自転車のプロが推すサイクリングコースで東京の“知られざる顔”を発見!

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自転車で走ると、意外と知られていない“東京の顔”が見えてくる――。そう教えてくれたのは、自転車関係の著述活動で知られる“自転車ツーキニスト”でTBSテレビプロデューサーの疋田智さんと、2017年に自転車活用推進研究会の七代目「自転車名人」にも選ばれた俳優・お笑い芸人の石井正則さん。そんな二人が勧める、東京都内のサイクリングコースとは?

ズバリ! 四谷で「怪談サイクル」!


まず紹介するのは四谷。JR四ツ谷駅の横を走る新宿通りや、東京メトロ四谷三丁目駅からJR信濃町駅へ至る外苑東通り沿いはビルが多く、ビジネス街のイメージが色濃い。しかし、一本奥の路地へ入るとガラリと趣が変わる。都心とは思えないほど静かな住宅街が広がっているのだ。

外苑東通りから路地に入っただけで、街の“顔”が一変する四谷界隈


「四谷は、江戸時代は武家屋敷が多かったこともあって、意外と知られていない歴史に触れることができます」と話す疋田さんのおすすめは、あの「四谷怪談」が生まれるきっかけとなったスポット。面白いのは、ゆかりの地となっているのがひとつだけでなく、寺と神社の2つある点だという。

さっそくシェアサイクルを利用して訪れてみた。目指すスポットの近くにあるサイクルポートは「新左門児童遊園」(新宿区左門町19)。外苑東通りの「左門町」交差点を曲がってすぐの場所にある。

【写真を見る】以前は信号があったのだろうか。サイクルポートの位置は「新左門児童遊園」の表示があるのでわかりやすい


サイクルポートは、道路に面した児童遊園の入口にあるのですぐわかる


目指すのは「於岩稲荷陽運寺(おいわいなりよううんじ)」と「於岩稲荷田宮神社(おいわいなりたみやじんじゃ)」。サイクルポートから100mほど走ると、まず、陽運寺のノボリが見えてきた。於岩稲荷田宮神社はどこにあるか探すと、そこからわずか10mほど離れた場所に発見。路地を挟んでほぼ向かい合っている状態だ。

右にあるのが於岩稲荷陽運寺。左手の奥にある木の茂った辺りが於岩稲荷田宮神社


於岩稲荷陽運寺の山門。本堂は1757年(宝暦7年)建造の薬師堂を移築・再建したもの


於岩稲荷田宮神社の起源は、幕府の御先手組同心である田宮家の屋敷内にあったお社。お岩さんは田宮家の娘だった


パワースポットが二つでご利益も2倍⁉


四谷怪談というのは、1825(文政8年)年に上演された歌舞伎「東海道四谷怪談」のこと。お岩さんは実在の人物だが、「夫が極悪非道な行いを繰り返し、策略によって毒を盛られて容貌が崩れたお岩さんが恨みを残して死んでいく」という内容は創作とされている。実際は夫婦仲むつまじく、薄給だった夫を支えるため商家へ奉公に出て、その献身的な働きで家を復興させた女性だったようだ。屋敷の中にあったお社を信仰していたおかげだとの噂が広まり、あやかるためお参りする人が増えて「於岩稲荷田宮神社」ができたという。

一方「於岩稲荷陽運寺」は、その境内にお岩さんゆかりの祠があったと伝えられている。ほぼ隣接しているロケーションを考慮すれば信憑性は高く、ゆかりの地が2つあるのも納得できる。ちなみに、どちらも商売繁盛、家内安全、縁結びで知られるほか、「四谷怪談」で有名になったこともあって歌舞伎関係者もよく訪れるそう。一度に2カ所も訪れることができて、ご利益倍増するかも!?

ディープな下町! 佃島サイクルへ


続いてご紹介するのは下町。「自転車なら、カラーの異なる街をスムーズに行き来できる」と石井正則さんが話すように、普段訪れることがない人にとっては、下町を身近に感じられる絶好のチャンス。今回は、自転車のプロの二人が勧める下町エリアの中から、意外と知られていない歴史がある佃島に着目してみた。

ひっそりとした住宅街となっている佃島の一角。奥に見えるのは、隣接する石川島にそびえ立つタワーマンション


佃島があるのは、中央区佃1丁目。東京メトロ有楽町線・都営大江戸線月島駅からほど近いこの近辺は、1990年代のウォーターフロントブームの先駆けとなったエリア。タワーマンションが林立し、当時のトレンディドラマには欠かせない舞台だった。今もその雰囲気は健在で、ディープな下町があるとは思えない。最寄りのサイクルポートも、タワーマンションを中心とする大規模住宅群「大川端リバーシティ21」内にあるサイクルポートを利用する(中央区佃1-11-9)。

リバーシティのサイクルポート。銀座や東京駅からたった3km弱しか離れていない便利な場所だ


ところが、このサイクルポートから300mもすると、一気に街の雰囲気が変わる。その分岐点とも呼ぶべきスポットが「佃小橋」だ。朱塗りで、欄干の上に擬宝珠があしらわれた風情のある橋となっている。

佃小橋。現在の橋は1984年に完成したものだが、約340年前の1679年(延宝7年)の記録によると、ほぼ同位置に橋が架けられていたことがわかっている


左側が佃島、真ん中の朱塗りの橋が佃小橋。林立するタワーマンションとの対比がスゴイ


佃小橋を渡って佃島に入ると、時が止まったような感覚になる。道はきれいに整備され、新しい住宅も多いが、どこかノスタルジックな雰囲気があるのだ。このあたりは大正時代の関東大震災や、昭和の東京大空襲の被害も少なく、江戸時代からの敷地割が残っているのもその一因だろう。

佃島の中央を貫く道路沿いにある商店。右は明治時代に創業した駄菓子屋さん、左は酒屋さん


自転車なら佃煮の老舗もラクラクはじご♪


そんな佃島は、佃煮発祥の地としても知られる。ここはもともと漁民の島で、東京湾で獲れた白魚を将軍に献上していたが、その余りを保存食にしたのだ。発祥の地だけあり、今も「佃煮御三家」とも呼ばれる3軒の老舗がある。1859(安政6)年創業の「つくだに 丸久」、江戸後期創業の「佃源 田中屋」、1837(天保8)年創業の「天安本店」だ。

佃煮の老舗3軒がある路地。取材時、その様子をスケッチしている人たちがいた


その中でももっとも古くから佃煮をつくり続けているのが「天安本店」。1837年(天保8年)創業というから、今年で創業181年目となる。

天安本店。昭和初期に建てられたという木造の建物も味わい深い


人気の佃煮3種。手前から時計回りにうなぎ2670円、昆布510円、たらこ1230円(いずれも100gの価格)


あさりやホタテ貝ひも、いかあられなど20種以上あるこちらの佃煮の味付けは、特注の濃口醤油に赤ザラメと白ザラメとシンプル。それでいて深みのある旨味があるのは、創業以来タレを継ぎ足して使っているから。魚介のみならず、歴史のエキスまで詰まった逸品は一度味わう価値ありだ。自転車で自由に走り回ったあとのお土産に、ぜひ買い求めたい。

シェアサイクルを利用すれば、少し離れた場所にもラクラクたどり着け、徒歩や車移動では気が付かなかった東京の顔を知ることができる。自転車のプロの二人が口をそろえて話す“自転車の風”を、体感してみよう。

東京ウォーカー編集部

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