ビジネスシーンでスマートウォッチはOK?意外と知らない「腕時計のマナー」をプロに聞いてみた

東京ウォーカー(全国版)

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新社会人となった人も多いこの時期。これまでと環境が大きく変わり、プライベート用とは別に服やカバン、靴といった、社会人としての身だしなみについて気を使うようになった人も多いのでは?

その筆頭格が「腕時計」ではないだろうか。社会人になる前に身だしなみのマナーを学ぶ機会はあっても、腕時計について耳にすることは少ない。なんとなく「アナログ時計のほうがいい」「女性は小ぶりのものを着ける」といったイメージがあるが、最近では「スマートウォッチ」も市民権を得てきている。ビジネスシーンにおいての腕時計マナーは、現在どうなっているのだろうか。

今回は、今さら人には聞きづらい“ビジネスシーンでの腕時計のあれこれ”について、東海時計商事株式会社の井上誠さんに疑問をぶつけてみた。

“ビジネス用の腕時計”と聞けばなんとなくイメージできるが、具体的なマナーをしっかり学ぶ機会が少ないはず


スマートウォッチはなぜ容認されている?腕時計のマナーの意外な歴史

――そもそもの話になってしまうのですが、社会人にとって腕時計の役割とは何なのでしょうか?なぜ腕時計がマストアイテムになっているのでしょう?

「初対面の相手を不快にさせない清潔感や品性を表すためだと思います。腕時計を着けていないからといってマイナスイメージを持たれることは少ないと思いますが、学生から社会人になり、“自分はタイムマネジメントができる”という意思表示にも近いものがあるのではないでしょうか。日常生活でも時間を守ることは人間関係において非常に重要な要素ですが、ビジネスの場ではより一層の重みがあります」

――たしかに、時間を守ることって当たり前のように思えますが、かなり重要ですよね。では、そういったマナーはどこかの団体が公式に決めていたりするのでしょうか?

「実は腕時計に関するマナーについて明確に決まったものはなくて、決めている団体なども特にないんです。これまでの歴史の積み重ねによってできた、世間の最大公約数のようなものだと捉えています」

――そうなんですか!てっきりマナー講師のような方々の間で決まったものがあるのかと…。ビジネスシーンでの腕時計選びには、具体的な基準のようなものはあるのでしょうか?

「一般的な身だしなみのマナーとそう変わりませんよ。初対面の場合、第一印象は見た目が55%、声の高さや速さが38%、話の内容が7%で決まると『メラビアンの法則』で言われているほど、見た目というのは大切で、身なりもそこに含まれます。なので、見た目で相手に不快な思いをさせないことが社会人のマナーであるとも言えます。腕時計でいうと、必要以上に華美であったり、逆に垢まみれで不衛生だったりすると不快感を与えてしまいますよね。腕時計選びでもそれが基準になってきます」

個性的な時計もいいが、ビジネスシーンでは自分の趣味や個性を出すよりも相手の立場に立つことが重要!


――なるほど。そういった面で考えると、最近だとスマートウォッチも見かけるようになってきていますが、これはOKということですかね?

「結論から言ってしまうと、スマートウォッチに関するマナーはこれといって存在しません。というのも、あまりにも急速にスマートウォッチが普及したため、マナーに関する議論がされる前にみんなが着けていたからなんです」

――そうなんですか⁉でもビジネスシーンでデジタル時計はあまりよくないと言いますし、それとは違うのでしょうか?

「これには、腕時計の歴史が関わってきます。腕時計の始まりは1810年のフランスの時計師による女性用の懐中時計にベルトを通したものだと言われています。当時の正装としての時計は懐中時計という認識だったのですが、1914年以降には第一次世界大戦により機械や科学が発達して、近代兵器が多く作られるようになります。そうなると、わざわざ懐から取り出す必要のある懐中時計よりも、腕時計のほうが利便性が高いとして着ける人が増えていきました。戦後には腕時計を製造していた民間企業が一般人向けにも販売を開始し、世間に普及するようになります。ただ、フォーマルな場ではまだ懐中時計が主流で、腕時計はあくまで略式という扱いでした」

――そもそも、腕時計は懐中時計の略式だったのですね。今ではほぼ見かけない代物ですね。

「そうですよね。現代でもそうであるように、より便利なほうの腕時計が残って、1930年ごろにはフォーマルな場でも腕時計を身に付けることに抵抗感がなくなっていっていたと言われています。さらに、それまでは非常に高価だった腕時計ですが、1969年に『クオーツアストロン35SQ』という電気信号によって正確な時間を表示できる時計がセイコー社から開発されると、価格が一気に下がり、誰でも購入が可能になりました」

――ちなみに、もともとはどれくらいのお値段だったのでしょうか?

