「ペルソナ5」舞台化仕掛け人が語る2.5次元舞台の“今”、「まだスタートライン、もっと市場は大きくなれる」

東京ウォーカー(全国版)

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『PERSONA5 the Stage』のプロデューサー・古川由隆氏


DMM.comによるエンターテインメントレーベル「DMM STAGE」が始動し、その第1弾作品として人気ゲームタイトル『ペルソナ5』 の舞台版『PERSONA5 the Stage』が12月13日~15日大阪・メルパルクホールにて、12月19日~29日まで東京・天王洲 銀河劇場にて上演。その舞台のプロデューサーであり、DMM STAGEの事業責任者を務めるのが、過去『薄桜鬼』や『弱虫ペダル』を2.5次元のヒットコンテンツに育てた経歴を持つ古川由隆氏だ。今回は、古川氏に近年加熱する2.5次元市場の盛り上がりや、人気過熱が続く2.5次元市場の未来について聞いた。

薄ミュ、ペダステ…「新しいこと」が受け入れられ2.5次元が拡大


『PERSONA5 the Stage』のプロデューサー・古川由隆氏


古川氏は、これまで約10年にわたり株式会社マーベラスで数々の舞台ヒット作を生み出したプロデューサーだ。代表作には、演者がハンドルを握りながら、足踏みをし続ける“パワーマイム”が話題となり、今もなおシリーズ化されている舞台『弱虫ペダル』や、殺陣・ダンス・歌すべて盛り込んだミュージカル『薄桜鬼』などがある。今でこそ当たり前のように思える両舞台の演出だが、古川さんに、初回公演が行われた当初は苦難も多かったという様子を振り返りながら、DMMが2.5次元舞台を展開する理由を語ってくれた。

【古川氏】10年前は、まだまだ2.5次元舞台そのものへのご意見も多く、人気原作の舞台化を発表するとSNSのリプライ欄にはポジティブな声以外にも「舞台化なんてやめてほしい」との声が届く時代でした。だからこそ”アニメだけでは味わえない近さを感じてもらいたい”という思いも強くて、常に新しいことを取り入れるような意識はしていましたね。

例えば、ミュージカル『薄桜鬼』では、当時は殺陣とダンスと歌唱が融合したミュージカルステージはほぼなく、「殺陣師も振付師もいる舞台なんて、無茶苦茶なこと言わないでくださいよ」って言われました。でも、いざ幕が上がるとアニメでは味わえない立体的な動きや、臨場感が評価されたんです。そのときの経験があって、まだまだ可能性を秘めている2.5次元舞台市場で「挑戦」し続けています。DMMはさまざまな最先端テクノロジー、エンターテインメントに対する知見を持ち合わせている。だから、『DMM STAGE』という新しい場を立ち上げて、挑戦していくことに決めました」

『ペルソナ5』の舞台版は、海外での人気も高い作品の世界観を表現したい


『PERSONA5 the Stage』


まだまだ歴史の浅い業界ゆえに、挑戦のしがいがあると語る古川氏。新たな挑戦の場である「DMM STAGE」で手掛ける1作目は、人気ゲーム『ペルソナ 5』を舞台化した『PERSONA5 the Stage』だ。その作品にかける思いや、見どころについて語ってくれた。

【古川氏】実は僕が最初にプロデュースをさせてもらった舞台が『ペルソナ 4』だったので、ご縁があるなと。当時は、全編プロジェクションを使用して映像で背景を表現するという挑戦をしましたね。もちろん当時はそれが正しいかどうかなんてわかりませんでしたよ。でも、新しいことを何かやりたくて、やってみた結果、今では多くの2.5次元舞台でも導入されていますから本当にありがたい話です。

