状態でした。在来浴室の施工方法では間に合わないということで、“浴室をある程度ユニット規格化して工場で段取りして現場でホテルの空間に収める”という発想に行きつき、弊社のユニットバスが導入されることになりました」

1964年に「ホテルニューオータニ」に設置されたユニットバス。現在は「TOTOミュージアム」に展示されている

 
在来浴室の施工では、ひと部屋につき1カ月を要していた。しかし、組み上がったものを運び込んで設置するだけでほぼ完成するユニットバスにより、工期を大幅に短縮することに成功。組立だけであればわずか1日ほどでバスルームの取り付けができるようになった。そのおかげで、1000室以上あった客室の浴室工事を3カ月半で完了できたという。
 
「短工期で高品質のバスルームを実現したユニットバスは、非常に革命的でした。のちに業界からの大きな反響を呼び、大量受注の波を呼び寄せることに成功。その後、弊社は1966年にマンションやアパートなどの集合住宅用ユニットバスルームを、1977年に戸建住宅用ユニットバスルームを発売しました」
 
ちなみに、このときに設置されたユニットバスは、2014年にホテルニューオータニ内にひとつだけ残っていたものが発見された。現在は福岡県北九州市にあるTOTO本社横の「TOTOミュージアム」に移設されていて、誰でも見学が可能になっている。

TOTO本社横にある「TOTOミュージアム」

 

どんどん便利になるユニットバスに注目!

1964年に誕生して、2024年で60周年を迎えたユニットバスは、日本全国に展開を続け、現在では最も一般的な浴室工法の形になった。では、開発当初のものと比べてどのような点が大きく変わっているのだろうか。宮脇さんは、「『床が乾きにくい』という課題を解決したこと」がポイントだと話す。
 
「ユニットバスの弱点として、在来浴室と比べて床が乾きにくいという難点がありました。繊維強化プラスチック製の床は、気密性が高い一方、水が乾きにくく翌日まで残っていたんです。多くのお客様から『床の水が乾かない』『乾きやすい床を作ってほしい』というクレームや要望が集まったこともあり、乾燥しやすい床の開発に取り組むことになりました」
 
そこから長年の試行錯誤を経てTOTOが完成させたのが「カラリ床」(2001年発売)。これは、床表面に刻まれた細かな溝が水の通り道となり、排水口へと流れていく機能を持った床のこと。凸凹が多い構造で、溝に水分が残っても自然乾燥が早いのが特徴だ。そして2008年に、カラリ床が柔らかい床に進化。柔らかくて滑りづらく、寒い時期でも冷えず、汚れを落としやすい浴室を実現することに成功した。
 
「また、お風呂のお湯は時間が経過するごとに冷めてしまいます。そこで、お湯を入れて4時間経過しても約2.5℃しか温度が低下しない保温性能を持った『魔法びん浴槽』を開発。そして、発泡ポリプロピレン製の冷めにくい『ラクかるふろふた』も開発し、断熱材と風呂ふたで浴槽をしっかりと包み、追い炊きなしでも入浴できるようにしました」

TOTOが開発した「カラリ床」

「魔法びん浴槽」は断熱性のある風呂ふたと浴槽を包み込む断熱材で、熱を逃がさない構造

 
最後に、「現在も弊社は、ユニットバスのリーディングカンパニーとして研究開発を続けています」と話してくれた宮脇さん。誕生より60年、TOTOの技術が詰まっているユニットバスは、今後はどのように進化していくのだろうか。進化し続けるユニットバスに注目したい。
 
取材・文=福井求(にげば企画)

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