「安価なものでも30万円ほどですね。それが数万で購入できるようになったため、その衝撃から『クオーツショック』と呼ばれるほどの出来事でした。その後、1972年にはパルサー社が『タイムコンピューター』というLEDデジタル表示の時計を発売し、翌年には『LC V.F.A.06LC』をセイコー社が開発しました。液晶パネルはLEDに比べて消費電力が少なく、稼働時間が長いため、以降はデジタル時計が主流となりました。こうした流れを見ると、デジタル時計は“懐中時計の略式である腕時計のさらなる略式”というものになるので、ビジネスやオフィシャルな場ではよくないとされるのではないでしょうか」

――腕時計は歴史的な流れから徐々にマナーというものが確立されていった一方で、スマートウォッチは爆発的に普及したためにマナーが追いつかなかったというわけなんですね。

「そうですね。それと、スマートウォッチはあくまでデジタル端末のひとつであり、『時計ではない』と見られている可能性もあります。特に時計好きからするとスマートウォッチは時計とは認められないみたいですね」

Apple社のAppleWatchをはじめ、近年爆発的な人気を誇っているスマートウォッチ


時代に合わせたジェンダーレスな腕時計は意外と売れていない?

――最近は大手アパレルチェーンなどでもジェンダーレスな洋服やアクセサリーが発売されていて、身に付けるものにも性差を失くしていくという傾向があります。腕時計については傾向に変化はありますか?

「腕時計の業界にも、もちろんそういう傾向は出てきています。いくつかのメーカーからはジェンダーレスの腕時計が発売されているので、その傾向はこの業界でも見受けられますね。具体的には、男性用の時計のサイズは文字盤が38~40ミリとされているのに対して、35ミリ以下のものが出てきています。ただ、このサイズでも手首の細い女性にはサイズが大きくなるようで、世間で声が挙げられているのとは裏腹に購入者は多くはありません」

―身体的な特徴は変えようとして変えられるものでもないので、自分の腕のサイズに合ったものを選ぶという感じでしょうか。

「そういうことになると思います。腕時計においては、企業側は試行錯誤して新しいものを創出しますが、使う側はそこまで気にしておらず、ジェンダーレスはあまり求められていないと考えられます。もちろん、プライベートではかっこいいゴツゴツした腕時計を好む女性や、小さくて華奢なものを着ける男性もいらっしゃいますが、ビジネス用として考えるとあまり以前と変わっていないように思いますね。むしろ、スマートウォッチが一般的になった際に、そちらに流れていったのは女性のほうが多かったんですよ」

――えっ、そうなんですか?それはどんな理由が考えられるのでしょうか?

「ブレスレットのような装飾的な要素もある女性の腕時計は、手首の細さから考えると、30ミリの小さめの文字盤にする必要があります。結果として、実用性よりもアクセサリーとしての見た目に関する部分が重視されていたんですね。なので腕時計に実用性を求める女性からすると、大きすぎるジェンダーレスの腕時計よりもスマートウォッチのほうが使い勝手がいいということで、人気になっていったのではないでしょうか」

――では、ジェンダーレスの腕時計はあまり世の中に出回っていかなくなるのでしょうか。

「そんなことはないと思いますよ。ジェンダーレスの腕時計が登場したのは、業界として社会の風潮を取り入れようとする姿勢の表れであり、大きな変化でもあると考えます。女性の時計師も世界的に増加傾向にありますし、今後もこうした取り組みは続くのではないでしょうか」

女性用の腕時計は腕の細さに合わせて文字盤の大きさやベルトの太さが調整されている


新社会人におすすめの腕時計は?

――ここまでのお話を伺っていると、スマートウォッチもいいかもしれませんが、やはり1本は腕時計を持っているほうがよさそうですね。新社会人へのおすすめはありますか?

「新社会人であれば無難なデザインのステンレス製で、文字盤に秒針と短針、長針がある『3針』というものが基本になってくると思います。自分の経歴や肩書が変わればそれに見合ったものを身に付けることをおすすめしています」

――なるほど。いくつか具体的なモデルを伺えますか?

「1つ目は、タグ・ホイヤーの『カレラ』です。男性用、女性用といずれもラインナップがあるシリーズで、シンプルで使いやすいですね」

タグ・ホイヤー「カレラ」。10気圧防水の機能もあり、多少の水なら防いでくれる

タグ・ホイヤー「カレラ」のレディースモデル


「2つ目は、オリエントスターという秋田県で作られている国産の腕時計です。こちらのメーカーのものであればどれでもおすすめですし、男女ともにラインナップがあります。コアなファンもいるくらいですよ」

どのモデルでも落ち着きがあるオリエントスターのメンズ定番モデル

フェミニンな印象のオリエントスターのレディース定番モデル


「3つ目が、ドイツのジンというブランドの『556』です。値段を抑えつつもブレスレット部分がとても頑丈でアウトドアにも使いやすいので、初めての一本におすすめです。人体に電磁波の影響を与えない『Qテクノロジー』というのも開発している会社で、そのあたりもとても興味深いですね」

ブレスレットにボルトを使用している「Sinn556」は頑丈なのも魅力

「Sinn456」のレディースモデルには一般的な「ピン式」よりもタフな「ネジ式」が用いられ、メンズモデル同様頑丈さが特徴だ


ーいずれもシンプルで落ち着いた印象のある、大人っぽいモデルですね。男女ともにラインナップがあるのも助かります。

なかなか聞けない腕時計のお手入れ方法とは?