『PERSONA5 the Stage』主人公役:猪野広樹(C)ATLUS (C)SEGA (C)SEGA/PERSONA5 the Stage Project


【古川氏】『PERSONA5 the Stage』は、原作がスタイリッシュに世界観を作り込んでいる作品なので、それをうまく表現したい。主人公の猪野広樹さんをはじめとした俳優陣に合わせ、マジシャンとして活躍していて、今回が2.5次元舞台初出演の御寺ゆきさんや、札幌国際短編映画祭で最優秀主演女優賞を受賞した早乙女ゆうさんなど、独特なキャスティングを行いましたが評価いただきうれしいですね。ミュージカルではないのですが、歌もダンスも楽しめる見どころたっぷりの作品となっています。ペルソナという作品は海外人気も高い作品ですから、もうすでに決定している香港・台湾での千秋楽のライブビューイング含めて、いずれ日本だけではなく広く展開していきたいですね。

『PERSONA5 the Stage』高巻杏役:御寺ゆき(C)ATLUS (C)SEGA (C)SEGA/PERSONA5 the Stage Project


『PERSONA5 the Stage』坂本竜司役:塩田康平(C)ATLUS (C)SEGA (C)SEGA/PERSONA5 the Stage Project


200億円にまで成長した2.5次元舞台市場だが…「スタートラインに立ったにすぎない」


2018年には年間の公演タイトル本数を197本にまで伸ばし、その市場規模は200億円を超えたと報じられた2.5次元市場。2003年に初公演が打たれたミュージカル『テニスの王子様』からじわじわと認知を広げていき、2018年末のNHK紅白歌合戦にはミュージカル『刀剣乱舞』の刀剣男士たちが登場するまで拡大していった。2009年より2.5次元舞台の世界に身を置いている古川氏はどのようにとらえているのだろうか。

『PERSONA5 the Stage』モルガナ役:大谷育江(声の出演)(C)ATLUS (C)SEGA (C)SEGA/PERSONA5 the Stage Project


【古川氏】10年前から見たら考えられないことの連続です。テクノロジーの発達によって、エンターテインメント業界全体が多様化してきた、そして受け入れてもらえるようになったように感じます。実際に2.5次元舞台に関しては、ここ数年で、当初は挑戦的でありましたペンライト持ち込み可の舞台が定着したり、客席を巻き込むような既存の“観劇とはこうあるべき”との概念を覆す演出が増えたりと日々楽しみ方の多様化が進んでいます。

『PERSONA5 the Stage』明智五郎役:佐々木喜英(C)ATLUS (C)SEGA (C)SEGA/PERSONA5 the Stage Project


【古川氏】また、今では定番化しているランダムブロマイドやグッズなどを多様展開することで物販収益を上げることに成功し、チケット以外の収益にも期待できるようになり、諸々の課題を解決する手法を編み出しました。まだまだ舞台業界で長く活躍された先輩方には及ばないところもとても多いと思っておりますが、そういう点ではエンタメ業界に新たな風を吹かせることができたかもとも思っています。ただ、僕からすればまだスタートラインに立っただけ、赤ちゃんがハイハイし始めたくらいの成熟度のように感じています。というのも、アニメが3000万人強規模の市場なのに対して、2.5次元舞台はまだ300万人弱、10%程度という現実ですから。まだまだやるべきことは山積みですね。

“こうあるべき”からの脱却。“2.5次元”はまだまだ大きくなれる


『ヒプノシスマイク』の第2弾や、『デュラララ』など2020年に向けて多くの舞台化が発表されており、より一層盛り上がりを見せそうな2.5次元市場。最後に今後の市場と、「DMM STAGE」のこれからについて教えてもらった。

【古川氏】今でこそ舞台コンテンツは「初日から千秋楽まで」とあらかじめ決まった期間で上演されていますが、海外の舞台って出資事業なので、評判が良ければずっと続くんです。そういう舞台があってもいいと思います。劇団四季さんのように作品ごとに専用劇場を作るような作品が出てもおもしろいかもしれませんね。ステージと客席が入り乱れるような構造や、ステージを見下ろすような構造の劇場、スピーカーが客席のいたるところに設置されているような会場ができてもいいと思います。舞台の場合、映画よりもチケット代は高額ですが、そこでしかできない体験や付加価値があればあるほど観客の方々は来てくださるので、心から楽しませることができるようなエンターテインメント、誰かに言いたくなるような仕掛けづくりにチャレンジしていきたいです。

(C)ATLUS (C)SEGA (C)SEGA/PERSONA5 the Stage Project

於ありさ

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