――私自身の経験になりますが、社会人になりたてのころはそこまで意識が及ばず、腕時計のお手入れを怠ってしまっていました。お手入れ方法や保管方法を知る機会がなかったのも原因のひとつなのですが、長く使うために気を付けることを教えていただけますか?

「まず、腕時計にはいくつか種類があります。巻き上げたゼンマイのほどける力を利用した機械式は、懐中時計にも使用されていた仕組みです。このゼンマイは鉄製となっていることが多く、スピーカーやスマートフォンなどには磁石が内蔵されているので、近くにあると磁気帯びを起こしてしまいます。磁気帯びをしてしまうと時間表示が狂ってしまうんです」

――それは私も経験があります!スマートフォンは特に気づかないうちに腕時計と距離が近づいてしまうので、要注意ですね。

「そうなんです。さらに気づかれにくいのがノートパソコンです。HDDが内蔵されている場合、高性能なものほど強い磁気を発するので、パソコン作業が多い場合でも注意が必要です。低度の磁気帯びであればお店で磁気抜きできますので、ご相談ください」

磁気が原因で腕時計の時間表示が狂ってしまったら、お店で磁気抜きをしてもらおう!


――困ったら一度お店に相談してみて、何が原因か確認してもらうのがよさそうですね。機械式以外の腕時計の場合は、何に注意したらいいでしょうか?

「ほかにはクオーツ式とソーラー式というものがあります。クオーツ(水晶)を電気で振動させることで時計を動かすクオーツ式の場合、電池式なので磁気に関しては大丈夫ですが、モーターに付いている磁石よりも強力な磁石が近くにあると狂ってしまうことがあります。どちらにせよ、磁気には注意したほうが安心です。光エネルギーにより発電することで動かせるソーラー式は、電源が完全に切れてしまうと充電してももとに戻らないので、常に光にあてておく必要があります。冬場は太陽が出ている時間も短いうえに長袖で隠れてしまうので、特に注意が必要ですね。LEDのデスクスタンドの下などに置いておくと自然と充電ができるので、おすすめですよ」

――基本的には磁気に注意することが大切そうですね。文字盤やベルトが汚れたときのお手入れの際も、気を付けたほうがいいことってありますか?

「文字盤は錆びにくいステンレスを用いているのですが、とはいえ全く錆びないというわけではありません。皮脂や垢などの汚れは錆につながるので、ふき取りは必須です。眼鏡にも使われるマイクロファイバーの布や腕時計用のクリーナーはAmazonや楽天市場などの通販でも販売されているので、それらを使って拭き取るのがおすすめです。ベルト部分については種類にもよるのですが、革ベルトの場合だと2、3年程度で劣化してしまうことは念頭に置いていただきたいです。長く使うためには、帰宅して外したときに軽く水拭きしていただくか、革用クリーナーを付けた布で汚れを拭き取るのがいいでしょう」


――日常的に布で拭き取ってお手入れするのが長持ちの秘訣という感じでしょうか。ちなみに、水洗いができる時計ってあるんですか?

「ありますよ!ダイバーズウォッチという時計は水道水程度の流水であれば耐えられるので、掃除がしやすいです。中性洗剤を泡立てて、手で優しく洗ってあげるといいですよ。注意点としては、ゼンマイの巻き上げや時刻・日付調整などを行うボタンのようなもの(リューズ)が付いているのですが、反対向きにして洗うほうが万が一の浸水の可能性も防げるので、気を付けたほうがいいです。それと、風呂場やサウナなどの水蒸気が多い場所での使用や、シャワーで水圧をかけるような使い方はご遠慮ください」

相手に不快感を与えないためにも、お手入れを欠かさないように。大切に扱うことで腕時計の長持ちにもつながる


――洗剤で洗えるんですか?いいですね。腕時計って、本当にいろいろな種類があるんですね!

「そうですね。これだけの種類があるので、職種に合わせて購入するのもアリだと思います。今回は商談などで人と会ってお話するようなお仕事をベースとして話してきましたが、デスクワークが中心の方やアパレルショップでの勤務などになってくると、デジタル時計を着けていても違和感はないと思います。個性を出すのもいいですが、ビジネスの場で大切なことは相手を不快にさせないことですので、その意識を持っていただけたらと思います」

ただ時間を確認するだけではなく、人に与える印象にも関わる腕時計。これを機に、腕時計に関するマナーやおろそかになりがちなお手入れに関する情報を確認し、新生活で活かしてみてはいかがだろうか。

取材・文=織田繭(にげば企画)

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